不動産投資でビルオーナーになる方法!ビルの選び方や注意点を解説
不動産投資の対象となる物件にはさまざまな種類がありますが、アパートやマンションなどの賃貸経営に慣れた人のなかには、住居用賃貸経営よりも高収益が期待できる「ビルオーナー」を目指す人も少なくありません。
ビルオーナーにはだれでもなれますが、成功するためにはテナントに選ばれるオフィスビルの取得が重要です。。
今回は、オフィスビル購入にあたってのメリット・デメリットのほか、取得すべきビルの条件について詳しく解説します。
また、ビルオーナーとして覚えておくべきトラブル回避方法についても紹介します。
ビルオーナーになるには?
店舗や事務所などのテナントが入居するオフィスビルや商業系ビルなどを所有し運用する人のことを一般的に「ビルオーナー」と呼びます。
なおオフィスビル経営は、ビルを一棟丸ごと所有し運用するほか、店舗やオフィスを区分またはフロアで購入し、テナントとして賃貸できる物件もあります。また事業利用が認められている区分マンションもあるので、予算にあわせて検討するとよいでしょう。
ちなみにビルオーナーには、個人でビルを所有するほか、企業が所有するケースもありますが、ここでは個人がビルオーナーになるケースについて解説していきます。
ビルオーナーにはだれでもなれる
ビルオーナーになるには特別な資格などは一切不要です。ビルさえ所有すれば、だれでもなることができます。
しかし資格は不要ですが、不動産投資を成功させるためには、不動産投資に関する知識は欠かせません。
そのため、不動産投資の知識を勉強する「宅地建物取引士(宅建)」や資産運用に関するスペシャリストのファイナンシャルプランナー、会計処理のための簿記など、不動産投資に非常に役立つ資格はたくさんあります。
ただし、「資格を取得している=不動産投資で成功する」わけではありません。資格を取得していなくても、不動産投資の基礎知識を身につけることで不動産投資には十分役立ちます。
不動産投資の書籍を読んだり、不動産セミナーに参加したり、積極的に不動産投資の知識を学ぶことが不動産投資のリスクをおさえて成功へと近づけることが可能になるのです。
必要な資金は?
ビルを相続してビルオーナーになった場合は別ですが、ビルオーナーになるにはまずビルを取得しなくてはなりません。
ビルの取得・建築するためには高額な費用がかかりますが、それら資金は金融機関から融資を受けるのが一般的です。その場合、物件価格の10~30%を頭金として支払います。加えて、購入時の諸費用(手数料や税金)として物件価格の8%程度が必要です。
また、突発的な出費に備えて手元に現金を残しておくことも忘れてはいけません。オフィスビルの運用をはじめてから資金不足に陥らないように、入念な資金計画を立てておくとよいでしょう。
不動産投資でビルオーナーになるメリット
ビルオーナーとなり、オフィスビルをテナントに貸し出すことで以下のようなメリットが得られます。
・住居用賃貸よりも高収益が期待できる
・原状回復の費用や手間がかからない
・相続税対策につながる
それぞれ詳しく解説します。
住居用賃貸よりも高収益が期待できる
物件の立地やエリアにもよりますが、オフィスビル物件は住居用賃貸物件に比べて床面積当たりの賃料単価が高く、高利回りが期待できます。そのため住居用賃貸物件よりも高めの賃料設定ができるのもメリットです。
またオフィスビル物件はテナントの経営が順調であれば入居しつづけてもらえる可能性も高くなるため、長期間安定した収入が期待できます。
原状回復の費用や手間がかからない
店舗やオフィスのテナント物件は入居時にスケルトン状態で引き渡し、内装や設備設置などは入居した事業者が自己負担で工事をおこないます。そして退去時には内装・設備を撤去し、もとのスケルトン状態に戻して返却するのが一般的です。
マンションやアパートなどの住居用賃貸物件のようにオーナーが物件の原状回復をおこなう必要がないため、手間がかからずコスト削減にもつながります。
相続税対策につながる
オフィスビルを賃貸することで相続税の節税効果が期待できます。
