不動産投資でローン残債がある物件も売却可能!注意点や流れを解説
ローン残債がある投資用不動産の売却を検討するにあたって、「ローン返済中の不動産は売却できるのか?」と思う人もいるかもしれません。結論から言うと、ローン残債がある不動産でも抵当権を抹消できれば売却は可能です。ただし売却できないケースもあるため、注意が必要です。
今回は、ローン残債がある不動産投資物件を売却できるケースとできないケースそれぞれについて、売却時の注意点とあわせて解説します。またローン返済中の不動産を売却する際の流れも紹介するので、残債のある不動産の売却を検討中の人はぜひ参考にしてください。
ローン残債がある不動産投資用物件の売却を検討するのはこんなとき
ローン返済中にもかかわらず不動産投資用物件の売却を検討する理由には、ネガティブなケースとそうでないケースが存在します。
ここではローン残債がある不動産投資用物件の売却を検討する場合の代表的な例を紹介します。
月々のローン返済が困難なとき
ローン返済中の不動産投資用物件を売却するケースとして一番多いのが、ローン返済が困難になった場合です。
投資用不動産を購入するには、金融機関の不動産投資ローンを利用するのが一般的です。不動産投資ローンを利用する場合、個人属性や投資用物件の収益性や担保価値が審査され、「返済可能」であることを前提に融資が実行されます。
しかし、実際に不動産投資をはじめてみると想定した以上に空室期間が長引いたり、修繕などによる出費が大きかったり、毎月赤字になるケースも少なくありません。一時的な赤字であれば手持ち資金から持ち出しで対応できますが、黒字にならない限り赤字は増える一方です。
手持ち資金も尽きると、いよいよローン返済が困難になります。その結果、これ以上赤字を増やさない「損切り」としてローン返済の途中であっても物件を売却することになるのです。
大規模修繕工事の時期が近いとき
一棟アパートやマンション、戸建て賃貸の場合、資産価値や見栄えを保つために建物の定期的な修繕が欠かせません。とくに10年単位でおこなう「大規模修繕工事」は屋根の葺き替えや外壁塗装、各種設備の交換などに高額な費用が発生します。
そこで大規模修繕費用を浮かすために、多少売却価格が安くても大規模修繕前の物件が売りに出されるのもめずらしくありません。
物件が高値で売れるとき
購入したときより高値で売れる場合は、ローンの返済中であっても売却を検討する価値は十分あります。
たとえば物件が満室であれば、ほかの不動産投資家から「稼働状況がよい物件」とみなされやすくなるため、高く売却できる可能性が高まります。
また再開発など、物件の周辺環境の変化によって土地価格が上がり、高値での売却が期待できるケースもあるでしょう。
このように購入時よりも高い値段で物件が売れる状況であれば、ローン残債のある不動産であっても売却益を見込むことができるでしょう。
不動産売却のタイミングについて詳しくはこちら!>>不動産投資物件の売却に最適なタイミングと有利にする方法!
ローン残債がある不動産投資物件を売却する方法を解説
ローン残債がある不動産を売却することは可能です。
ただし、ローン返済中の不動産を売却するためには、設定されている「抵当権」を抹消しなければなりません。
抵当権とは、不動産に設定された担保を意味し、抵当権が設定されている=残債がある不動産はローンを貸している金融機関の担保となっているため、所有者といえども自由に売却することはできません。
ここでは残債がある不動産投資用物件を売却する方法について解説します。
売却代金でローンを完済する方法
ローン残債があっても、売却代金でローンを一括返済できれば抵当権抹消登記がおこなえます。ただし、不動産投資用物件の売却時には諸費用や税金が発生します。売却価格全額を、そのままローン返済にあてることはできないため注意が必要です。
詳細は、後述する『ローン残債がある不動産投資物件を売却する際の注意点』の『売却には諸費用や税金がかかる』をご覧ください。
売却代金でローンを完済できない場合の対処方法
売却代金がローン残債を下回るケースでは、抵当権抹消登記がおこなえないため物件の売却はできません。このような状態を「オーバーローン」と言い、以下の方法で売却を可能にできます。
完済に足りない額を調達する
ローンを完済するのに不足した分を自己資金等で補填できれば、抵当権抹消登記がおこなえるので売却が可能になります。
たとえば、ローン残債が2,000万、売却価格が1,500万円の場合、500万円(+諸費用・税金)を自己資金等で補填する必要があります。
不足額を貯蓄から捻出したり、家族や親族から借りたり、金融機関の「多目的ローン」などを利用することもできます。
