現物不動産投資、J-REIT、REIT ETFそれぞれの特徴や仕組みを解説!
「不動産投資」といえば、アパートやマンションなどの賃貸経営を思い浮かべる人がほとんどかもしれませんが、これら現物不動産投資だけでなく、最近注目されている「J-REIT」や「REIT ETF」も不動産投資の一種です。
しかし現物不動産投資はともかく、J-REITやREIT ETFについては、あまり詳しくないという人も少なくないようです。
そこで今回は、現物不動産投資とJ-REIT、そしてREIT ETF、それぞれの仕組みと特徴、違いなどを解説します。
これから不動産投資をはじめたいと考えている人は、ぜひ当記事を参考に現物不動さん投資だけでなくJ-REITやREIT ETFも視野にいれて検討してください。
現物不動産投資とは?
マンションやアパート、オフィスビルなどの不動産を購入・所有し、第三者に賃貸して家賃収入を得るのが「現物不動産投資」です。一般的に「不動産投資」というと、この現物不動産投資を指します。
現物不動産投資の仕組み
現物不動産投資のおもな収入は「インカムゲイン(家賃収入)」と「キャピタルゲイン(売却益)」の2種類です。
インカムゲインは、オーナーが購入した不動産投資物件を貸し出すことで入居者やテナントが支払う家賃収入がメインの収益です。入居者がいる限りは収入が得られるのが大きな特徴です。
また家賃収入以外にも、毎月の家賃とともに支払われる共益費や契約時や契約更新時に入居者が支払う礼金や更新料、収益物件の敷地内に設置した自動販売機の売上金なども不動産投資で得た収入に含まれます。
キャピタルゲインは、所有する収益物件を売却することで得られる利益を指します。具体的には不動産購入時に掛かった費用より多い金額で売却できた場合の利益を意味します。
不動産物件を売却するとインカムゲインは得られなくなりますが、売却益としてまとまった収入を得ることができるのです。
なお、購入時よりも安く不動産を売却してしまい損失が出た場合は「キャピタルロス(売却損)」といいます。
現物不動産投資の種類
現物不動産投資の対象となる収益物件にはさまざまな種類があります。ここでは代表的な不動産投資の種類をまとめました。
◇区分マンション投資
一棟マンションを1室単位で購入し、第三者に賃貸することで家賃収入を得ます。マンション1室のみを購入するため、少額の資金ではじめられるので不動産投資初心者にもおすすめです。
ただし、1室しか所有していない場合は「空室=家賃収入0円」となってしまうため、ローンの返済などの支払いを自己資金で補填しなくてはなりません。
そのため、入居者が途切れないよう、好立地物件を選んだうえで積極的に空室対策をおこなう必要があります。
◇一棟アパート・マンション投資
アパートやマンションを一棟単位で購入・建築し、第三者に賃貸します。
一棟に複数の部屋があるため、満室になれば大きな収入が得られるのが最大のメリットです。また1室が空室になっても残りの部屋からの家賃収入があるため、収入が0円になることは、ほぼありません。
デメリットとしては、購入・建築のための費用が高額になることです。物件価格にもよりますが、購入者の属性や物件の資産価値・収益性によっては金融機関の融資審査が厳しいケースも多いです。融資を受けるために頭金を多めに入れる必要があるかもしれません。
◇戸建て賃貸投資
一戸建て住宅を購入・建築して賃貸する不動産投資になります。
エリアによっては、中古の戸建て住宅は比較的安価で購入できるため、不動産投資初心者もはじめやすいのがメリットです。
戸建て賃貸のメリットは、供給量が少なく、一度入居すれば長く住んでもらえる可能性が高いことがあげられます。
立地も駅近が好まれるワンルームとは異なり、学校などの近隣であれば駅から多少離れていても入居者が付きやすいため、土地活用方法としても人気です。
その一方で区分マンション同様、入居者がいない場合は家賃収入が0円となります。空室対策として、そのエリアの戸建て賃貸需要を把握してターゲット層を絞ったり、周辺相場に合わせて適切な家賃設定をしたりすることが大切です。
また、退去後のリフォームやクリーニング費用が予想以上に高額になることもあるため注意しましょう。
現物不動産投資の特徴
ここでは現物不動産投資ならではの特徴を紹介します。
他人資本でレバレッジを効かせた投資ができる
不動産投資の最大の特徴でありメリットなのが「他人資本でレバレッジを効かせた投資がおこなえる」点です、
不動産投資におけるレバレッジ効果とは、「少ない資金で高額な資産(収益物件)を取得すること」です。
不動産投資用の収益物件を取得する際は金融機関から融資を受けるのが一般的です。そのため、自己資金の何倍もの資産を所有することが可能となるのです。
