不動産投資のビジネスモデルを解説!賃貸経営に必要な基礎知識
不動産投資に興味があっても、仕組みや特徴がわからず躊躇している人も多いようです。安定した不動産投資をおこなうためにも、その仕組みや特徴をきちんと理解しておくことで、投資目的に応じて適切な投資手法を選択することができるようになります。
今回は不動産投資の基本的なビジネスモデルについて解説します。また不動産投資のメリットとデメリット、収益物件の種類と特徴も紹介します。
不動産投資のビジネスモデル:不動産投資の基礎知識
不動産投資とは、マンションやアパートなどの収益物件を購入・建築し、第三者に賃貸することで利益を得る投資を指します。またアパートやマンションなどの現物不動産だけでなく、不動産に直接投資をしない「J-REIT」などの金融商品も不動産投資の一種です。
収益物件の購入費用は金融から融資を受けるのが一般的
アパートやマンションなどの現物不動産に投資する場合、収益物件の取得費用は金融機関から融資を受けるのが一般的です。そのため、物件価格よりも少ない自己資金で不動産を取得でき、運用することで収入を得ることができるのです。
融資の上限額の目安は、融資申込者の年収の10倍程度と言われています。ただし、本人の個人属性や収益物件の資産価値・収益性によっては、高額の融資を受けられるケースもあります。
不動産投資の融資について詳しくはこちら!>>不動産投資の融資の可否はどう決まる?審査に通りやすいのはこんな人
また不動産投資のローン返済は、基本的に家賃収入から支払います。そのため生活費などを減らすことなく、これまで通りの生活をしながらローン返済がおこなえるのです。
ただし、想定した家賃収入が得られない場合や想定外の支出などでキャッシュフローが悪化するとローン返済やランニングコストの支払いがおこなえなくなることもあります。その場合は手持ちの資金から不足分を補填する必要があります。
万一に備えて、補填できる資金を用意しておくと安心です。
不動産投資のビジネスモデル:収益の種類
不動産投資から得られる収入には、「インカムゲイン(家賃収入)」と「キャピタルゲイン(売却益)」の2種類があります。それぞれの特徴について解説します。
インカムゲイン
不動産投資におけるインカムゲインとは、所有している収益物件の入居者から得られる、「家賃などの収入」を指します。
インカムゲインは入居者さえいれば、安定した収入を長期に渡って得られるのがメリットですが、後述するキャピタルゲインのように短期間で大きな収益を得ることはできません。
また毎月得られるインカムゲインは、その全額が利益になるわけではありません。インカムゲインからローン返済や管理費、税金などのランニングコストを差し引いた残りが利益になります。そのため、不動産投資をはじめる際は収支シミュレーションをおこない、しっかりと利益を出せる収益物件を選びましょう。
キャピタルゲイン
不動産投資におけるキャピタルゲインとは、所有・運用してきた不動産を売却して得る「売却益」を指します。一般的には、安く購入した不動産を、購入額より高く売ることで利益を得ます。
たとえば、2,000万円で購入した不動産が3,000万円で売れれば、単純に1,000万円の利益を得られます。インカムゲインとは異なり、短期で大きな利益を出すことが可能です。
ただし、キャピタルゲインを得られるかどうかは土地の見きわめが必要です。また現在の不動産市場はバブル期のように、どんな不動産でも値上がりする市場とはいえません。
そのため不動産投資初心者がキャピタルゲイン狙いで不動産投資をおこなうのはリスクが高く、大きな損失につながるおそれもあるので注意が必要です。
なお、売却で損失が出た場合は「キャピタルロス(売却損)」と言います。
不動産投資のビジネスモデル:利回り
不動産投資における利回りとは、物件価格に対する家賃収入額の割合のことを指し、収益物件を選ぶ際に重要な指標となる数値です。
不動産投資でよく使用される利回りは、「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。それぞれの意味と計算方法を解説します。
表面利回り
不動産広告に記載されている利回りの多くは、この表面利回りです。
【表面利回りの求め方】
表面利回り(%)= 年間の家賃収入 ÷ 物件の購入価格 × 100
計算式からもわかるように表面利回りの計算には、物件購入時の諸費用や運用時の必要経費は考慮されていません。そのため実際に運用をはじめた場合の利回りは、この表面利回りを下回る場合がほとんどです。
表面利回りの数字だけで物件を購入してしまうと思わぬ失敗につながるため注意が必要です。
より現実的な利回りを把握したい場合は、下記の実質利回りを参考にしましょう。
実質利回り
物件購入時の諸費用や運用時の必要経費を反映しているため、実際に運用した場合に近い数値を算出できます。
【実質利回りの求め方】
実質利回り(%)= (年間家賃収入 - 必要経費)÷( 物件価格 + 諸費用 )× 100
なお必要経費には、管理費、修繕費、固定資産税・都市計画税、仲介手数料、雑費などがあります。ただし、家賃以外の維持費用は想定額であるため、あくまで「実際に近い数値」であることを念頭においておきましょう。
不動産投資のビジネスモデル:投資物件の種類
不動産投資で投資対象となる不動産の種類はさまざまです。ごく一般的なアパートなどに投資する現物投資のほか、J-REITなどの不動産投資信託なども選択できます。ここでは、代表的な不動産投資物件を紹介します。
区分マンション
