不動産投資の歴史!江戸時代から平成まで、不動産ファンドについても
「不動産投資っていつからはじまったの?」
「昔といまの不動産投資は、どうちがうの?」
不動産投資の起源や歴史に興味を持った方は、ぜひ当記事を読んでみてください!不動産投資の起源といわれる古代ギリシャをはじめ、江戸時代から平成時代にかけて当時の不動産業界の様子やできごとを紹介します。
また不動産小口化商品やJ-REITといった、歴史の浅い不動産ファンドについても解説しています。「少額で不動産投資がしたい」という人は、ぜひ参考にしてください。
不動産投資の歴史のはじまりは紀元前のギリシャ!
不動産賃貸業は歴史が古く、2500年前の古代ギリシャには「不動産」や「抵当権」の概念があったという記録が残っています。当時からあった土地には、いまでいう「所有権者」を示すために石でできた杭が打たれていたそうです。
また石の杭は所有者だけでなく、「だれがお金を貸しているのか、いくら貸しているのか=抵当権者、債権額」も示していたようです。
現在の日本でも、隣地の境界線を明確にするために杭を用いていますし、土地の所有権者をはじめ、抵当権者や債権額は法務局にて登記簿謄本にきちんと記載され、記録、管理されています。
このように不動産投資は2500年も昔からおこなわれている、長い歴史を持つ資産運用・投資事業と考えられるでしょう。
日本の不動産賃貸業のはじまりは江戸時代!
日本の不動産業のはじまりは、江戸時代の「長屋」だと言われてます。長屋とは、一棟の建物に複数世帯が居住する集合住宅を指し、江戸時代の庶民の住まいとして土地の所有者が家賃収入を得ていました。
江戸時代より前の時代、土地の所有者は貴族や武士でした。しかし武士の力が弱まった江戸時代には商人が土地を購入したうえで長屋を建設し、庶民に貸し出す(=賃貸する)ようになったのです。
長屋を借りる人は「店子=入居者」と呼ばれ、ほとんどの場合は本来の持ち主が「差配さん(または大家さん)」と呼ばれる管理人を雇い、家賃の回収や建物の修繕といった長屋と店子の管理がおこなわれていました。
現代の「管理会社」の役割を持つ差配さんですが、差配さんは店子のプライベートな相談に乗ったり解決したり、より生活に密着したサポートをおこなっていたようです。
このように江戸時代には、現代でいうところの不動産売買と不動産賃貸が個人間でおこなわれていました。また当時の金貸しは個人がおこなっていましたが、不動産を担保にしてお金を貸す金貸しも登場し、「不動産業」という職業ジャンルが確立されていくことになったのです。
専業の不動産業者は明治時代に登場
江戸時代の長屋の運営は、土地を持つ商人や地主さんが本業とは別に、いわば「副業」としておこなわれていましたが、明治時代中期以降になり、不動産業だけを専業におこなう「不動産業者」が登場します。
1896年には安田財閥の創始者である安田善次郎が「東京建物」を創業し、住宅ローンの原型となる「割賊販売方式」で不動産売買を開始しました。こうして多くの不動産業者が誕生したのです。
明治時代後期には東京の人口増加にともない中心部の住宅が不足しはじめます。そこで郊外の土地が注目され、宅地開発が活発にすすめられていくのでした。
建物の高層化がはじまった大正時代の不動産業
明治末期に建築された木造5階建てアパート「上野俱楽部」を皮切りに、これまで平屋や2階建てがおもだった建物が大正時代に入り高層化がすすみます。
1921年には「借地法・借家法」も制定されました。
そして大正時代末期1923年9月1日に発生した関東大震災では人命だけでなく、多くの建物が倒壊・焼失しました。被災地では被災した人たちの住居の提供が急がれるなか、不燃性の集合住宅を求める声が大きくなります。
そこで内務省は震災復興事業として「財団法人 同潤会」を設立し、昭和初期にかけてRC造の重層集合住宅の建築をすすめていくことになったのです。
第二次世界大戦後に宅建業法が設立される
昭和時代に入り、アパートなどの集合住宅の建築がすすみ、不動産業は活発になりました。
しかし第二次大戦の勃発により、所要都市は空爆などで多くの建物を失い、深刻な住宅不足に陥ります。
戦後復興が急がれるなか、1945年(昭和20年)終戦の翌年には不動産仲介業などが一部再開されます。ところが当時は不動産業者に対する規制法が存在しなかったため、悪質な業者が増加しトラブルが多発したことで、1950年(昭和25年)に「建築基準法」が制定、1952年(昭和27年)に「宅地建物取引業法(宅建業法)」が成立しました。当初は登録制だった宅建業法は1964年(昭和39年)に免許制に改正され、その後も改正がおこなわれ現在にいたります。
サラリーマンによる不動産投資はいつからはじまった?
