不動産投資で得られる手取りはいくら?収入を増やすポイントを解説!
不動産投資を検討する際、「家賃収入の手取りはいくらなのか」と気になる人は多いでしょう。収益物件の運用中に発生した経費や税金、月々のローン返済は、基本的に家賃収入からおこないます。それらのランニングコストは家賃から支払うため、きちんと利益が出るかは重要なポイントです。
そこで今回は不動産投資で得られる手取り額について、収入と支出の内訳や手取りを増やす5つのコツについて解説します。
令和3年分の不動産所得額は平均で約542万円
国税庁の『令和3年分 申告所得税標本調査結果』によると、不動産所得額は平均で約542万円です。
過去の不動産所得額平均は、令和2年は約540万円、令和元年は約521万円、平成30年は約518万円、平成29年の平均収入額は約517万円と年々上昇しています。
ただ、上記の数字は不動産所得全体を調査した結果であるため、アパート経営やマンション経営、戸建賃貸経営などが含まれた結果となります。
参考:国税庁『令和3年分 申告所得税標本調査結果』
不動産投資の手取り額を計算する方法
ここでは、不動産投資の収入の内訳と支出の内訳を紹介します。
不動産投資の収入内訳
不動産投資で得られる収入の大部分は家賃収入です。また次の項目も収入となります。
- 礼金
新規入居者から賃貸借契約締結時に受け取る。2年ごと、賃料の1~2ヶ月分が相場
- 更新料
既存の入居者から契約更新時に受け取る。2年ごと、賃料の1~2ヶ月分が相場
- 管理費・共益費
入居者から毎月の賃料と同時に受け取る
- 駐車場代
賃料とは別に駐車場を借りている入居者から受け取る
- その他の収入
敷地内に設置した自動販売機の売上代金、太陽光発電の売電代金など
不動産投資の支出内訳
不動産投資の支出は、投資物件の運用時に建物や設備の維持管理などのために発生した経費や税金(ランニングコスト)が該当します。ランニングコストの目安は毎月の家賃収入の20%~30%です。運用時の経費や税金の種類には以下のようなものがあります。
不動産の運用時に発生する経費の内訳
- 管理委託手数料・管理費
管理会社に業務委託した場合に支払う手数料で相場は月額家賃収入の5%~8%です。区分マンションはマンション管理組合が徴収します。
- 損害保険料
加入している火災保険や地震保険などの保険料です。保険料は補償内容や物件の種類・規模によって異なりますが、目安は1万円~10万円程度です。
- 入居者募集費用
不動産管理会社に入居者募集を委託した管理会社に支払う報酬です。
- 修繕費
故障した設備や建物などの傷んだ箇所の修繕費用や設備の交換費用、原状回復費用が該当します。
- 修繕積立金
区分マンションの管理組合が徴収する修繕費の積立金です。
- 税理士費用
税務処理を依頼した場合に支払う報酬です。1回ごとに報酬を支払う場合と、顧問として顧問料を支払う場合があります。
- 共用部の水道光熱費
清掃や証明に使用される水道料金や電気料金です。
- 雑費
事務用品費、消耗品費、交通費、交際費など
- ローン返済金
不動産投資ローンの返済金(元金+金利)です。
ランニングコストについて詳しくはこちら!>>不動産投資に必要なランニングコストとは?コストカットは可能!
*「減価償却費」について
上記以外の経費として「減価償却費」があります。
減価償却費は、時間の経過や使用することにより価値が減少していく固定資産に対し、取得費用を法定耐用年数(=会計上で決められた使用可能年数)に応じて分割した費用です。
簡単に言うと、長年使える値段の高い設備は購入した年に全額を経費計上するのではなく、何年かにわけて経費として計上できるというものです。
また減価償却費は、現金の支出はないにも関わらず経費計上できる特殊な経費です。そのためキャッシュフローは黒字でも、減価償却費を計上することで会計上は経費が増え、利益が減ります。利益が減れば課税対象となる所得額も減少し、節税効果が得られます。
減価償却について詳しくはこち!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
不動産の運用時に発生する税金の内訳
- 所得税・住民税
不動産投資で収益が出た場合は所得税・住民税が課税されます。サラリーマンの場合、給与収入と不動産収入を合算した金額から経費や控除を差し引いた課税所得をもとに税額が計算されます。
- 固定資産税・都市計画税
不動産を保有する個人・法人にかかる税金です。毎年、1月1日時点で不動産の所有者に課せられます。土地だけでなく建物も固定資産とみなされ課税されます。オーナーチェンジなどで所有者が変わった場合は、日割り計算でそれぞれの負担分を支払うのが一般的です。
固定審査税の計算についてはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
固定資産税の軽減措置について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税軽減措置を解説!誰がいつどうやって払うの?