たとえば、「自己資金のみで利回り8%、600万円の不動産」を購入し運用した場合、収益物件物件から得られる年間家賃収入は48万円になります。
しかし「自己資金600万円を頭金にして、金融機関から2,400万円を借入れて利回り8%、3,000万円の物件」を購入すれば、年間家賃収入は240万円となります。
このように「レバレッジを効かせた」ことで、自己資金のみで不動産投資をおこなった場合と比べて、融資を受けた場合は年間で5倍もの家賃収入を得ることができるのです。
なお、上記の例では借入金に対する利息の支払いは考慮していませんが、利息を支払ったとしても融資を受けレバレッジをかける価値は十分あると考えられます。
レバレッジについて詳しくはこちら!>>不動産投資のレバレッジ効果をやさしく解説!リスクにも要注意
節税効果が期待できる
不動産投資をおこなうことで、固定資産税や所得税、相続税などの節税効果が期待できます。
不動産投資投資では、収益物件の取得や運用にかかった費用の多くを経費として計上できます。特に実際に出費がないのに経費として計上できる「減価償却費」は、収益を圧縮したり、収支を赤字にして「損益通算」したり、所得税・住民税をおさえるために役立ちます。
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
損益通算について詳しくはこちら!>>不動産投資の損益通算で節税しよう!計算例や注意ポイントを解説
また、相続税に関しても現金や株で相続するのに比べて、土地で相続すると相続税の額を低くおさえることができるのです。
現金などで相続した場合の相続税評価額は額面通りですが、土地を相続した場合は時価よりも低い評価額が設定されているため節税につながります。
さらに所有しているアパートやマンションなどを収益用不動産として第三者に貸し出している場合、賃貸部分の割合に応じて不動産の相続税評価額が控除され、より相続時の節税効果が高くなるのです。
加えて、不動産購入時に金融機関から借入れをおこなっている場合はマイナス資産となります。相続税を計算する際は、この債務を差し引いた額に相続税がかかります。
相続税対策について詳しくはこちら!>>不動産投資が相続税対策になる理由を解説!負動産にしないヒントも
流動性が低い
現物不動産投資用の収益物件は、すぐに現金化することがむずかしい資産です。また、売却だけでなく購入する場合も時間がかかります。
後述するJ-REITやREIT ETFは証券取引所に上場しているので、取引所が開いている時間内であれば、いつでも売却可能です。
しかし、不動産は間に入る取引市場がないため、買い手と売り手を見つけ、金額や取引条件などを交渉し、金融機関の融資審査に通過したのちにようやく取引が成立します。
現物不動産を売却するためには月単位の時間がかかるのが一般的です。
現物不動産投資ならではのリスクがある
現物不動産投資には、以下のような「現物不動産」ならではリスクがあります。ただし、不動産投資のリスクは自分でコントロールできるものが多いのが特徴です。あらかじめリスクと巣の対策方法を把握しておけば、安全な収益物件の運用につながるでしょう。
現物不動産投資のおもなリスクには以下のようなものがあります。
〇空室リスク
現物不動産投資のおもな収入源は、入居者が支払う家賃です。入居者がいない期間は家賃収入が減少するため、できるだけ空室期間を短くすることが安定した不動産投資につながります。
空室リスクをおさえるためには、まず好立地物件を選ぶことです。駅近物件、周辺に競合物件が少ないエリア、周辺環境のよい物件を購入することです。
また空室の原因を把握したうえで、必要に応じて適切な空室対策をおこないましょう。
〇家賃滞納リスク
入居者が家賃を払ってくれないというリスクです。新しい入居者を募集することもできないため、機会損失が生まれます。また滞納された家賃は会計上未収金扱いとなり、実際には入金されていなくても税金の支払い対象になってしまいます。
家賃滞納リスク対策としては、家賃保証会社との契約を入居条件に加えるなど、滞納を未然に防ぐ対策が効果的です。
〇災害リスク
地震や風水害などの自然災害や火事などで収益物件が損傷を受けると、家賃収入の減少や最悪の場合は賃貸経営ができなくなるおそれがあります。
万一を想定し、かならず火災保険や地震保険には加入しておきましょう。
また物件選びの段階で地域のハザードマップなどを確認し、できるだけ災害リスクの低いエリアを選ぶことも重要です。
〇修繕費リスク
長期にわたって不動産投資を継続していると老朽化がすすみ、建物や設備の修繕・交換が必要なケースが増えるため修繕費用が増加します。こういった修繕費用に対応できるよう、あらかじめ修繕費の積立てや補填用に手元資金を準備しておくなどの対策をしておきましょう。
「J-REIT(ジェイリート)」とは?