さらに1962年(昭和37年)には「建物の区分所有等に関する法律」が制定されます。これによってマンションにおける区分所有権が明確化され、共有部分の権利などに関する規定が定められました。
昭和50年代になり、就学や転勤による単身世帯が増えたことでワンルームマンションの需要が増加し、これまで高価だったマンション一戸あたりの価格が安くなりました。加えて区分所有法や不動産賃貸経営の安定性が広く周知されたことにより、サラリーマンによる不動産投資が普及しはじめます。
昭和60年代以降には「一括借り上げ制度(サブリー)」のように不動産オーナーの空室リスクを軽減する仕組みを採用する建設業者も登場し、ますます個人の不動産投資の門戸が広がったと考えられています。
平成バブルの到来と崩壊による不動産業界の打撃
昭和時代の終盤から平成時代初期にかけ、株式や不動産価格が猛烈な勢いで上昇しました。のちに「平成バブル」と呼ばれる時期の到来です。
日本中が好景気の波に包まれるなか、金融機関も不動産への融資を積極的におこなったことで不動産投資も活発化していきます。なお当時は、購入した土地がどんどん値上がりすることから、「売却益(キャピタルゲイン)」がおもな不動産収入でした。
しかし、土地を持つ人と持たない人の経済格差の広がりや悪質な地上げ行為が社会問題となり、政府の不動産向け融資の引き締めをおこなったことで1991年(平成3年)をピークに地価は一気に下落し、バブル崩壊へとつながります。
地価が下落したことで担保不動産の価値が暴落し、貸出企業の倒産が続出したことで金融機関は巨額の不良債権を抱えてしまいます。
リーマンショックとアベノミクスによる不動産業界の変化
バブル崩壊後、底値まで落ちた日本の不動産に目をつけた外資系不動産ファンドは、積極的に都市部の不動産へ投資をおこなったことで不動産価格はふたたび上昇します。
個人の不動産投資も増え、なかにはフルローンで不動産投資物件を購入し、大きなレバレッジ効果を実感する投資家も増加していきましたが、2008年(平成20年)にリーマンショックが起こります。
世界的な不況のあおりを受けて日本の景気も落ち込むなか、2012年(平成24年)に第二次安倍内閣による「アベノミクス」が打ち出されました。経済の活性化を図るため、民間の金融機関に対して企業や個人への貸付を積極的におこなうようマイナス金利が導入されます。
その後、地域により差がありますが大都市圏の土地価格は緩やかに上昇し、サラリーマンによる不動産投資もますます増加していきました。
スルガショック
「スルガショック」とは、2018年にスルガ銀行の不動産関連の大規模な不正融資が明らかになった事件です。
発覚の発端となったのが、女性専用シェアハウス投資「かぼちゃの馬車」を運営していた不動産会社スマートデイズの経営破たんでした。
これにより、スマートデイズが物件を相場よりも高値で売却したこと、そして資金の貸し付けをおこなっていたスルガ銀行が融資基準に満たない人に対して不正に融資をおこなっていたことが明らかになったのです。
その総額は1兆円以上に上るといわれ、自己破産した個人投資家も多かったことから、不動産業界の一大スキャンダルとして大きく報道されたのです。
このスルガショックによって、不動産投資に対する不信感や警戒心を一般に与えることになり、融資審査の基準が厳しくなるなど不動産投資市場にも小さくない影響を与える結果になりました。
一方で、今後不動産投資をおこなう人にとってのリスク等の注意喚起となった面や、金融機関や不動産業界のコンプライアンス遵守という点ではプラスに働いたとも考えられるでしょう。
少額でできる不動産ファンドの歴史や特徴について
ここまで不動産投資の歴史について解説しました。
ここからは、少額でできる不動産投資として人気を集めている「J- REIT(ジェイリート)」や「不動産小口化商品」といった不動産ファンドの歴史や特徴について解説します。
J-REITのはじまりは?