一棟マンションの1室を取得して賃貸することで家賃収入を得ます。単身向けのワンルームタイプやファミリー向けタイプなど、間取りや広さはさまざまな種類があり、それによって投資額も変わってきます。
区分マンションに投資するメリットは、物件価格が安く、少ない自己資金でもはじめやすい点です。最初の投資物件としてもおすすめです。
ただし、区分マンションを1室しか所有していない場合は賃料も少なく、また空室時は家賃収入が0円なのがデメリットです。
区分マンション投資について詳しくはこちら!>>区分マンション投資は儲からない?メリットや対策方法を解説
一棟アパート・一棟マンション
アパートやマンションを一棟まるごと取得し、部屋を第三者に貸し出します。
複数の部屋を賃貸するため、区分マンションや戸建て賃貸に比べて家賃収入を多く得られます。
また一棟物件の大規模修繕工事やリノベーションなどは、所有者が自由におこなえます。そのため物件の資産価値の維持や向上が図りやすくなるのもメリットです。
デメリットは、一棟物件の取得費用(購入、建築)が高額な点です。一棟アパートで数千万円以上、一棟マンションであれば億単位になるでしょう。当然、借入金も高額になるため、無理なくローン返済ができるよう、しっかり収支シミュレーションをおこなう必要があります。
一棟アパート投資について詳しくはこちら!>>不動産投資で一棟アパートを選ぶメリットを解説!選び方のポイントも
戸建て賃貸
戸建て住宅を取得し賃貸します。
戸建て賃貸は供給が少ないため、いったん入居が決まれば長期入居が期待できます。また物件の清掃などは入居者がおこなうため、清掃を外部委託する必要がありません。
ただし、戸建て住宅は退去後の原状回復リフォームなどの費用が高くなりやすいのがデメリットです。できるだけ長期間入居してもらえるよう、ファミリー向けに好まれる立地の物件を選びましょう。
戸建て賃貸投資について詳しくはこちら!>>戸建て賃貸で不動産投資!失敗しない選び方やメリット・デメリット
駐車場
駐車場経営も不動産投資の一種です。
駐車場経営は、普通乗用車1台分の駐車スペース(6m×2.5m=15㎡程度)が確保できれば土地の形などに関係なくおこなえるため、変形地や狭小地でもはじめやすいのがメリットになります。
一方で、駐車場経営は不動投資であっても住宅用地ではないため、固定資産税や都市計画税の減税措置の対象外なため、更地と同じ扱いになります。
なお、駐車場経営には「月極駐車場」と「コインパーキング」の2種類があります。
月極駐車場経営は、1ヶ月単位で借主と賃貸契約を結び、駐車スペースを賃貸することで賃料を受け取ります。借り手がいるかぎり、毎月安定した収入が見込めるでしょう。
また、更地を区画分けするだけで経営をはじめることができるので、初期費用が少額なのもメリットです。
コインパーキングは、駐車スペースを「1時間〇〇円」で貸し出し、利用時間によって駐車料金を得ます。収入は立地や利用状況によって変動しますが、稼働率によっては月極駐車場よりも収入が多くなる可能性もあります。
ただし、コインパーキングは専用機械の設置など初期費用やランニングコストがかかります。初期費用をおさえたい場合は、コインパーキング専門の運営会社に一括借り上げしてもらうことも可能です。
駐車場経営について詳しくはこちら!>>不動産投資で駐車場経営を成功させるポイント!種類や形態を解説
J-REIT
「REIT(リート)」とは、不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)の略称で、その名のとおり、おもに不動産を投資信託の対象とした金融商品です。日本では「JAPAN」の頭文字をつけてJ-REITと呼ばれます。
多くの投資家から集めたお金を資金にし、専門家が不動産物件を購入・運用・管理をおこないます。運用することで得た賃料や売益を投資家に分配します。
J-REIT(リート)の投資対象となる不動産の種類は多岐にわたります。おもな投資対象物件は以下になります。
- オフィスビル
- 一棟マンション
- 商業施設
- 物流施設
- 宿泊施設(ホテルやリゾート施設など)
- 高齢者用施設
J-REITの投資方法は、投資対象のうち1種類だけに投資する「単一型REIT」と、複数の種類の不動産に投資する「複数用途型REIT」があります。なお複数用途型REITは、ふたつの不動産に投資する「複合型」と3つ以上の不動産を組み合わせて投資する「総合型」が選べます。
また、1度に複数のJ-REIT銘柄を購入したい場合は「REIT ETF」がおすすめです。
REIT ETFは、REITとETFを掛け合わせた性質を持つ金融商品です。1つの銘柄で複数のREITに投資することになるため、分散投資につながります。
一口あたりの購入額もREIT ETFのほうが低いため、J-REITよりも少ない資金で気軽にはじめることが可能です。
なおJ-REITは、証券取引所に上場しています。証券口座を持っていれば株式投資と同じように立会時間内に売買することが可能なので、換金しやすい点もメリットです。
デメリットとしては、現物不動産投資とは異なり、J-REITやREIT ETFの購入には融資を受けられない点があげられます。J-REITやREIT ETFを購入する際は、自己資金で支払うことになります。
REITについて詳しくはこちら!>>不動産投資と不動産投資信託「REIT」の違いは?メリット・デメリットも
REIT ETFについて詳しくはこちら!>>現物不動産投資、J-REIT、REIT ETFそれぞれの特徴や仕組みを解説!