- 個人事業税
法定業種が対象の税金です。不動産貸付業は第1種事業に該当します。前年度の事業所得が290万円を超える人は個人事業税が課せられます。
不動産投資の手取りをシミュレーション
ここでは、下記の物件例を参考に手取りをシミュレーションしました。
【物件例】
物件価格3,000万円、満室時想定年収300万円、自己資金なし、借入期間30年、借入金利3.0%、想定空室率10%、諸経費率20%
【シミュレーション結果】
- 返済額(月額):126,482円
- 返済額(年額):1,517,784円
- 返済総額:45,532,779円
- 家賃収入(年額):3,000,000円
- 控除・諸経費(年額):900,000円
- 年間支出:2,417,784円
- 年間手取り:582,216円
- 表面利回り:10.0%
- 実質利回り:7.0%
- 返済後利回り:2.0%
- 投資利回り:0.0%
参考:不動産投資連合隊『収益・投資物件 簡易収支シミュレーション』
シミュレーションの結果、年間手取り額は582,216円でした。一月あたりの手取りは48,518円になります。
今回のシミュレーションでは、想定空室率10%、諸経費率20%で計算しましたが、空室率や諸経費率が上昇した場合の手取りは減少します。また金利が上昇することも考えられます。
不動産投資で少しでも手取りを増やすためには、空室リスク対策や諸経費の削減などの工夫も必要になるでしょう。
不動産投資で手取りを増やすための5つのポイント
不動産投資で手取り収入を増やすには、以下の5つのポイントを押さえておく必要があります。
①頭金を多めに入れる
不動産投資で金融機関の不動産投資ローンを利用する際、物件価格の1割~3割程度の頭金を入れるのが一般的です。頭金が多ければ借入れ額が減り月々のローン返済額も減るため、手取り額が多くなります。
頭金が少ないと総支払利息金額が大きくなるため、月々のローン支払いが負担になり、手取りも少なくなってしまいます。
頭金が少ない方がレバレッジを効かせた投資につながりますが、手取りを増やすためには頭金をできるだけ多く用意するとよいでしょう。
②繰り上げ返済をおこなう
繰り上げ返済をおこなうことで返済期間の短縮や利息負担の軽減につながります。
繰り上げ返済には、返済期間を短縮する「期間短縮型」と月々の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類があります。
手取り額を増やしたい場合は返済額軽減型を選びましょう。ローン返済を早く終わらせたい場合は期間短縮型を選ぶとよいでしょう。
ただし繰り上げ返済は、自己資金に余裕があるときにおこないましょう。資金に余裕がないのにもかかわらず無理に繰り上げ返済をしてしまうと、急に現金が必要になったときに対応ができなくなってしまいます。
繰り上げ返済は無理のない範囲で計画的におこないましょう。
繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説
③リフォームやリノベーションで家賃を引き上げる
物件は築年数が経てばたつほど、経年劣化によって物件の価値が下がってしまします。物件の価値が落ちると入居付けがむずかしくなり、空室率の上昇につながります。
空室を埋めるために家賃を引き下げてしまうと収入が減ってしまうとため、家賃の減額は最終手段として、まずは物件の価値を上げるための対策をおこないましょう。
具体的には、定期的なメンテナンスをおこなって物件の価値が下げるの防いだり、リフォームやリノベーションで物件の価値を向上させたりといった対策をおこなうとよいでしょう。不人気の和室を洋室にリノベーションしたり、入居者ニーズの高い最新設備を導入したり、家賃を上げても入居希望者を引き付けられるよう工夫をしましょう。
リフォームについて詳しくはことら!>>不動産投資でリフォーム費用を減らす3つのヒント!予算の目安は?
④空室対策をおこなう
不動産投資のおもな収入源は入居者が支払う家賃です。そのため、入居者がいない空室がつづくとその間の家賃が得られず収入が減ってしまいます。区分マンションの場合は、空室=家賃収入0円なのに、管理費や修繕積立金などのランニングコストが発生するため、赤字がどんどん増えてしまうのです。
また退去についても同様です。退去時にはハウスクリーニングやクロスの張り替えなど、原状回復費用が発生します。加えて入居者が見つかるまでは内見対策として定期的な清掃や換気が必要になるため手間もかかります。
このように退去と空室は、家賃収入を得られないだけでなく出費ばかりが増えてしまうため、できるだけ早く入居者を決める必要があるのです。
管理会社に積極的な募集活動をしてもらったり、フリーレントを導入したり、いろいろな空室対策を試してみるとよいでしょう。
空室対策について詳しくはこちら!>>効果的な空室対策!家賃を下げる前に検討したい 7つの対策方法
⑤ランニングコストの見直しをおこなう
手取り額を増やすためには、収入を増やすとともに、支出を見直すのも効果が期待できます。
運用時のランニングコストで削減できる部分がないか確認してみましょう。
たとえば保険料の補償内容を見直して、余計な保証を削ることで保険料をおさえることにつながります。
一棟物件であれば、共用部の照明を蛍光灯からLED照明に切り替えることによって、電気代と管球交換コストの削減につながります。
ほんの少しの工夫であっても、コストカットにつながる可能性があるので、いま一度ランニングコストを見直してみることをおすすめします。
ランニングコストについて詳しくはこちら!>>不動産投資に必要なランニングコストとは?コストカットは可能!
まとめ
不動産投資の手取りについて解説しました。令和3年分の不動産所得額は平均で約542万円でした。ただし立地や物件の規模、金融機関の借入れ金額、空室率など、さまざまな要因によって手取り額は増減します。
手取りを増やすためには、頭金を多くしたり、繰り上げ返済をしたりといった方法が効果的です。また満室経営ができれば満額の家賃を受け取れるため、空室対策をしっかりおこない、満室経営を目指しましょう。