軍用地で不動産投資をおこなうメリット・デメリット!始め方を解説
安定した収益が得られることで人気の「軍用地の不動産投資」ですが、米軍基地の多い沖縄では一般的な不動産投資方法です。しかし、沖縄以外の地域に住んでいる人にはなじみが薄いようです。
そこで今回は、軍用地の不動産投資について、その仕組みやメリットとデメリットについて解説します。また軍用地を購入する際の流れも紹介します
軍用地を知らない人も、ぜひこの機会に軍用地投資を考えるきっかけにしてください。
軍用地とは?
沖縄の米軍基地は「強制摂取」された民有地、公有地がほとんどですが、法的には国が土地の所有者から「賃貸借」して自衛隊や米軍基地に提供している形になっているのが実状です。
賃貸借契約の形をとっているので、国が土地所有者に借地料を払うことになります。
なお軍用地の地主(所有者)になるための資格などはなく、だれでも購入し所有者になることができます。
軍用地で不動産投資をおこなう仕組みと始め方
ここでは軍用地投資の始め方として、購入方法や物件の選び方、利回りなどについて解説します。
軍用地の価格はどう決まる?
軍用地の販売価格は、一般の土地のように「坪単価×面積」で決まるのではなく、「年間借地料(土地面積×借地料単価)×倍率」で求めます。
たとえば、1㎡あたりの年間借地料単価が1,000円の軍用地200㎡の倍率が30倍である場合を計算してみましょう。
1,000円×200×30=600万円
この軍用地の価格は600万円になります。
なお倍率とは、軍用地の施設や立地等条件によって変動します。倍率は国や不動産会社が決めるのではなく、購入希望者が多い施設は倍率が高くなります。
土地が返還される可能性が低い軍用地=長期に渡り借地料を得られる可能性のある土地は人気が高く、倍率が高くなる仕組みです。
ただし返還予定地であっても、跡地利用が計画され地価の上昇が期待できる土地は倍率が高くなる傾向がみられます。
ここ数年、沖縄軍用地の購入者は増加しているため、それにともない倍率も上昇しています。
借地料の決まり方
借地料は毎年、国(防衛施設局)と沖縄県軍用地主連合会とのあいだで交渉がおこなわれ、そこで翌年分の借地料が決まります。
借地料の支払いは、通常年2回で毎年8月頃に年間の借地料が国から支払われ、値上がりした分の借地料が翌年の1~2月頃に振り込まれます。
軍用地の購入方法
軍用地は一般の不動産と同じように、だれでも購入可能です。一般の不動産会社のほか、軍用地を専門にあつかう不動産会社で購入できます。
また購入手続きも一般的な土地購入の流れと同様ですが、基本的に軍用地には立ち入れないため、現地確認はおこなえません。
現地調査をおこなう代わりに、地図や物件概要・登記簿などを十分確認したうえで購入することをおすすめします。
軍用地の選び方
軍用地で不動産投資をおこなう場合も通常と同じように、投資の目的や目標をある程度決めておきましょう。
詳しくは後述しますが、軍用地は通常の不動産と異なり、「返還」される可能性があります。
そのため、資産として長期的な運用を希望する場合は、返還の可能性が低い施設(軍用地)を選びましょう。土地が返還されない限り、借地料を受け取りつづけることができます。
一定期間運用したのちに売却して売却益を狙うのであれば、現時点で人気が高く、今後も倍率の上昇が見込まれる施設を選ぶとよいでしょう。返還後の開発予定がすでに決まっていて、倍率が上昇中の返還予定地などがおすすめです。
軍用地投資の利回り
軍用地投資の利回りは2~3%前後です。
利回り2%で500万円の土地であれば年間賃料収入は10万円、利回り3%で1,000万円の土地であれば30万円程度の賃料収入(年間)を見込むことができます。
東京都の築年数10年未満ワンルームマンンションの平均利回りは4.5%程度なので、軍用地の利回りは決して高いとはいえません。とくに短期間で大きな収益は見込めませんが、先に述べたように返還予定がない施設であれば長期にわたって安定した収入を得ることが可能です。
軍用地で不動産投資をおこなうメリット
ここでは軍用地で不動産投資をおこなうことで得られるメリットについて解説します。
