不動産投資を独身ではじめるのがおすすめの理由を解説!注意点も
将来の不安から老後に備えて不動産投資をはじめる独身者が増えています。実は不動産投資をおこなう場合、独身時代にはじめるのがおすすめです。
ただし独身といっても年代によって本人を取り巻く経済環境は異なるため、不動産投資で得られるメリットやデメリットにも影響があります。
今回は独身者が不動産投資をはじめるメリットやデメリット、注意点について解説します。
なぜ独身で不動産投資をはじめるのがおすすめなのか
不動産投資は長期にわたって、こつこつと収益を蓄積していく投資方法です。年代に関係なくおこなえる投資ですが、その性質上、できるだけ若いうちに開始することでより大きなメリットを得られます。
加えて独身のうちに不動産投資をはじめることで、よりメリットがあります。ここでは独身時代に不動産投資をはじめるのがおすすめの理由について解説します。
自由に使える資金が多い
扶養家族がいない独身者は収入のほとんどを自分自身のために使用できるため、不動産投資に必要な初期費用(頭金+諸費用)を貯めやすいと言えるでしょう。
既婚者の場合は家族の生活費や教育費、マイホームや車のローンなどが負担になるため、自由になるお金が少なく、初期費用を貯めるには時間がかかります。
不動産投資は長期にわたっておこなう投資方法です。自由にできるお金が多い独身時代に不動産投資をはじめ、キャッシュフローを貯蓄することで効率のよい資産形成につながるのです。
不動産投資に必要な初期費用の内容
不動産投資をはじめるにあたって、物件価格の15%~40%の初期費用が必要です。
おもな初期費用には以下のようなものがあります。
【初期費用の種類と目安】
- 仲介手数料:物件価格の3%+6万円+消費税
- 不動産取得税:固定資産税評価額×3%
- 印紙税:物件価格によって異なる
- 登録免許税:土地・建物の1.5%
- 司法書士への報酬:10万円~15万円程度
- 清算金(固定資産税など):物件引き渡しのタイミングなどによって異なる
- 融資事務手数料:借入金額の1~3%程度
- 融資保証料:借入額の2%程度(一括で支払う場合)
- 損害保険料:火災保険や地震保険など。建物の構造や面積によって異なる
- 頭金:物件価格の10%~30%程度
仲介手数料については、不動産仲介会社を介して物件を購入した場合に発生します。なお仲介手数料は、宅地建物取引業法の第46条にて上限額が決められています。そのため、不動産仲介会社は上限額を超える額の仲介手数料を受け取ることはできません。
頭金を除いた額が融資額になるため、頭金を多く入れることで借入額が少なくなり、融資審査に通りやすくなります。また毎月のローン返済額を減らすことにつながります。
初期費用について詳しくはこちら!>>不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
家族を説得する必要がない
不動産投資は大きなお金が動きます。そのため既婚者が不動産投資をはじめる場合、少なくとも家計を共にする配偶者の理解や協力が欠かせません。
特に「不動産投資=リスクが大きい=借金が怖い」と配偶者が考えている場合、不動産投資に反対されるケースも少なくないようです。
家族が不動産投資に反対した場合、その意見を無視するのはおすすめしません。その場合、家族に納得してもらうために根気よく説得する必要があります。結婚相手も同様です。
結婚相手と不動産投資について詳しくはこちら!>>結婚相手の不動産投資家に確認したい6つの安心ポイントを解説!
