インフレ対策に不動産投資が向いている理由を解説!現物投資は有利?
不動産投資はインフレに強い投資方法といわれていますが、それはなぜなのでしょうか。
また不動産投資以外で、インフレ対策ができる投資にはどのような種類があるのでしょうか。
今回はインフレと不動産投資の関係について、なぜ不動産投資がインフレ対策になるのか解説します。
また、不動産投資以外でインフレ対策につながる投資方法を紹介するので、これからのインフレ対策にぜひ役立ててください。
インフレ(インフレーション)とは
インフレとは「インフレーション(Inflation)」の略語で、一般的に物の値段が上昇し、お金の価値が下がることを指します。
なお、インフレの逆の状態をデフレ(デフレーションDeflation)といい、こちらは物の値段が下がって、お金の価値が上がる状態のことをいいます。
インフレが起こる原因は
インフレになる原因には、以下のふたつのパターンがあります。
・景気がよくなることで消費が活発になり、物がよく売れることで供給不足から物価が上昇する
・世の中に出回っているお金の流通量が多くなることでお金の価値が下がる
このどちらか、もしくは両方が同時に進行することによってインフレ状態になるといわれています。
インフレでも価値が落ちにくいものは
インフレ=お金の価値が下落するため、預貯金や現金はその価値が目減りしてしまうため、現金や預貯金を多く持っていればいるほど不利な状態になります。
大事な資産を守るためには、インフレに強く価値が落ちにくい、または有利な状況になる資産を保有する必要があります。
インフレに強い「物」の代表として、以下のふたつがあげられます。
借入金
金融機関などからの借入れたお金=借金は、インフレによってお金の価値が低くなるため、借りているお金の価値も低くなります。
たとえば1,000万円を借入れた場合、借金した1,000万円を返済しないといけません。
しかし、インフレ状態となって物価が2倍になると、お金の相対的価値は半分になります。
すると額面は1,000万円の借金でも実質的には500万円分の借金となるのです。
ただし、インフレ時には金利が上昇する傾向があるため、変動金利でお金を借りている場合は、「金利上昇リスク」によって実質的な返済負担が増える可能性があるため注意が必要です。
現金や有価証券以外の現物資産
先述のように、インフレになるとお金の価値が下がりますが、近年では現金だけでなく、有価証券などもインフレに連動して価値が下がるといわれています。
一方、不動産や貴金属などの現物資産は、物価上昇とともに価値が高くなるため、インフレ時には有利にはたらきます。
また、お金や国債などの価値は発行する国の信用によって変動しますが、現物資産はそのもの自体に価値があるため、価値が下がりにくいのです。
このような理由から現金を多く保有するよりも、不動産や金(ゴールド)や銀の貴金属、骨董品などのアンティーク商品を保有することでインフレ対策につながります。
インフレ対策に不動産投資が向いている理由を解説
不動産という「現物資産」に投資する不動産投資は、インフレに強い投資方法といわれています。
ここでは不動産投資がインフレ対策につながる理由について詳しく解説します。
資産価値が下がりにくい
現物資産である不動産は、現金や有価証券に比べて、インフレ時であっても資産価値が下がりにくいといわれています。
とはいえ、現物資産だから資産価値が一切下がらないわけではありません。
不動産投資は長期にわたっておこなう投資であるため、経年劣化によって投資物件の資産価値は徐々に下がっていきます。
しかし、経年劣化は1・2年で起こるわけではなく何十年単位でゆっくりと進行するため
、インフレ発生時に急激に資産価値が落ちることは考えづらいです。
以上のことから、現物資産である不動産投資はインフレ対策に向く投資方法であると考えられます。
借入金額が減少する(固定金利の場合)
インフレ時に持っていると有利なもののひとつが「借入金」です。
不動産投資をおこなうためには高額の不動産を購入する必要がありますが、その際ほとんどの人が金融機関から購入資金を借入れて不動産を購入します。
インフレ時には通貨価値が下落するため、不動産投資ローンで借りたお金も実質目減りするのです。
実質的には借りたお金より低い価値のお金を返済することになるため、返済側にとっては有利な状況となります。
さらに、物価が上昇することで家賃額も上昇する可能性があります。
家賃額が上がれば収入の増加につながるため、ローン返済がしやすくなります。
なお、不動産投資ローンの金利は「固定金利」と「変動金利」の2種類がありますが、インフレ時に有利なのは固定金利になります。
インフレで物価が上昇すると、金利も上昇する傾向にあります。
そのため、変動金利で借入している場合は、たとえ借入金残高が目減りしたとしても金利の上昇によって返済の負担自体は軽くなるどころか、かえって返済額が増えてしまう可能性があるのです。
インフレに応じて家賃も徐々に上昇する
インフレが起こり、物価が上昇することで家賃も徐々に上昇する傾向にあります。
そのため、インフレがすすめば、家賃額を上げることも可能です。
不動産投資のおもな収入源は家賃なため、家賃が上がれば収入が増え、加えてローン返済金が目減りしているので大きな増収につながります。
そもそも不動産投資は、経年によって空室リスクが高まるため、家賃は下落するのが一般的です。
