他人資本でおこなう不動産投資のメリット!自己資金のみとの違いは?
不動産投資にはさまざまなメリットがありますが、「他人資本を活用=金融機関からの融資」を活用することで、少ない自己資金で大きな利益が得られる「レバレッジ効果」に注目してください。これだけ大きな他人資本を利用できる投資方法は不動産投資だけです。
そこで今回は、他人資本を活かした不動産投資のメリットなどについて、自己資金のみで不動産投資をおこなったケースと比較しながら解説します。
また物件購入価格全額を他人資本でまかなう「フルローン」についての注意点なども詳しく解説します。
他人資本で不動産投資をおこなう魅力とメリット
「他人資本」とは金融機関から融資を受けることを指します。自分のお金ではなく、融資を活用して投資をおこなうことで、レバレッジを活かした投資がおこなえるのが、不動産投資の大きなメリットのひとつです。
レバレッジ効果の最大化を図れる
そもそものレバレッジは「テコの原理」を言いますが、不動産投資におけるレバレッジ効果とは「少ない自己資金で大きな収益を得る」ことを指します。
具体的には自己資金(頭金)+他人資本(金融機関の融資)を投入することで、自己資金の何倍もの額の投資になり、大きな利益を得られるのがメリットです。
なお金融機関から融資を受けて不動産投資用物件を購入する場合は、物件価格の1割~3割程度の自己資金を「頭金」とするのが一般的です。
たとえば3,000万円の投資用不動産であれば、頭金は300万円~900万円となり、融資は2,700万円~2,100万円になります。
レバレッジについてさらに詳しくはこちら!>>不動産投資のレバレッジ効果をやさしく解説!リスクにも要注意
自己資金のみとレバレッジ効果をシミュレーションで比較
ここでは「自己資金のみ」と「他人資本(融資)を利用してレバレッジを効かせた場合」の資産規模と収益についてシミュレーションを比較しました。
- 自己資金1,000万円で1部屋1,000万円の利回り5%の区分マンションを購入した場合
- 1部屋1,000万円の利回り5%の区分マンション2室を1室あたり自己資金500万円、金融機関から1,000万円の融資を受けて購入した場合
- 1部屋1,000万円の利回り5%の区分マンション5室を1室あたり自己資金200万円、金融機関から4,000万円の融資を受けて購入した場合
いずれの場合も自己資金は1,000万円、区分マンション1室あたりの価格は1,000万円で利回りは5%です。
(1)では、自己資金1,000万円で1室購入したため、資産規模は1,000万円そのままです。
(2)は1室あたり自己資金500万円を投入し、金融機関から1,000万円の融資を受けて2室購入したため、資産規模は2,000万円となり、自己資金のみのときと比較して倍の資産になりました。
最後に(3)は、1部屋あたり自己資金200万円を投入し、4,000万円の融資を受けて5室購入したことで資産規模5,000万円となり、自己資金のみのときと比べて5倍もの資産を持つことができるのです。
このように融資=他人資本の比率を増やせば増やすほどレバレッジ効果によって、より早くより大きな資産をつくることができるのです。
また運用時の収益に関してもレバレッジ効果が発揮されます。
(1)の自己資金のみで購入した1室から得られる年間家賃収入は50万円、(2)の2室を運用した場合の年間家賃収入は100万円です。
5室を運用する(3)の場合、年間家賃収入は250万円となり、運用による収益も自己資金のみの場合と比較すると融資を受けたほうがより多額の収益が得られることがわかります。(なお、今回の例では借入金に対する利息の支払いは考慮していません)
また不動産投資のローン返済は毎月の家賃収入で賄うのが一般的です。よって、毎月安定した収支を維持できれば、手元にある自己資金を持ち出すことなくローンの返済ができるため、自己資本率を上げることなく利益を得ることが可能になるのです。
資金を手元に残しておける
他人資本を利用するメリットはレバレッジ効果だけではありません。融資を受けることで、投入する自己資金が少なくて済むため、より多くの資金を手元に残しておくことができるのもメリットになります。
不動産投資をおこなっていると予期せぬ修繕費が発生して、一時的に収支がマイナスになることも十分考えられます。とくに一棟アパートなどは建物も大きく部屋数が多い分、多額の修繕費が発生するかもしれません。
もしも補填できる資金が手元にない場合は修繕がおこなえず、物件の価値が下がり、入居付けがむずかしくなり、空室が増えてしまいます。空室が増えれば当然、家賃収入が減少するためキャッシュフローの悪化が懸念されます。
キャッシュフローが悪化すると月々のローン返済がおこなえなくなり、ローン返済が長期間にわたって滞ると物件を差し押さえられてしまうおそれもあるのです。
しかし手元に資金があれば、修繕費用を持ち出しで対応できるため、上記のような悪循環に陥らずに済むため安心です。
それ以外にも、金利が上昇した場合も自己資金があれば、家賃でまかなえないローン返済金を補填も可能です。
このようにさまざまな突発的な出費に対応できるよう、ある程度の自己資金を手元に残してしておくことは非常に大切です。使わなかった自己資金は繰上げ返済にあてたり、物件の資産価値を上げるために設備投資に回したり、多方面で重宝するでしょう。
全額他人資本で不動産投資をおこなうことは可能?