たとえば1億円の財産を相続する場合、現金や証券は額面通り1億円に相続税がかかりますが、1億円(公示価格)の不動産物件(オフィスビルやマンションなど)は、「路線価」や「固定資産税評価額」をもとに相続税評価額が算出されます。
その結果、土地の部分は公示価格のおよそ80%、建物部分についてはおよそ70%~80%の評価額になるのです。
相続税は相続税評価額によって税率が決まるため、評価額が低ければ低いほど支払う相続税が少なくなり、結果として節税につながるのです。
不動産投資でビルオーナーになるデメリット
高収益が狙えるオフィスビルの運用ですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
・空室リスクが高い
・賃料が変動しやすい
・借入金リスクがある
それぞれについて解説します。
空室リスクが高い
オフィスビルの運用は景気に左右されやすく、住居用賃貸物件に比べて空室リスクが高い
ことがデメリットです。
住居用賃貸物件の場合、景気が悪くなっても急激に賃貸需要が落ちることは考えにくいです。
しかしオフィスビルの場合、入居しているテナントの業績が景気に左右されるため、テナントが一斉に退去するリスクが高くなります。そのため、オフィスビル物件を選ぶ際は、住居用賃貸物件以上に賃貸需要や立地に注意する必要があります。
賃料が変動しやすい
マンションやアパートなどの住居用賃貸物件の賃料は、経年とともにゆるやかに下落するのが一般的です。
しかし、賃貸需給が景気に左右されやすいオフィスビルなどのテナント物件の賃料は大きく変動する場合があります。
そのため、賃料設定が高い場合は入居がつかず、テナントに入居者がいても賃料が下落したことで当初の収支シミュレーション通りの利益が出なくなる可能性も十分に考えられます。
借入金リスクがある
オフィスビルを含めた投資用不動産を購入する際は、金融機関から融資を受けるのが一般的です。そのため、空室が増えて収入が減ってしまうと借入金返済リスクが高まります。
借入金リスクをおさえるには、不動産購入時に自己資金(頭金)多めに入れて借入額を減らしたり、借り換えをおこなったりといった対策をおこないましょう。
テナントに選ばれるオフィスビルを購入するためのチェックポイント
前述のようにオフィスビルの運用にはデメリットがありますが、賃貸需要を維持できるビル物件を選ぶことでリスクを最小限におさえることにつながります。
ここではテナントに選ばれやすいビルの条件について紹介します。購入するオフィスビルを選ぶ際にかならずチェックしましょう。
立地と周辺環境
住居用賃貸物件の入居率が立地や周辺環境に左右されるように、オフィスビルも例外ではありません。むしろアパートやマンションの賃貸物件以上に駅近でかつ、近隣に銀行や郵便局、公共機関、コンビニや飲食店などの有無が重要視されます。
また会社の場合、わかりやすい場所かどうか、人や車の出入りに不自由はないかなど、入居するテナントにとって使い勝手のよいビル物件を選びましょう。
耐震性能
地震大国である日本ではビルの耐震性能もチェックすべきポイントのひとつです。
2011年の東日本大震災以降、自然災害への不安から企業が借りるオフィスビルの耐震性への意識が大きく変わりました。
『国土交通白書 2020』にて「南海トラフ地震について、マグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率が70~80%(2020年1月24日時点)」と発表されたこともあり、より安心な建物への移転を考えている企業は近年さらに増加傾向にあります。
すでにオフィスビルを借りる企業にとって、ビルの耐震性はあって当たり前であり、逆に耐震性の低いビルはテナントの誘致はむずかしいと考えられます。
これから自分でオフィスビルを建築する場合は問題ありませんが、中古ビル物件を購入する場合は「新耐震基準」のビルを選ぶとよいでしょう。
新耐震基準とは、震度5強程度の地震ではほとんど損傷せず、震度6強~7程度でも倒壊・崩壊しない構造基準であると定められています。