しかし、インフレ時は築年数が経過しても家賃が下がりにくいだけでなく、むしろ上昇する可能性もあります。
ただし、インフレ時には管理費などランニングコストの上昇も予測できます。
とはいえ不動産投資の場合、コストの上昇以上に家賃収入の増収が見込めるため、インフレ対策に向く投資といわれるのです。
デフレ時・スタグフレーション時の不動産投資への影響
デフレとは、物価が下がり貨幣の価値が上がることをいいます。
スタグフレーションとは、景気が後退するなかでインフレが進む状態を指します。
ここでは、デフレとスタグフレーションについて解説しながら、それぞれが不動産投資へ与える影響についてまとめました。
デフレ(デフレーション)とは
インフレの逆の状態をデフレ(デフレーション)といいます。
デフレは、物価が継続的に下落する状態を指し、通貨価値が上がります。
デフレになると物が売れず物価が下がり、賃金の下落や失業者が増加することで購買意欲が減少してしまうため、さらに物が売れなくなるという悪循環「デフレスパイラル」を招きます。
ようするにデフレ時=不景気という認識が一般的です。
デフレ時は物価が下がるため不動産の資産価値も落ちますが、所有している不動産の価格が下がったとしても、賃料自体は大きく下がらないとの見方が強いです。、
日本では2008年に世界金融危機の影響でデフレに傾きましたが、当時の家賃額は大きく下落しませんでした。(参考:総務省『平成 30 年住宅・土地統計調査』)
そのため、デフレが数年程度つづいたとしても大きな問題は起きないと考えられています。
よって不動産投資はデフレにも強いといえるでしょう。
スタグフレーションとは
スタグフレーションは、「Stagnation(景気停滞)」と「Inflation(物価上昇)」を組み合わせた造語で、景気が後退するなかでインフレが進む状態を指します。
本来は好景気時に起こりやすいインフレですが、不景気にもかかわらずインフレがすすむスタグフレーションは「悪いインフレ」とも呼ばれています。
ではスタグフレーションは不動産投資にどのような影響を与えるのでしょうか。
一般的にスタグフレーションが起こると、物価が上がり、物が売れにくくなりますが、短期間で家賃が急激に下がる可能性はほとんどありません。
そのため、不動産の資産価値についても急速に下がるということは起こりにくいと考えられています。
不動産投資以外でインフレ対策に向く投資方法
インフレ状態になると貨幣価値が下落するため、預貯金や現金資産を多く保有している人には不利になります。
その場合は資産を守るためにも、インフレに強いなんらかの投資をはじめることをおすすめします。
ここではインフレに強い投資商品を紹介します。
金(ゴールド)投資
インフレ対策として投資をおこなうのであれば、不動産投資のような「現物資産の投資」が適しています。
また株式や債券などは、発行元の弱体化や破綻で損失が出たり無価値になったりする可能性がありますが、現物資産は無価値にならないため安心です。
そんな現物資産のなかでも信用度が高く、世界中どこでも換金できる「金(ゴールド)」は、インフレ時にかぎらず、古くから投資の対象として扱われています。
預貯金や現金資産の一部をインフレに影響されにくい金に換えて保有することで、有効なインフレ対策となるでしょう。
なお、「金」の投資方法は、金貨やゴールドバーを購入するほか、投資信託で積み立て投資もおこなえます。
外貨預金
日本でインフレが起こると相対的に日本円の価値が下がり「円安」になります。
預貯金が日本円のみの場合、インフレの影響で価値が大きく目減りしますが、「外貨建て」の資産を保有することでインフレ対策につながります。
ただし、外貨預金は為替相場の変動に影響を受けるため、利益が出る可能性がある反面、大きな損失になる場合もあります。
リスク対策として、円建て資産と外貨資産をバランスよく保有するようにしましょう。
J-REIT(不動産投資信託)
「インフレ対策として不動産投資をしたいが資金が足らない」
「現物不動産を運用できる自信がない」
そんな人におすすめなのが、REIT(リート)です。
REITとは「Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)」の頭文字を取った言葉で、その名のとおり不動産に投資する信託商品です。
なお、海外のREIT と区別するために日本ではJapanの頭文字をつけて「J-REIT」と呼ばれています。
J-REITの仕組みは、複数の投資家から資金を集め、オフィスビルや賃貸住宅などの不動産に投資し、得られた賃料を分配金として投資家に支払います。
J-REITのメリットは、一口数万円と少額から投資でき、自己資金が少ない人や不動産投資初心者でも手軽にはじめることが可能な点です。
また、取引所に上場されているため、上場株式と同様に証券会社の窓口やインターネット取引を通じて簡単に売買できます。
現物不動産を売却するには最短でも1~2ヶ月はかかるため、流動性の高さはJ-REITの大きなメリットになります。
なお、J-REITは不動産投資ローンなどの利用ができないため、購入費用は自己資金で支払う必要があります。
そのためレバレッジを効かせた投資はできません。
REITについて詳しくはこちら!>>少額で不動産投資ができるREIT(リート)のメリット・デメリットを解説!