一方、独身者の場合は反対する配偶者はいないので説得に時間や労力をかける必要はありません。両親や兄弟がいても、お財布が別であれば大きな障害にはならないでしょう。
失敗しても影響を受けるのは自分だけ
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの投資と言われ、株式投資やFX投資に比べるとリスクは低いです。それでもリスクはゼロではありません。
ただし不動産投資のリスクは事前に対策を立てやすく、リスクを最小限におさえることで安定した収益につながります。
しかし事前にリスク対策をおこなっても、地震や風水害などの自然災害の被害にあったり、物件選びに失敗したり、想定した収益が得られない可能性もあります。その結果ローン返済が滞り、物件を差し押さえられてしまい負債だけが残るおそれも考えられるのです。
既婚者の場合、不動産投資の失敗は家計にダイレクトに影響します。ローン返済のためにマイホームなどの財産を処分する必要があるかもしれません。その場合、家庭環境が変わってしまうおそれがあります。
一方、独身者は不動産投資で失敗しても影響を受けるのは自分だけです。さらに若い世代であれば、ふたたび不動産投資をやり直す時間も十分にあります。
【年代別】独身者が不動産投資をはじめるメリット・デメリット
20代・30代独身者の場合
ここでは、20代・30代の若い世代の独身者が不動産投資はじめることで得られるメリットとデメリットについて解説します。
年代別不動産投資について詳しくはこちら!>>20代ではじめる不動産投資で失敗しないポイントとメリット・デメリット
年代別不動産投資について詳しくはこちら!>>30代で始める不動産投資の成功ポイントと注意ポイントを解説!
メリット1:リターンを得られる期間が長い
不動産投資をはじめるのが早ければはやいほど、リターン(利益)を得られる期間が長くなり、その分資産も増やせます。
家賃10万円の区分マンションを75歳になるまで運用した場合を例とし、不動産投資を開始した年齢別に得られる総家賃収入額を比べてみましょう。
- 25歳で運用をはじめた場合:6,000万円
- 35歳で運用をはじめた場合:4,800万円
- 45歳で運用をはじめた場合:3,600万円
同じ物件であっても不動産投資をはじめる年齢が10歳変わるごとに1,200万円ずつ差が出ます。不動産の運用期間が長ければ、より多くの利益が得られるため、できるだけ早い段階で不動産投資をはじめるとよいでしょう。
(実際の賃貸経営では家賃額からランニングコストを差し引くため手取り家賃額は10万円より少なくなります。また年数の経過によって家賃額は下落するため総家賃額は減少します)
メリット2:定年までにローンを完済できる
金融機関から融資を受ける場合は、ローンを完済できる年齢が早くなるのもメリットです。
たとえば25歳で30年の不動産投資ローンを組んだ場合、定年退職(65歳)の10年前にはローンを完済できます。
ローンを完済してしまえば、自由に使用できるお金が増えるので、次の不動産投資物件の購入資金にしたり、物件の価値を上げるための設備投資資金にしたり、使いかたはさまざまです。
また65歳以降は公的年金も受給できます。年金に加えて毎月の家賃収入もあるため、金銭的に余裕のある老後につながります。
デメリット1:融資審査に通りにくい
不動産投資をおこなうにあたって、金融機関の不動産投資ローンで融資を受けて物件を購入するのが一般的です。ただし、融資を受けるには金融機関の融資審査を通過しなくてはなりませんが、既婚・独身にかぎらず、年齢の若い人は融資審査に通過しにくい場合があります。
不動産投資ローンの融資審査は、物件の資産価値や担保価値に加えて、融資を受ける本人の「個人属性」が審査の対象になります。
個人属性とは、融資を申し込む人の勤務先や年収などの経済的・社会的背景を指し、その人に融資してもきちんと返済はしてもらえるか、限度額はいくらにするかなど、金融機関の審査時の判断基準となるものです。
個人属性は、おもに以下の項目があります。
- 勤務先の情報:勤務先、勤続年数、雇用形態、年収など
- 家族構成や住環境の情報:家族構成、持家か賃貸か、居住年数など
- 金融資産の情報:預貯金、株、債券など
- 借入の情報:借入の有無や借入れ理由、残債など
一般的に、安定した収入がある(高収入ならなお可)、上場企業や公務員など勤務先が安定している、勤続年数が長い、貯蓄などの資産が多い人は「高属性」とみなされ、融資が付きやすくなります。
一方、自由業などで安定した収入が得られない場合は「属性が低い」とされるため、融資審査で不利になりやすいです。
20代は、会社員であっても勤務年数がまだ短かったり、年収が低かったりする場合も多く、融資審査で不利になることも少なくないのです。
デメリット2:自己資金が少ないと返済比率が高くなりやすい
20代や30代で不動産投資をはじめる場合、用意した自己資金(頭金)が少ないと返済比率が高くなりやすく、収支のバランスが崩れないよう注意が必要です。
不動産投資における「返済率」とは、家賃収入に対して毎月発生するローン返済額の比率を指し、ローンの支払いリスクがどのくらいあるかを知る指標となります。
返済比率は以下の計算で求めます。
【返済比率の計算式】
返済比率(%)=毎月(年間)の返済額÷毎月(年間)の家賃収入額※満室時×100
返済比率が低ければ手元に残るキャッシュフローが増加し、逆に返済比率が高くなるとキャッシュフローは減少します。
返済率の目安は50%となり、50%を超える場合はローン返済金が収入の大部分を占めるため、資金繰りが困難になるおそれが考えられます。
【返済比率の安全度の目安】
- 40%以下:安全
- 50%以下:比較的安全
- 51%~55%:注意が必要
- 65%以上:危険
不動産投資で安定したキャッシュフローを維持するためにも、入念な収支シミュレーションをおこない、返済比率を50%以下に保てる物件を購入しましょう。
返済比率について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?