新耐震基準の建物は、1981年6月以降に「建築確認申請」の提出を受けた物件であり、それ以前に建築確認申請の提出を受けたものは「旧耐震基準」となります。物件の着工日や竣工日ではないので注意しましょう。
また最近では「耐震構造」「制震構造」「免震構造」などの耐震構造のビルも増えています。中古ビルを選ぶ際は、新耐震基準に加えて建物の耐震構造にも留意するとよいでしょう。
ビルの外観・エントランス
テナントに選ばれやすいビルは外観やエントランスも重要なポイントのひとつです。テナントとなる企業の「顔」にあたる部分なので、手入れが不十分で汚れや劣化が目立つビルはテナントに敬遠されてしまいます。
中古物件のビルを購入する場合でも、しっかりメンテナンスがされていて清潔感のある物件を選ぶとよいでしょう。
無柱空間・天井の高さ
無柱空間とは、テナントの専有部分で柱のない空間のことを指します。専有部分の中央に柱があると店やオフィスのレイアウトの邪魔になってしまうため、テナントには人気がありません。ビルを選ぶ際は柱のない空間が多いビルを選びましょう。
また天井の高さもテナントの快適性に影響します。天井が低すぎると圧迫感があるため、できれば天井高が十分な物件を選びましょう。
個別空調
オフィスで快適な環境を決める重要な要素となるのが空調設備です。
ビルの空調設備はおもに、テナントが温度などを自由に設定できる「個別空調」とビルの管理室などが一括管理する「セントラル空調」の2種類があります。
セントラル空調は使用できる時間帯が決められている場合も多く、土日の休日出勤や残業が多い会社には敬遠されがちです。
人気があるのは圧倒的に個別空調です。比較的新しいビルでは個別空調が導入されている場合が多いですが、ビルを選ぶ際は空調がどちらのタイプなのか忘れずに確認しましょう。
床荷重
床荷重も入居するテナントの業種によっては重要なポイントです。
一般的なオフィスビルの床荷重は300kg~500kg/㎡ですが、専有部分の一部に床荷重500 kg~1,000kg/㎡の「ヘビーデューティーゾーン」が設けられたビルもあります。
ヘビーデューティーゾーンがあると、可動式書庫やサーバールームが設置できます。また高重量の医療器具が必要な診療所・歯科医などもテナントの候補になります。
できるだけ多業種のテナントを入居対象にしたい場合は、ヘビーデューティーゾーンのあるビルを選びましょう。
電気容量やインターネット回線
電気容量や電話回線数が十分であるか確認しましょう。業種によっては365日、24時間フルに電気供給が必要なケースもあるため、突然の停電に備えて無停電電源装置や自家発電設備が設置されたビルは、IT関連企業に選ばれやすくなります。
またビル内で使用できるインターネット回線の種類についても確認しておきましょう。
共用部
エレベーターやトイレ、給湯室、喫煙所の有無などもテナントがチェックする部分です。
各箇所の清掃や手入れが行き届いているかはもちろん、トイレであればウォシュレットの有無や清潔感があるかは大事なポイントです。
給湯室についても、清潔感と使い勝手のよさが求められます。
また最近は室内禁煙の企業が増えています。そのため、ビルの共用部に喫煙所などを設けることをおすすめします。
共用部に喫煙所がない場合、テナントが専有部内に喫煙ブースを設けることになります。喫煙ブースの設置には、単にパーテーションを組むだけでなく空調工事もおこなうため高額な費用が必要です。加えて喫煙ブースの分だけ専有部の使用できる面積も減ってしまいます。
とくに専有面積が小さな小規模ビルは、共用部に喫煙所をつくることでテナントの誘致に役立つでしょう。
ビルオーナーとして覚えておくべきトラブル回避方法
オフィスビル経営には、アパートやマンションなどの住居用賃貸経営とは異なるトラブルがいくつかあります。ここでは、ビルオーナーとしてあらかじめ覚えておきたいトラブル回避方法を解説します。
共用部の工事の許容範囲を決めておく
オフィスビルでは、共用部の工事についてテナントとトラブルになるケースがあります。