不動産投資のレバレッジ効果について詳しくはこちら!>>不動産投資のレバレッジ効果をやさしく解説!リスクにも要注意
不動産投資で注意したいリスク
インフレやデフレに強い不動産投資ですが、「投資」である以上リスクはあります。
しかし不動産投資のデメリットやリスクは、適切な対策をおこなうことでリスクを最小限におさえることが可能です。
ここでは注意するべき不動産投資のリスクと対策方法について解説します。
空室リスク
不動産投資のおもな収入は入居者が支払う家賃収入であるため、入居者がいなければ収入を得ることはできません。
そのため、つねに空室対策をおこない満室経営を目指す必要があります。
最大の空室対策方法は、賃貸需要が高く好立地物件を選ぶことです。
立地がよければ、その後の不動産投資が非常に容易になります。
あとは、こまめにメンテナンスをおこない資産価値を維持し、空室対策としてリフォームや最新設備の追加などを必要に応じておこないましょう。
どんなに魅力的な物件であっても空室リスクはつねにあることを意識しておき、状況にあわせた空室対策をおこなうことが重要です。
家賃滞納リスク
家賃滞納リスクは、家賃収入が入らないだけでなく、次の入居者募集もできないなどデメリットしかありません。
家賃滞納者を強制退去させようにも、すぐに退去させることはできませんし、訴訟費用や手続きなどが必要になるため、大家さんの負担は大きくなるばかりです。
そのため、家賃滞納が起きてから対策をおこなうよりも、滞納させないための対策が必要です。
方法としては、入居審査基準の厳格化や、家賃保証会社への加入を必須にするなどが考えられます。
家賃滞納リスクについて詳しくはこちら!>>家賃滞納者を強制退去させるための流れや費用、未然に防ぐ方法を解説
修繕リスク
不動産投資は長期にわたっておこなう投資です。
そのため経年によって建物は老朽化し、それにともない修繕箇所が増えていきます。
老朽化した建物をそのままにしておくと次の入居者を見つけにくく、空室リスクが高くなってしまいます。
物件の資産価値を保つためには、外壁塗装や屋根の葺き替えなど、大規模修繕を10~15年周期でおこなう必要があります。
しかし、大規模修繕費用は高額なため、必要になってから用意するのはむずかしいです。
そのため、あらかじめ長期的な計画を立てたうえで、修繕費用を積み立てておくとよいでしょう。
災害リスク
日本では国内のどこにいても地震被害にあう可能性がありますし、近年では台風などの風水害の被害も多数報告されています。
こういった自然災害や火災が原因で不動産投資の継続がむずかしくなることを想定したうえで、火災保険や地震保険にはかならず加入しておきましょう。
また、物件を選ぶ段階でハザードマップを確認し、水害が少ないエリアや地盤がしっかりしている地域に物件を建築するのもリスク対策につながります。
保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
まとめ
物の価格が上昇し、お金の価値が下がるインフレ時には、現金や預貯金の価値は目減りしますが、現物資産を保有する不動産投資は、インフレ時であっても資産価値が下がりにくいため、インフレ対策に向いている考えられます。
また不動産投資は、デフレやスタグフレーションの影響も受けにくいといわれています。
しかし、インフレに強くても不動産投資はまったくのノーリスクではありません。
不動産投資を継続するうえで、空室リスクや家賃滞納リスクなど、不動産投資特有のリスク対策をおこなう必要があります。
可能なかぎりのリスク対策をおこない、健全な不動産投資を目指しましょう。