安定した賃料が得られる
軍用地の賃料は日本政府が支払っています。そのため支払いが滞ったり、遅延したりといった事態にはなりません。通常の不動産投資のように空室期間による家賃収入の減少や家賃滞納のようなリスクを負う必要はないのです。
またアパート経営などの賃貸経営には欠かせない、賃貸管理やメンテナンス・修繕にかかる費用やリスクもほとんどありません。軍用地投資で発生するランニングコストは、1年分の固定資産税と軍用地主会に加入した場合の会費などで済みます。
長期間にわたって安定した収入を毎月得られるのが軍用地運用のメリットです。
賃料は毎年上昇している
軍用地の賃料収入は年円上昇しているため、そのまま所有しつづけるだけで毎年賃料収入が増えていきます。今後も上がりつづけるという保証はありませんが、過去30年間一度も値下がりしていないことから期待値は高いです。
節税効果が期待できる
軍用地は、一般の土地評価額よりも低く設定されています。そのため、現金を軍用地へ資産組み換えすることで財産の評価が低くおさえられ、結果として相続税や贈与税の軽減につながります。
軍用地の相続税評価額は、以下の計算式で求められます。
【軍用地の相続税評価額の計算式】
不動産評価証明書(役所等取得)価格×軍用地の倍率×(1−40%)
計算に使用される「軍用地の倍率」は、前述した「軍用地の価格の計算」に使用した倍率とは異なります。なお軍用地の倍率は、国税庁HP『路線価図・評価倍率表』で確認できます。
一般的な不動産より流動性が高い
一般的な不動産の売買には時間がかかります。不動産の種類や立地、価格にもよりますが、物件を売りに出してかた売買契約の締結までかかる平均は約6ヶ月程度と言われています。
買手がつかない場合はさらに時間を要することも少なくなく、流動性の悪さは不動産投資のデメリットのひとつです。
しかし、安定した収益が得られることから人気の高い軍用地は、売り出されるとすぐに買手がつく場合も多いです。そのため、一般の不動産のように売りたくても売れない「流動リスク」は少ないと考えられます。
通常の不動産投資よりもリスクが少ない
前述したように、軍用地では空室リスクや家賃滞納リスクは心配する必要がありません。
また不動産投資のリスクのひとつである「災害リスク」も、軍用地ではリスク対策は不要です。万一災害が起こったとしても基地内は米軍や自衛隊が対応するため、土地オーナーがなんらかの対処をする必要はありません。
また、返還されない限り賃貸借契約はつづくため、災害の影響で土地運用がとん挫する心配もないのです。
さらに経済変動リスクについても、軍用地内では不景気による退去は起きないであろうことから、ほぼ影響はないと考えられます。
軍用地で不動産投資をおこなうデメリット
メリットの多い軍用地の不動産投資ですが、実は大きなデメリットがないのもメリットです。とはいえ、メリットを活かすためにもどのようなデメリットがあるのか、しっかり把握しておきましょう。
返還リスクがある
軍用地のほとんどが、日本が米軍に貸しているものです。そのため米軍基地が縮小や撤退となれば土地は所有者に返還されます。
軍用地が返還されると、借地料の支払いはなくなります。ただし、返還が決定してから引き渡しまでのあいだは借地料と同等の補償金が支払われます。
また返還後の跡地利用計画によっては地価高騰する可能性もある一方で、立地がよくない土地や利用が困難な土地の場合は、返還されても跡地利用や売却がむずかしいケースも考えられます。
いざ返還となった際に困らないよう、軍用地を購入する際は返還後の土地活用方法を十分検討する必要があるでしょう。
家賃収入のように月ごとの収入が得られない
前述したように、軍用地の借地料の支払いは毎年8月頃に年間の借地料がまとめて国鵜から支払われ、値上がりした分に関しては翌年の1~2月頃に振り込まれます。
通常の不動産投資のように毎月収入を得られるわけではないので、資金繰りに流用したい場合は注意が必要です。
人気で購入できない
人気の軍用地投資ですが、人気過ぎて優良な軍用地は売りに出された端から売れてしまい、買いたくても買えないのがデメリットです。