40代以上の独身者の場合
40代になると勤務先での役職も上がり、20代・30代に比べると収入も増えています。そんな40代の独身者が不動産投資をはじめるメリットとデメリットは以下のようになります。
40代の不動産投資について詳しくはこちら!>>40代の資産形成におすすめ投資方法4選!やってはいけないNG行為は?
メリット1:資金が潤沢である
40代になると勤務先の勤続年数も長くなり、役職も与えられ給与も増えているでしょう。既婚の40代の多くは、マイホームのローン返済や子供の教育費などに収入の大部分が消費されますが、独身の場合はそれらの費用を不動産投資にあてられるため、資金が潤沢であることがメリットです。
頭金として用意できる自己資金が増えればローン借入額が減るため、月々のローン返済額が小さくなります。すると毎月のキャッシュフローが安定し、結果的に収益が増加します。
また不動産投資では基本的に家賃収入から毎月のローン返済をおこないますが、空室や突発的な修繕費の発生などで一時的に赤字になるケースも少なくありません。その場合、手持ち資金を持ち出すことになりますが、資金に余裕があれば補填も容易なので安定した賃貸経営ができるでしょう。
さらに、設備をグレードアップしたり、人気の最新設備を追加したり、空室対策や物件の付加価値アップのための資金を投入しやすくなります。
ある程度貯蓄にゆとりのある40代の独身者にとって、資金面で優位な状況で不動産投資をスタートできるのは大きなメリットになります。
メリット2:融資審査に通りやすい
勤務年数が長くなり役職も付き収入も上がる40代は、個人属性も高くみなされるようになります。ようするに「この人にお金を貸してもきちんと返済してくれるだろう」と金融機関の評価が高くなるため、不動産投資ローンの融資審査に通りやすくなる可能性が高まるのです。
さらに頭金を多く入れることで、より有利な条件で融資を受けられる可能性もあるのです。
デメリット:借入期間に注意
不動産投資ローンは完済時の年齢が80歳から85歳までに決められていることが多いです。50代で不動産投資をはじめる場合、設定されたローン完済時の年齢次第で借入期間が短縮される可能性もあるため注意が必要です。
たとえば55歳のときに、完済時年齢が85歳のローンを利用して不動産投資をはじめた場合、借入期間は最長で30年になります。
また融資期間はローン利用者の年齢だけでなく物件の残存耐用年数も関係するため、物件次第では借入期間がさらに短縮される可能性があります。
建物の法定耐用年数は以下のように構造によって決められています。
【建物の耐用年数(新築の場合)】
- 軽量鉄骨造(骨格材の厚みが3mm以下の場合):19年
- 軽量鉄骨造(骨格材の厚みが3mmを超4mm以下):27年
- 木造:22年
- 重量鉄骨造:34年
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造:47年
参考:国税庁『耐用年数(建物/建物附属設備)』
中古物件の残存耐用年数は以下の計算式で算出します。
【中古物件の耐用年数の計算方法】
- 築年数が法定耐用年数未満のとき
残存耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2
- 築年数が法定耐用年数以上のとき
残存耐用年数=法定耐用年数×0.2
たとえば、55歳の時点で築20年の鉄筋コンクリート造マンションを、ローン完済時年齢が85歳のローンを利用して購入する場合、残存耐用年数は31年ですが、ローン完済時年齢によって借入期間は最長で30年に短縮されてしまいます。
完済時の年齢が若いほど、法定耐用年数が長い場合に長期間のローンを組みやすいため、不動産投資はできるだけ若いうちにはじめるとよいでしょう。
耐用年数について詳しくはこちら!>>不動産投資の耐用年数が節税や融資期間に大きく関係する理由を解説!