REIT(リート)とは「Real Estate Investment Trust」(不動産投資信託)の略で、不動産を対象とした投資信託になります。
REITはアメリカで1960年代に誕生し、日本では2000年に「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正により導入されました。海外のREITと区別するために、日本(JAPAN)のJをとってJ- REIT(ジェイリート)と呼ばれています。
J-REITの仕組みと特徴
J-REITは投資家から資金を集め、マンションなどの集合住宅やオフィスビル、商業施設など賃料収入が見込める不動産を購入し、管理・運用して得た賃料収入や売買益から手数料を差し引いたのちに投資額に応じて投資家に分配する仕組みになります。
J-REITは証券取引所に上場しているため、証券口座を持っていれば株式投資と同じように立会時間内に簡単に売買することが可能です。現物不動産の売買には最短でも数ヶ月程度かかるため、流動性がよい点がJ-REITのメリットと言えるでしょう。
また現物不動産投資をおこなうには金融機関から融資を受けるのが一般的ですが、数百万円単位の自己資金(頭金)が必要です。
しかしJ-REITは1口10万円程度の少額で不動産投資がおこなえるため、少額の資金からはじめることが可能です。
さらに現物不動産投資では必須の賃貸管理や修繕などはすべてその分野の専門家がおこなうため、手間やランニングコストがかかりません。
一方でJ-REITにはリスクもあります。まず、J-REITは元本保証がされていません。そのため不動産市況や経済情勢、災害、取引のタイミングによっては購入価格を下回って損失が出るケースがあります。
またJ-REITは証券取引所に上場しているため、投資法人が倒産した場合も価格が大幅に下落するおそれがあるため注意が必要です。
J-REITについて詳しくはこちら!>>少額で不動産投資ができるREIT(リート)のメリット・デメリットを解説!
不動産小口化商品のはじまりは?
不動産小口化商品は、平成バブル期に登場した共有持分権による運用方法がはじまりと言われています。
1995年に投資家を保護することを目的とした「不動産特定共同事業法」が施行され、不動産小口化商品の販売は許可制となりました。それ以降、何度か法改正され現在のかたちとなり、いまでは投資家から注目を集める人気の不動産ファンドになっています。
不動産小口化商品の仕組みや種類は?
不動産特定共同事業である不動産小口化商品は、国交省大臣(または都道府県知事)の許可を得た事業者(不動産特定共同事業者)によって、不動産特定共同事業法に基づいて販売されています。
事業者は不動産物件の選定をおこない、資産価値の上昇が期待できる物件や収益の安定性が見込まれる不動産を購入します。そしてその不動産を小口に分割し複数の投資家に販売して資金を集め、運用益を投資家に分配するのです。
不動産小口化商品一口あたりの投資額は数万円~100万円程度で、投資対象となる不動産には好立地・超高額なオフィスビルやタワーマンションなど、個人投資がむずかしいものも含まれます。
不動産小口化商品は3つの種類があります。
ひとつ目は「匿名組合型」といい、投資家と事業者が匿名組合契約を結び、事業者が所有者として不動産の管理運営をおこないます。匿名組合は有限責任なため、元本割れした場合は投資した金額以上に責任を負わずに済みます。
投資額は一口あたり数万円からとなり、運用期間は数ヶ月から5年程度の短期・中期のものが多いので不動産投資初心者にもおすすめです。
ふたつ目の「任意組合型」は、投資家が不動産の所有権を保有でき、相続時には実物不動産と同じように相続税評価額で計算されるため相続税対策に役立ちます。
また、任意組合型の不動産小口化商品は、一口あたり100万円以上、運用期間は10年以上で募集されるものが多く、長期に渡って安定した収益を得たい人におすすめです。
ただし、所有権を登記簿に登録するため、不動産取得税や登記手続きの費用が発生します。また、匿名型とは異なり、無限責任となるため出資した金額以上の責務を負う可能性があるため注意しましょう。
3つ目の「賃貸型」は、複数の投資家が不動産の共有持分を購入し、不動産を事業者に賃貸して管理・運用をしてもらうタイプの不動産小口化商品です。
一口あたり100万円以上で10年以上の長期投資が多いため、運用がうまくいっていると安定した収入が期待できます。ただし商品が少なく、買いたくても買えないのがデメリットです。
不動産小口化商品ついて詳しくはこちら!>>不動産小口化商品ついて詳しく解説!種類やメリットとデメリットは?
まとめ
不動産投資の歴史は古く、起源は古代ギリシャからはじまり、江戸時代には「長屋」という集合住宅が存在し、「店子」と呼ばれる入居者に賃貸して賃料を受け取っていました。また長屋や店子の管理は「差配さん」がおこなっていたなど、その仕組みは現在とほぼ同じだったことがわかります。
ただし不動産投資を取り巻く環境は、歴史的事件や経済状況によって目まぐるしく変化しています。
とくに、かつては富裕層向けだった不動産投資が、近年になりだれにでもおこなえるようになったのは不動産投資において大きな変化だといえるでしょう。
また、最近では少額で不動産投資がおこなえる「J- REIT(ジェイリート)」や「不動産小口化商品」も登場しています。「不動産投資に興味はあるが、現物不動産投資には手が出ない」という人におすすめなので、ぜひ参考にしてください。