実際、軍用地を扱っている不動産会社のサイトをみても、だいたいが契約済となっています。通常の不動産投資では、複数の物件をじっくり比較検討して購入を決めますが、軍用地に関しては検討している時間が長くなればなるほど、購入できる機会が失われてしまう可能性が高いです。
かと言って、みつけた瞬間になにも考えずに購入するのはおすすめできません。
返還される可能性のある軍用地だからこそ、返還後の利用方法までしっかり考えたうえで購入する必要があります。
まずは軍用地投資についてしっかり勉強し、物件の良し悪しを判断できる知識を養いましょう。
共有物件のデメリット
「共有物件」とは、複数人でひとつの軍用地を購入し、持ち分に応じて借地料を受け取ります。単独の物件よりも1〜2倍程度低い倍率で購入できるメリットがありますが、一方で単独物件と比較すると金融機関の担保評価が低くなる傾向があるため、売却価格が安くなる可能性があります。
また返還後に売却する場合、共有者全員の同意が必要になります。加えて、土地の活用方法を決める場合も共有者のうち過半数以上の同意が必要です。こういった煩わしさを避けたい場合、単独での物件購入がおすすめです。
不動産投資で軍用地を購入する際の流れ
軍用地を購入する流れは、一般の不動産を購入する場合とほとんど同じです。ここでは軍用地を購入するまでの流れを紹介します。
STEP1:準備期間
具体的に物件の選定をはじめるその前に、まずは軍用地の購入目的(相続税対策や年金代わりなど)、予算、希望する借地料の金額、所有期間などを明確にしておきましょう。またこの時点で頭金や購入資金の用意もしておくとよいでしょう。
STEP2:物件の選定
物件の選定をおこないます。軍用地の売買を専門におこなう不動産会社のホームページなどから物件を選びましょう。なお人気の物件は、あっという間に売れてしまいます。目ぼしい物件があれば、その場で問い合わせが必要です。
STEP3:物件の精査
軍用地は立ち入って現地を確認することができないため、不動産会社が提供する物件情報のほか、「土地借地料算定調書」「登記簿謄本」「公図」「地図」「地積併合図」「航空写真」などの書類をもとに検討します。
STEP4:買付証明書の提出
購入したい軍用地が決定したら、購入の意思を示すために「買付証明書」を提出します。指値など交渉したいことがあれば、このタイミングでおこないましょう。ただし、人気の軍用地は、少しでも遅れてしまうと、ほかの人に買われてしまう可能性が非常に高くなるため注意しましょう。
なお軍用地ローンを利用する場合は、この時点で仮審査の申し込みをおこないます。
STEP5:重要事項の説明・売買契約の締結
軍用地ローンの仮審査に通過したら宅地建物取引主任者が立ち合いのうえ、重要事項の説明を受けましょう。
一度契約してしまうと、契約解除などをおこなうのは非常にむずかしくなります。不明点などがあれば売買契約を交わす前に納得いくまで確認しましょう。
契約の際は以下のものが必要です。
- 手付金(売買価格の5~10%が目安)
- 印紙代
- 印
- ・本人確認ができる書類(運転免許証やパスポート、健康保険証など)
- 仲介手数料(半額)
また軍用地ローンの本審査もこのタイミングで申し込みましょう。
STEP6:決済・軍用地の引き渡し
軍用地ローンの本審査に通ったら、決済と土地の引き渡し手続きをおこないます。
決済では、物件価格から契約時に支払った手付金を差し引いた残金を支払ったのち、所有権移転登記(不動産名義変更の登記)がおこなわれます。
当日は以下のものが必要になるので忘れずに用意しましょう。
- 実印
- 印鑑証明書
- 土地代残金
- 登記費用(事前にお見積りいたします)
- 住民票抄本
- 仲介手数料残金
決済と引き渡しが終わったら、軍用地主会へ届出書を提出します。以上で取引は完了です。
まとめ
軍用地でおこなう不動産投資は、国から安定した借地料を得られるだけでなく、不動産投資特有のリスクである空室や滞納リスク、災害リスクがないなど、安全な不動産投資といえます。
その代わり利回りは2~3%程度と高くありません。
また軍用地は返還される可能性があるため、軍用地を選ぶ際は返還後を考慮したうえで購入を決定しましょう。