よくあるケースとしては、エントランスなどの共用部に看板設置の要望があります。専有部の内装工事はテナントが自由におこなえますが、共用部の工事はビルオーナーの許可が必要です。
このとき注意したいのが、1社に許可するとほかのテナントにも看板設置を許可せねばならず、テナントが各自で好きな大きさや形状の看板を設置してしまう可能性があることです。
こういった事態を防ぐためにも、あらかじめどの程度の工事であれば許容できるのか決めておくとよいでしょう。
他社の同居や転貸を禁止しておく
オフィスビルの場合、A社に貸していたテナントに関連会社B社が同居(共同使用)していたり転貸していたりというトラブルがあります。
この場合、もともとのテナントであるA社を立ち退かせようとすると同時にB社も立ち退いてもらう必要があるため、立ち退き料がA社B社それぞれに発生してしまうおそれがあります。
こういった事態を防ぐためには、オフィスビルの賃貸借契約書に転貸や同居を禁止する条項をかならず設けておくことが重要です。
テナントの入居審査はビルオーナーがおこなう
オフィスビル経営は住居用賃貸経営に比べて景気の影響を受けやすく、家賃滞納や夜逃げのリスクが高いです。そのため、テナントの入居審査は、ビルオーナー自身でしっかりおこなう必要があります。
とくに飲食店は内装や設備などに初期費用がかかるわりに、廃業率も高い傾向にあります。
あらかじめテナント企業の業績を調査したうえで、保証金を多めに徴収するなど、リスクに備えることが大事なポイントです。
また入居テナント同士のトラブルを防ぐためにも、優良テナントを見きわめる必要があります。入居候補のテナントの移転理由や前の入居先の入居期間などを調査し、極端に入居期間が短い場合や問題点があった場合は入居不可にするとよいでしょう。
多くのビルオーナーは、ビルの管理を管理会社に委託していますが、管理会社に任せきりではなくオーナー自身の目で確かめるためにも入居審査をしっかりとおこなうことをおすすめします。
ビルオーナーとして成功するには管理会社の協力が必須
ビルオーナーとしてオフィスビル経営を成功させるためには、管理会社の協力が必要不可欠です。これは住居用賃貸経営の管理会社選びにも同じことがいえますが、信頼できるパートナーとして管理会社を選ぶことで、安心してオフィスビル経営がおこなえます。
管理会社を選ぶ際には、以下のポイントを重視しましょう。
・ビル経営に特化した会社であること
住居用賃貸物件とオフィスビルの管理内容は異なる部分が多いです。実績豊富な管理会社であっても、専門がアパートやマンション管理であることも少なくありません。かならずビル管理が専門の管理会社を選びましょう。
・実績が豊富であること
管理会社の実績を知るには、これまで管理してきたビルの棟数や戸数を確認しましょう。管理したビルが多ければ、それだけ実績が豊富でノウハウを持った会社であると考えられます。
また、委託したいビルと同程度の規模のビルの管理実績についても忘れずにチェックしましょう。
・委託料が妥当な額であること
管理会社を選ぶ際は、管理委託料についても注目しましょう。管理委託料の相場は賃料の5%~10%と開きがあります。また業務内容についても管理会社によって異なるため、委託料に対して業務内容が妥当であるか、しっかり確認する必要があります。
委託料と業務内容を比較するためには、複数の管理会社から見積もりをとり、比較検討してみましょう。委託料金が同じでも含まれる業務内容が少なかったり、委託料が安くても多くの業務が別料金だったりする場合も多いため、しっかり比較したうえで判断するとよいでしょう。
まとめ
マンションやアパートなどの住居用賃貸物件に比べて、高収益が期待できるオフィスビル経営ですが、空室リスクの高さや賃料の変動など注意すべき点もあります。
ビルオーナーとして成功するためには立地や周辺環境はもちろん、ビルの外観や設備など、テナントに選ばれるビルを取得する必要があります。
不動産投資を成功させるためには、ビル選びに加えて信頼できる管理会社選びも欠かせません。ビルオーナーと管理会社が協力することで、よりオフィスビル経営を成功へと近づけることが可能になるでしょう。