多目的ローンは、不動産投資だけでなく、さまざまな用途に利用できる金融商品です。(商品によっては使用目的が定められている場合もあります)ただし、多目的ローンを利用する際は融資審査が必要になるため、審査で落とされる可能性があることも留意しておきましょう。
売却のタイミングを見直す
ローンの完済に必要な額が用意できない場合は、売却のタイミングを見直すのもひとつの方法です。月々の返済をつづけることでローン残債は減っていくため、やがてオーバーローンは解消されることになります。
経年によって投資用物件の建物の価値は下がっていきますが、土地価格が0円になることは、まず考えられません。ローン残債と売却価格が同じになるタイミングを待ち、それまでは返済をつづけていくとよいでしょう。
任意売却する
任意売却とは、債権者(融資をした金融機関など)の合意を得て、所有する不動産を売ってローンの返済にあてる方法を言います。
入札で売却額が決まる競売と比べると、市場価格に近い額で売れる可能性が高く、その分ローン残債を減らせるのが任意売却のメリットです。また、売却後のローン不足分の返済についても相談に応じてもらえる可能性があります。
すべてが強制的におこなわれる競売よりも自由度が高いため、ローンの返済がきびしくなってしまった場合は手遅れになる前に任意売却で物件の処分を検討するとよいでしょう。
ただし、任意売却によってローン残債がすべて帳消しになるわけではありません。また売却するための手順などは一般の不動産売買と同様なので売却までに時間がかかったり、場合によっては買い手が付かず売却できなかったりすることも考えられます。
物件が売れるまではローンの返済はつづくことを覚えておきましょう。
ローン残債がある不動産投資物件を売却する際の注意点
ここでは残債のある不動産投資用物件を売却する際に気をつけておきたいポイントを解説します。
事前に金融機関に連絡する
一般的にローンの繰り上げ返済手続き及び抵当権の抹消は引渡しと同じ日におこないますが、手続きに必要な書類などの準備に2~3週間ほど要します。
金融機関によって準備期間は異なるので、繰り上げ一括返済をおこなう場合は、あらかじめ余裕を持って金融機関に連絡しておくとよいでしょう。
売却には諸費用や税金がかかる
不動産を売却した際には諸費用や税金が発生します。そのため、売却価格がローン残債ぎりぎりの場合、諸費用等がまかなえない場合もあるため注意が必要です。
不動産売却時に発生するおもな諸費用や税金には、以下のようなものがあります。
◇仲介手数料(取引額によって変動)
- 400万円超:取引額の3%+6万円
- 200万円超400万円以下:取引額の4%+2万円
- 200万円以下:取引額の5%
◇印紙税(取引額によって変動)
- 1,000万円超5,000万円以下:1万円
- 5,000万円超1億円以下:3万円
◇登録免許税
- 抵当権抹消:不動産1個につき1,000円(土地と建物の場合は2,000円)
◇司法書士費用
- 抵当権抹消登記:10,000円~20,000円程度
◇繰上返済手数料
- 都市銀行:1万円程度
- ネット銀行:5,000円程度
◇譲渡所得税(売却益があった場合。売却損のときは不要)
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 譲渡税率
譲渡所得税の税率は、所有期間が譲渡した年の1月1日現在で5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は以下のようになります。
【譲渡所得税率】
- 保有期間が5年超(長期譲渡所得):20.315%
- 保有期間が5年以下:(短期譲渡所得):39.63%
不動産の売却について詳しくはこちら!>>不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も
ローン残債がある不動産投資物件を売却する流れ
ここではローン残債がある不動産投資物件の売却の流れを解説します。
1.現状の把握と残債を確認する
前述したように、ローン残債のある不動産を売却するには、残債を一括返済する必要があります。まずは金融機関に売却する旨を伝えて残高証明書を出してもらい、ローンを完済するためにお金がいくら必要になるのかを確認しましょう。
また『ローン残債がある不動産投資物件を売却する際の注意点』でも述べたように、売却する際は諸経費が必要になります。
ローン残債と諸費用、あわせていくら必要になるのか、しっかり確認しましょう。
2.物件を査定する
不動産仲介会社に物件の査定をおこなってもらい、売却額でローンを完済できるかどうかを確認しましょう。
