融資・投資・出資の違いとそれぞれのメリット・デメリットを解説
「融資」「投資」「出資」は、いずれも「資産運用などでお金を出す」という意味で使われる言葉なため、特に区別なく使われがちですが、その意味はそれぞれ違います。
今回は「融資」「投資」「出資」それぞれの意味と違いを解説しながら、メリット・デメリットを紹介します。
融資・投資・出資それぞれの意味や違いを解説
ここでは「融資」「投資」「出資」について、それぞれの意味や違いを解説します。
融資とは
融資とは、銀行などの金融機関が利息をつけてお金を貸すことです。
融資を受けた側(資金を調達する側)にとっては「借入れ」を指し、いわゆる借金となります。融資の特徴は「融資を受けた側は返済する義務がある」点です。そのため借りた資金と上乗せされた利息を返済していく必要があります。
なお融資は、国や地方自治体などの公的機関がおこなう「公的融資」と、銀行や信用金庫などの民間金融機関がおこなう「民間融資」のふたつにわかれます。
公的融資を受ける
公的融資は、前述したように国や地方自治体などの公的機関がおこないます。具体的には、国が100%出資している日本政策金融公庫や信用保証協会からの融資を指します。
日本政策金融公庫の特徴は民間金融機関とは異なり、「利益」を追求していないことにあります。また民間の金融機関の融資を受けられなかった小規模事業主への融資や、女性・若者・シニアへの融資を積極的に支援しています。
また民間融資に比べて金利が低いのが特徴です。民間融資の金利は2%~4%程度に設定されていることが多いです。
一方、日本政策金融公庫で設定している金利は一番低いもの0.30%(担保を提供する融資を利用される方、令和5年7月3日現在)、最も高い金利でも3.10%(新創業融資制度(無担保・無保証人)を利用される方(税務申告を2期終えていない方、)令和5年7月3日現在)となっています。
できるだけ低い金利で融資を受けたい人には、日本政策金融公庫に相談してみるとよいでしょう。
日本政策金融公庫について詳しくはこちら!>>日本政策金融公庫で不動産投資の融資を受ける方法
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が融資を受ける際に保証人となり、円滑な融資を受けられるよう設立された公的機関です。万が一、融資を受けた側が返済できなくなってしまった場合、保証人となる信用保証協会が代わりに返済してくれる仕組みになります。
ただしその際は、信用保証料を支払う必要があります。
民間融資を受ける
前述したように、民間融資は民間機関である銀行や信用組合がおこないます。民家融資では、おもに事業を営んでいる法人経営者か個人事業主を対象にした、ビジネスローンという事業資金専用のローン商品を提供しています。
なお融資の可否や限度額、金利などの決定は各金融機関によっておこなわれますが、審査基準は金融機関によって異なります。
投資とは
投資とは、将来的な利益を期待して第三者に資金を融通することです。また利益を目的としてお金を出すこと全般を意味します。
もともとは、企業などに資本を提供するという意味でしたが、現在では資金を提供する場合にもこの言葉が用いられます。
出資とは
出資は、投資家が将来的な利益を見込んで、企業の株式等と引き換えに資金を出す投資方法を指します。投資家は、出資金額に応じた株式を取得することにより、事業での利益が出た時に配当を受ける権利を得られるほか、企業の経営について影響力を持つことになります。
企業価値が上がったところで取得した株式を売却することで、売却益(キャピタルゲイン)を得られる可能性もあります。
なお「出資」は資金を提供する側から見たときの呼び名であり、受ける側は「増資をおこなう」と表現されるのが一般的です。
融資を受ける側のメリットとデメリット
ここでは「融資を受ける側」のメリットとデメリットをまとめました。
融資を受ける側のメリット
融資を受ける際のメリットには以下のようなものがあります。
- 経営に介入されない
- 資金を調達しやすい
それぞれについて解説します。
経営に介入されない
銀行などの金融機関から融資を受けた場合、出資などとは異なり、経営に介入されることはありません。そのため投資や出資に比べると、経営の自由度が高くなる点がメリットです。
ただし返済が滞った場合にかぎっては、融資をしてくれた金融機関が経営に関与するケースがあることを覚えておきましょう。
資金を調達しやすい
銀行などの金融機関は、ビジネスとして融資をおこなっています。そのため融資審査にさえ通過すれば、融資を受ける側が必要とする金額の資金を融資してくれます。よって多額の資金でも調達がしやすいのがメリットになります。
融資を受ける側のデメリット
融資を受ける際のデメリットには以下のようなものがあります。
- 元本と利息の返済の義務がある