前述したように不動産投資で融資を受ける際は、頭金として物件価格の1割~3割程度の自己資金を用意しますが、自己資金なし(0円)の融資「フルローン」を利用することも可能です。
ここではフルローンの特徴や注意点について解説します。
フルローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう
フルローンとは
フルローンとは、頭金0円で受けられる融資です。
たとえば3,000万円の不動産投資物件の融資をフルローンで受ける場合、頭金は不要なので3,000万円全額が融資されます。
なお、フルローンは頭金なしで利用できますが、そのほかの諸費用(仲介手数料やローン事務手数料、印紙税など)は自身で用意する必要があります。
フルローンを利用するメリットは、自己資金のほとんどを手元資金として残しておくことができ、またレバレッジを最大に効かせることが可能な点です。
しかしフルローンを受けるためには、きびしい融資審査を通過する必要があります。
まず物件の担保価値や利回りが高く、融資を受ける人の属性も高くなければいけません。さらに融資を受ける人の不動産投資に関するノウハウや成功実績についても融資審査時に判断されます。
なかなか厳しい審査基準でありますが、審査をクリアできればフルローンが受けられます。また条件がよい場合は、頭金0円に加えて諸費用も融資を受けられる「オーバーローン」で物件を購入することも可能です。
フルローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう
フルローンの注意点
最大のレバレッジを効かせた投資ができ、手元資金を残せるフルローンですが、利用する際は注意したい点もあります。
借入額が高額な場合、月々のローン返済金額も高くなる
フルローンは頭金を入れていないため、借入金額が高額になるケースがあります。借入額が増えるため、月々のローン返済金額も高くなります。さらに元本に金利が上乗せされるので、返済総額も高額となります。
そのため、空室によって家賃収入の減少や予期せぬ支出の発生などによって収支が悪化した場合、ローンの返済が困難になりやすいため注意が必要です。
フルローンを使用したうえで安定したキャッシュフローを維持するためには、できるだけ利回りが高い物件を選ぶ必要があるでしょう。
金利上昇リスクがある
フルローンを利用した場合、毎月の返済額が大きく、また返済期間が長期になりやすいため、金利が上昇すると支払う利息が増え、月々のローン返済額と総返済額が増大するリスクが考えられます。
2022年12月、日本銀行は金融緩和政策を修正し、長期金利の変動許容幅を0.25%程度から0.5%に拡大すると発表しました。今後は金利上昇に転じると見られているため、これからは金利上昇への対策を考える必要があります。
金利上昇リスクの対策としては、「5年ルール」「1.25倍ルール」の活用が効果的です。
金利が半年ごとに見直される変動型金利には、「5年ルール」「1.25倍ルール(125%ルール)」が設けられているものがあります。
5年ルールとは、金利の見直しで利息が上がっても5年間は返済額が据え置かれます。
1.25倍ルールは、見直し後の返済額の上限が、前回の返済額の125%以下になるというものです。
金利が上昇した場合も返済額が変わるのは5年に1回、それも25%を超える値上げはないということです。これらのルールを活用することで金利上昇による急激なキャッシュフローの悪化を回避することが可能になります。
ローン完済まで時間がかかり、ローン返済中は売却しにくい
フルローンで不動産投資をはじめた場合、借入金額も大きく返済金額も高くなるため、返済期間も長くなりがちです。返済期間を長く設定しすぎると、ローン完済までに時間かかり、結果的に物件が自分の資産になるのが遅くなります。
またローンの残債があっても物件の売却は可能ですが、通常のローンに比べてフルローンは残債が多いため、売却代金で残債を一括返済できない可能性があります。
その場合、手持ちの資金で残債を完済できれば問題はありませんが、資金がなければ売却はできません。
フルローンを利用して物件を購入する際は、出口を見据えたうえで購入を検討することをおすすめします。
諸費用が必要
頭金が不要のフルローンですが、融資はあくまでも物件価格のみであり、物件の代金以外に発生するさまざまな諸費用は自分で用意しなくてはなりません。おもな諸費用は以下になります。
- 融資事務手数料、融資保証料
- 印紙代
- 各種保険料(火災保険、地震保険など)
- 不動産登記費用
- 不動産取得税
- 司法書士報酬
- 仲介手数料(不動産仲介業者を介した場合)
なお諸費用の目安は物件価格の7~10%程度です。たとえば価格が3,000万円の物件であれば、諸費用として210万円~300万円程度を自己資金から用意する必要があります。
「自己資金がないからフルローンにしよう」は危険
頭金0円でローンが組めるフルローンですが、けっして「自己資金を用意できない人のためのローン」ではありません。むしろ、「自己資金がないからフルローンにしよう」という考え方は非常に危険です。
ある程度まとまった自己資金があるからこそ空室や支出で赤字が出ても補填ができ、借入額の大きなフルローンを組んでも安定した賃貸経営がおこないながら収益を拡大していけるのです。
フルローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう
まとめ
他人資本=金融機関の融資を利用し、レバレッジを効かせた投資がおこなえるのが不動産投資最大のメリットです。
同じ自己資金額であっても、自己資金を頭金にして金融機関から融資を受けることで、自己資金のみで物件を購入・運用した場合に比べて、何倍もの資産規模や収益を得られることがわかりました。
またレバレッジ効果だけでなく、他人資本を使うことで、万一に備えて手元に自己資金を残しておくことも可能です。
頭金なしで融資を受けられるフルローンは、レバレッジを最大に活かした投資ができる一方で、借入額が大きいため月々のローン返済が高額になりやすいため注意が必要です。またフルローンでまかなえるのはあくまで物件購入費用のみなので、諸費用に関しては自己資金で用意することを忘れないようにしましょう。
有利に不動産投資をすすめるためにも、上手に他人資本を利用しましょう。