独身者が不動産投資をはじめる際の注意点
ここでは独身者が不動産投資をおこなう際の注意点について解説します。
目的や目標を定めておく
不動産投資をおこなう場合、目的や目標を具体的に決めておく必要があります。たとえば、老後に備えた資産形成が目的であれば、何歳までにいくらくらいのお金を貯めたい、など具体的な目標を決めたうえで、目標を達成できる物件を選ぶことになります。
不動産投資で成功するためには、物件の利回りや空室リスクなどを組み込んだ綿密な収支シミュレーションは欠かせません。
しかし、漠然とした物件イメージだけでは具体的な収支シミュレーションがおこなえず、リスクの高い物件を選んだり、家賃収入の見込みがあまくなったり、想定した収益が得られないおそれもあるのです。
独身で資金に余裕があっても毎月赤字で持ち出しばかりが増えては、不動産投資をおこなう意味がありません。
かならず目的と目標を立て、ゴールを目指して健全な不動産投資をおこないましょう。
事業的規模には要注意
サラリーマンなど会社勤めをしている人が不動産投資をはじめる場合、「副業が禁止されていないか」を就業規則などで確認することをおすすめします。
一般的に「不動産投資は副業にあたらない」としている企業も多くみられますが、念のため上司や担当部署に不動産投資をおこなっても問題がないか確認しておくと安心です。
ただし、不動産投資の規模が大きくなった場合は副業とみなされるケースもあるため注意が必要です。特に公務員は営利目的の不動産投資は原則禁止されています。
資金に余裕がある独身者は、不動産投資の規模を拡大しやすいため、以下の点に注意しましょう。
不動産投資と副業について詳しくはこちら!>>家賃収入は副業にあたらない?会社員の不動産投資で注意するポイント
公務員の不動産投資について詳しくはこちら!>>公務員が不動産投資で副収入を得る方法!メリットや注意点を解説
事業規模(5棟10室)になった場合
不動産投資では、税務上の事業規模の目安として「5棟10室基準」が用いられます。5棟10室とは、戸建てなどの独立した家屋がおおむね5棟以上またはマンションやアパートの戸数がおおむね10室以上であることを指します。
事業規模として認められると副業とみなされる可能性があるため注意しましょう。
年間家賃収入が500万円を超えた場合
家賃収入が年間500万円以上になると副業とみなされる場合があります。副業とみなされないためにも年間500万円未満におさえる必要があります。
まとめ
独身で不動産投資をはじめるメリットは初期費用や手元資金を貯めやすい点にあります。家族を持つ既婚者は、収入の大部分を生活費や教育費、住宅ローンなどに割かねばならず、自由に使えるお金は少ないです。
しかし独身であれば、収入の多くを不動産投資の資金として活用できます。頭金を多く入れたり、手元の資金にゆとりがあれば突発的な出費に対応したり、赤字の補填ができたりと余裕を持った不動産投資がおこなえるのです。
ただし、独身でも年代によってメリットとデメリットは異なるため注意が必要です。
自由にできるお金が多い独身時代に将来を見据えて不動産投資を開始すれば、長期にわたってキャッシュフローを貯蓄でき、効率のよい資産形成につながるでしょう。