不動産投資のビジネスモデル:メリットとデメリット
不動産投資をおこなう際はメリットだけでなく、デメリットに関しても理解しておくことが肝心です。あらかじめデメリットやリスクの内容を把握しておくことで、事前に対策などを立てやすくなり、損失を最小限におさえることにつながります。
不動産投資のメリット
レバレッジ効果が高い
不動産投資におけるレバレッジ効果とは、「少ない自己資金で大きな収益を得る」ことを言います。具体的には、金融機関から融資を受けて自己資金の数倍以上もの収益物件を取得し、運用をおこない利益を得ます。
不動産投資で融資を受ける場合、収益物件価格の1~3割を頭金(自己資金)として入れるのが一般的です。たとえば3,000万円の物件を購入する場合、300~900万円程度の頭金を用意できれば、あとは毎月の家賃でローンや税金などを支払っていくことができます。ローンを完済してしてしまえば3,000万円の物件が資産として手元に残るのです。
また現金一括で300万円の利回り7%の収益物件を購入した場合と、300万円を頭金として2,700万円の融資を受けて3,000万円、利回り7%の物件を購入した場合の収入を比較すると、後者の方が圧倒的に多いことがわかります。
このように少ない投資額で大きな物件を購入して運用できるのは、不動産投資ならではのメリットになります。
レバレッジについて詳しくはこちら!>>不動産投資のレバレッジ効果をやさしく解説!リスクにも要注意
節税効果が期待できる
不動産投資のメリットとして節税効果が挙げられます。
収益物件の購入後1~2年間は諸費用が多く発生するため計上できる経費が増えます。
特に実際に出費がないのに経費計上できる「減価償却費」を上手に使って不動産所得を赤字にし、給与所得などと「損益通算」することで課税所得が減少するため、結果的に所得税・住民税の節税につながります。
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
損益通算について詳しくはこちら!>>不動産投資の損益通算で節税しよう!計算例や注意ポイントを解説
また不動産投資をおこなうことで相続税対策につながります。現金などで相続した場合の相続税評価額は額面通りですが、土地を相続した場合は時価よりも低い評価額が設定されます。
また所有しているアパートやマンションなどを収益用不動産として賃貸している場合、賃貸部分の割合に応じて相続税評価額が控除され、より相続時の節税効果が高くなるのです。
相続税対策について詳しくはこちら!>>不動産投資が相続税対策になる理由を解説!負動産にしないヒントも
管理を外部に委託できる
不動産投資では、物件管理や入居者のクレーム対応などの管理全般を外部の不動産管理会社に委託可能です。そのため本業を持っているオーナー様でも安心して不動産投資をおこなえます。
なお、収益物件の管理を委託する場合、管理委託費用が発生します。おおよその目安は、家賃の5~8%/月になります。
不動産投資のデメリット
空室リスク
不動産投資では、入居者がいない期間は家賃収入が減少するため、できるだけ空室期間を短くする必要があります。
最大の空室対策は、不動産投資をはじめるまえの物件選びの段階でおこないます。
不動産投資の成否は、物件の立地に大きく左右されます。そのため、まず好立地物件を選ぶことが重要です。
一般的に「好立地」と呼ばれるのは、最寄り駅から徒歩10分以内、賃貸ニーズが高いエリア、周辺環境のよい地域などです。
また運用開始後の空室対策は、空室になる要因を把握したうえで、入居者ニーズの高い間取へのリノベーションや家賃の引き下げなど、適切な処置をおこないましょう。
災害リスク
地震大国日本では、全国どこでも地震被害にあう可能性が高いです。また近年は、風水害などの自然災害も増えています。災害によって収益物件が損傷を受けると、家賃収入の減少や最悪の場合は賃貸経営ができなくなるおそれがあるため、かならず火災保険や地震保険に加入しておきましょう。
修繕費リスク
経年によって建物や設備は老朽化し、修繕の必要が出てきます。一般的には築10年を過ぎると、外壁塗装や屋根の葺き替え、水回り設備の修繕・入れ替えをおこなう「大規模修繕」が必要になります。大規模修繕の工事費用は高額なため、「大規模修繕費用」として積立てをおこなっておきましょう。
また突発的な設備故障によって修繕費用が発生する場合もあります。こういった日常の修繕に備えるためにも月々の家賃収入から一定額を積み立てておくと安心です。
まとめ
不動産投資のビジネスモデルとして必要な知識を解説しました。不動産投資を成功させるためには、基本的な仕組みはもちろん、投資物件ごとの特徴などを把握することが重要です。
特に不動産投資には各種リスクがありますが、想定されるリスクを理解したうえで適切な対応をすることで、リスクを最小限にとどめることにつながるのです。