- 担保や保証人を求められるケースがある
それぞれについて解説します。
元本と利息の返済の義務がある
融資は、投資や出資とは異なり、借入れた金額(元本)に加えて利息分の返済義務が課せられます。たとえ想定した収益が得られなくても月々の返済はおこなう必要があるため、資金繰りが悪化するリスクがあります。
また融資は、利息が上乗せされるため元本よりも多くの金額の返済が必要になることもデメリットのひとつです。特に融資額が大きな場合や高い金利で融資を受けていると、月々の返済額が大きくなってしまうおそれがあるため注意が必要です。
返済が滞ってしまうと金融機関との取引が停止となり、倒産する危険性が高まります。
なお会社が融資を受ける際は基本的に代表者の個人保証も必要になります。そのため、会社が倒産した場合には個人で借金を背負う形になってしまうため注意しましょう。
担保や保証人を求められるケースがある
銀行などの金融機関が融資審査をおこなう際、融資を受ける側の信用力をもとに、融資の可否や融資額などを判断しています。そのため経営状況によっては信用力を補うために担保や保証人を求められる場合があります。
会社所有の不動産がない場合、経営者が自宅などの個人資産を担保に入れたり、連帯保証をおこなったりするケースも少なくありませんが、万が一経営が立ち行かなくなった場合は個人の財産にまで影響を及ぼす可能性があるため注意しましょう。
出資のメリットとデメリット
ここでは「出資を受ける側」と「出資をする側」それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
出資を受ける側のメリット
出資は、投資家が企業の将来的な可能性に期待して資金をしているため、出資を受けた企業は、原則として返済義務を負いません。また借金ではないので利息の支払いも不要です。
加えて出資をする投資家から事業に対してサポートやアドバイスを受けられることがあります。実際に事業を成功させた投資家も多く、そういった経験者から事業成功の一助を受けられるのは大きなメリットになるでしょう。
出資を受ける側のデメリット
出資した投資家の持株比率が一定割合ある場合、第三者である投資家が会社経営に関与する可能性があります。そのため経営判断に影響が及び自由度が下がってしまうことも考えられます。場合によっては、第三者に経営権を握られる可能性もあるため注意が必要です。
また会社の業績がよくない場合は出資してくれる投資家がみつからず、資金調達ができない可能性もあります。
出資をする側のメリット
出資した企業の事業が成長することで、出資した金額以上のリターンにつながる可能性があります。また持株比率によっては、投資家が経営にかかわることもできるようになります。
出資をする側のデメリット
投資家が出資をしても、かならず期待したリターンを得られるわけではありません。事業に失敗するケースや、自然災害のように想定外の理由によって業績が悪化してしまうことも十分考えられます。
企業の業績が悪化すれば、配当金が減ったり、支払いを見送ったりする場合もあります。また利益が出ていても内部留保を優先し、配当金が支払われない場合もあるので注意が必要です。
融資・投資・出資以外の資金調達方法
出資と融資以外で、資金調達をするふたつの方法を紹介します。
ファクタリングサービス
ファクタリングサービスとは、未回収の売掛債権をファクタリング会社に売却して現金化できるサービスです。売掛金とは、商品の販売やサービスを提供して売上は発生していても、まだ回収できていないお金を指します。
なおファクタリングサービスは、あくまで売上にあたるお金を現金化してもらうサービスなので、借金のような負債にはあたりません。
取引先からの支払いを待たずに現金化ができるため、急に現金が必要になった際などの助けになります。ただし売掛金の範囲内でしか資金繰りができないことを覚えておきましょう。
融資型(貸付型)クラウドファンディング(ソーシャルレディング)
融資型(貸付型)クラウドファンディングとは、インターネットを通して不特定多数の人から資金を募り、そこで得た利益を各投資家に分配する仕組みです。
投資額はプロジェクトによって異なりますが、一口1万円程度の少額投資がおこなえます。
なお、融資型(貸付型)クラウドファンディングは「ソーシャルレンディング(Social Lending)」とも呼ばれます。
まとめ
「融資」「投資」「出資」の意味と違い、メリットとデメリットを解説しました。いずれも「お金を出す」という意味で使用されますが、融資は返済義務があり、投資と出資は返済義務がないなど、それぞれ違いがあるのです。
「融資」「投資」「出資」は、資産運用などで頻繁に使用される言葉です。それぞれを正しく理解して自身の事業に合った方法を選ぶことで、計画通りの資金調達につながるでしょう。