査定をおこなう場合はかならず複数の会社に査定を依頼しましょう。複数社を比較・検討することによって、よりよい条件で売却してくれる仲介会社を選べます。
3.仲介会社を選び、募集をスタートする
不動産仲介会社を選んだら、その会社と媒介契約を締結し、募集を開始してもらいましょう。購入希望者が見つかれば、仲介会社を通して購入申込書が提出されます。場合によっては価格や売却条件などの交渉をおこないます。
4.売買契約を締結・引渡し・ローンの一括返済をおこなう
購入希望者と条件の合意ができたら不動産の売買契約書を締結します。その後、買主に物件を引渡し、代金を受領した後にローンの一括返済をおこないます。
なお、オーバーローンの場合は残金を用意しておきましょう。
5.抵当権を抹消する
ローンの完済後、金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類(ローン完済を証明する弁済証明書、委任状、金融機関の登記事項証明など)が送られてきます。
なお、抵当権の抹消手続きは自分でおこなうこともできます。ただし、登記手続きに慣れていない人が手続きをおこなう場合は手間と時間がかかり、またトラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
心配な人は司法書士に依頼することをおすすめします。
不動産投資でローン残債を減らす方法
安定した不動産投資をおこなうためには、月々のローン返済を無理のない範囲で月々のローン返済をおこなう必要があります。ここでは不動産投資でローン残債を減らす方法について解説します。
購入時に自己資金(頭金)を多めに入れて返済比率を下げる
不動産投資における「返済比率」とは、家賃収入に対して毎月発生する融資の返済額の比率を指します。返済比率は融資を受ける金融機関によって違いますが、収入と返済額を比較することで、ローンの支払いリスクがどのくらいあるかを知る指標となります。
一般的に安全な不動産投資の返済比率の目安は50%と言われています。比率が低ければキャッシュフローに余裕がうまれ、逆に高くなればなるほどキャッシュフローが減るため経営状態はきびしくなります。
返済比率を下げるには、購入時に自己資金(頭金)を多めに入れて借入額を減らすことが効果的です。レバレッジ効果は弱くなりますが、月々の返済額を減らすことで収支が安定しキャッシュフローがプラスになります。
不動産投資ローンの返済比率について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?
一部繰り上げ返済をおこなう
一部繰り上げ返済をおこなうことで月々の返済金額を減らしたり、返済期間を短縮できたりします。また元本も減るため金利負担が減り、総返済額も少なくできます。
ただし、ローン期間中の繰り上げ返済には一定の手数料が発生する場合があります。金融機関によって手数料額は異なりますが、繰り上げ返済をおこなうごとに手数料が発生してしまうため注意しましょう。
ローンの繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説
ローンの借り換えをおこなう
今よりも安い金利のローンに借り換えることで利息額が減り、月々の返済額が減少するため安定したキャッシュフローを得られます。繰り上げ返済のように自己資金を投入する必要がないので、不動産経営状況が悪化している場合でも、万一に備えて資金を手元に残しておくことも可能です。
なお、不動産投資ローンを借り換えるにあたって手数料などが発生する場合があります。
またローンの借り換えは、すでに付き合いのあった金融機関からの信用を損なう可能性もあるため注意が必要です。
金融機関側にとって他行へのローン借り換えは、計画どおりの利息収入が見込めなくなることを意味します。今後も金融機関と良好な関係をつづけたいのであれば、安易に借り換えをおこなわないほうがよいでしょう。
不動産投資ローンの借り換えについて詳しくはこちら!>>不動産投資ローン借り換えに適したタイミングやメリット・デメリット
まとめ
不動産投資用物件は、ローン残債があっても売却は可能です。ただし、その場合は残債を一括返済して抵当権を抹消する必要があります。
売却代金でローン残債を返済できれば問題はありませんが、ローンの残りが売却代金を上回る場合は、不足分を自己資金等で補填しローンを完済しなければなりません。
そのためにもまずは、残債の正確な額と売却にかかる諸費用や税金を把握したうえで、物件がいくらで売却できるのか、残債を返済するのに足りる額であるか確認することからはじめましょう。