「REIT(リート)」とは、不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)の略で、日本のREITは、Japanの「J」を頭文字につけて「J-REIT」と呼ばれています。
その名称通り、不動産を対象とした投資信託になります。
J-REITの仕組み
J-REITとは、投資家が不動産を直接保有せずに不動産投資ができる金融商品です。
J-REITは投資家から資金を集め、マンションやオフィスビル、商業施設など賃料収入が見込める不動産を購入し、管理・運用して得た賃料収入や売買益から手数料を差し引いたのちに投資額に応じて投資家に分配する仕組みになります。
なお、J-REITの投資対象物件は、オフィスビルや賃貸住宅(おもに一棟マンション)のほか、商業施設、物流施設、ホテルやリゾートなどの宿泊施設、高齢者用施設など多岐に渡ります。
これら投資対象となる不動産1種類だけに投資する方法を「単一型REIT」、複数の種類の不動産に投資をおこなう方法を「複数用途型REIT」と呼びます。
複数用途型REITは2種類あり、ひとつは「ホテル+商業施設」など、ふたつの不動産に投資する「複合型」、もうひとつは3つ以上の用途を組み合わせて投資する「総合型」になります。
J-REITの特徴
ここではJ-REITのおもな特徴について紹介します。
換金しやすい
J-REITは証券取引所に上場しているため、証券口座を持っていれば株式投資と同じように立会時間内に簡単に売買することが可能です。
現物不動産のように売却まで数ヶ月かかる心配はありません。
少額での不動産投資が可能
現物不動産投資をおこなうには、融資を受けられるといっても、数百万円単位の自己資金が必要なのが一般的です。
しかしJ-REITは1口10万円前後の銘柄も存在するため、比較的少額で投資をおこなえます。
また、現物不動さんでは必須となる管理や修繕などはすべてその分野の専門家がおこなうため、手間も費用もかかりません。
高い分配金利回りが期待できる
J-REITは、利益の90%超を分配することで法人税が免除されます。そのため、J-REITで得た不動産収入の多くが分配金にまわされる傾向が強く、投資家は高い分配金利回りを期待できます。
元本割れのリスクがある
J-REITは、不動産市況や経済情勢、災害、取引のタイミングによっては購入価格を下回って損失が出るリスクがあります。またJ-REITは証券取引所に上場しているため、投資法人が倒産した場合も価格が大幅に下落するおそれがあります。
REIT ETFとは?
「REIT ETF」は、不動産投資信託であるJ-REITに分散投資する形式のETFです。
ETFとはExchange Traded Fundの略で、「東証をはじめとした証券取引所に上場している投資信託」を指します。また「上場投資信託」と呼ばれることもあります。なおETFは、上場株式と同様に取引時間中にリアルタイムに取引がおこなわれ、上場株式と同じ方法で取引が可能です。
REIT ETFの仕組み
REIT ETFはREITとETFの双方を掛け合わせた仕組みになります。
まず投資家は、複数のJ-REIT銘柄を運用対象にしているETFを購入します。複数のREITに投資することで分散効果が期待できます。
なお、J-REITの仕組みは前述したとおりですが、REIT ETFには、J-REITとはまた違った特徴があります。
REIT ETFの特徴
ここではREIT ETFのおもな特徴を紹介します。
分散投資ができる
REIT ETFの最大の特徴は、1つの銘柄で複数のREITに投資することになるため、倒産リスクの分散効果が期待できる点です。
分散投資として、投資家個人で複数の銘柄に投資することもできますが、個別銘柄ごとに売買をおこなわなければならず、手間と時間がかかります。その点、REIT ETFは手軽に分散投資がおこなえます。
J-REITより少ない資金で投資できる
1口10万円前後で銘柄を購入できるJ-REITですが、REIT ETFはさらに少ない資金で銘柄を購入できます。
REIT ETFの銘柄の多くは、1口あたり2万円程度で購入できるため、自己資金が少ない人でも気軽にはじめることができます。(例:東証REIT指数のETFの場合、約20,070円が最低購入価格、2022年11月時点)
なかには10~100口以上でないと購入できないものもあるので注意しましょう。
分配金を年2~6回受け取れる
REIT ETFの分配金は、運用法人への信託報酬を除いた分配金が決算期ごとに購入者に支払われます。REITは半期ごとに利益が分配されますが、銘柄によって決算月が異なります。そのため、複数のREITに投資をするREIT ETFでは、年2~年6回分配されるのが一般的です。
価格変動リスクがある
個別のJ-REITよりも倒産や上場廃止のリスクは低くなりますが、景気動向全体の影響による価格変動を軽減できないリスクがあります。
そのため、大規模な価格変動が起きた場合、売り注文が殺到し買い手が現れず、証券を売りたくても売却できない可能性があるため注意が必要です。
まとめ
現物不動産投資、J-REIT、REIT ETF、それぞれの仕組みと特徴を解説しました。
少ない資金で手軽に不動産投資をはじめるなら、J-REITやREIT ETFはおすすめです。またREIT ETFならば、倒産リスクの分散にも効果が期待できます。
J-REITやREIT ETFに比べて手間がかかり、高額の費用が必要になるのが現物不動産投資です。しかし、金融機関から融資を受け、他人資本でレバレッジを効かせた投資がおこなえるのは現物不動産投資だけです。
資産形成を考えて不動産投資をおこなうのであれば、現物不動産投資をおすすめします。
現物不動産投資、J-REIT、REIT ETFそれぞれの特徴を理解して、自分にあった不動安藤氏を選びましょう。