サラリーマンが不動産投資で節税できる税金の種類や仕組みを解説!
節税する手段が少ないサラリーマンにとって不動産投資は、節税につながる大切な手段のひとつです。
不動産投資をおこなうことで、サラリーマンでも所得税や住民税を節税することが可能になります。
今回はサラリーマンが不動産投資で節税できる税金について、その仕組みを解説します。
節税方法を知って、できるだけ納める税金をおさえるための参考にしてください。
不動産投資の節税の基本!収入と必要経費の種類について
サラリーマンが不動産投資で得た家賃収入などを「総収入額(不動産収入とも)」と言います。
そして、不動産投資で物件を運用する際に発生した費用のうち計上できる費用を「必要経費(単に経費とも)」と呼びます。
総収入額から必要経費を差し引いた金額が「不動産所得」として所得税の計算対象となります。
・不動産所得 = 総収入額 - 必要経費
ここでは不動産投資で得られる収入と必要経費にできる費用項目を紹介します。
不動産投資の収入の種類
不動産投資のメインとなる収入は家賃ですが、家賃以外にもいくつか収入となる項目があります。
ここでは不動産投資で得られる代表的な収入の種類を紹介します。
・家賃:不動産投資のおもな収入源
・共益費(管理費):徴収しない場合もある
・礼金:賃貸借契約締結時に入居者から支払われる謝礼金。相場は賃料の1~2ヶ月分
・更新料:賃貸借契約更新時に入居者から支払われる。相場は賃料の1~2ヶ月分
・その他の収入:物件の敷地内にある駐車場の賃料や自動販売機の売上金、太陽光発電の売電料など
不動産投資で必要経費にできる費用の種類
不動産投資では、運用時にかかった費用を「必要経費」として計上することが可能です。
経費計上できる金額が多ければ多いほど収益が圧縮されるので課税対象額が減少し、結果として所得税が減るため節税につながります。
そのためにも申告する必要経費の漏れがないよう、しっかり確認しましょう。
不動産投資で必要経費にできるおもな費用は以下になります。
・損害保険料:火災保険や地震保険など
・修繕費:設備の修理や原状回復にかかった費用など
・管理委託費:物件の管理を外部に委託している場合
・広告宣伝費:入居者募集などにかかる費用
・交通費:不動産投資に関する打ち合わせや物件の下見など移動にかかった費用
・通信費:不動産投資に関する電話やインターネット代など
・新聞図書費:不動産投資に関する情報収集や勉強に使用した新聞や書籍の購入代金
・接待交際費:不動産投資に関する打ち合わせで支払った飲食代など
・消耗品費:文具などの購入費用
・専門家への報酬:税理士や司法書士、弁護士に支払う報酬費用
・税金:固定資産税や都市計画税、登録免許税など
・借入金の支払利息:不動産取得時に組んだローンの利息(元本は除く)
・減価償却費
なお、ローン借入金の元本、所得税・住民税は経費として計上できません。
また不動産投資に関係のない費用(プライベートな移動にかかった交通費など)も必要経費にはできないので注意しましょう。
不動産投資の経費について詳しくはこちら!>>不動産投資で経費はどこまで認められる?正しく計上して節税を!
サラリーマンが不動産投資で節税する方法!【所得税・住民税】
勤務先から給与をもらっているサラリーマンにとって、不動産投資は節税につながる大切な手段のひとつです。
基本的に会社から支払われる給与から個人の経費として控除できるものはありません。
業務で発生する費用(交通費や消耗品費など)は会社側が経費として精算します。
ここでは、そんなサラリーマンが不動産投資で所得税・住民税の節税をする方法について解説します。
節税シミュレーションはこちら!>>不動産投資の節税効果をシミュレーションで紹介!仕組みや方法を解説
減価償却費で赤字をつくって節税する
会計上の赤字をつくれる「減価償却費」を使うことで所得税(住民税)の節税効果を得られます。
マンションやアパートなどの建物や付帯設備といった資産は、時間の経過ととも老朽化や性能の劣化によって価値が下がり、やがて資産価値がなくなります。
このような資産を「減価償却資産」と言います。
なお、土地は経年によって劣化しないため減価償却資産には含まれません。
減価償却資産は、税法上で定められた「耐用年数」に応じて毎年一定額を「減価償却費」として経費計上が可能です。
減価償却費は、経費として計上できるにも関わらず、実質的な出費をともないません。
減価償却費を経費計上することで帳簿上の支出が増加するため、不動産所得が減り、結果的に節税につながるのです。
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
減価償却と減価償却期間について
建物や設備の減価償却期間を決めるのが「法定耐用年数(単に耐用年数とも)」です。
法定耐用年数は、建物や設備など資産の「法的な資産価値の寿命」として定められた期間を言います。
たとえば建物の場合、構造体によって以下のように法定耐用年数が定められています。
【建物の法定耐用年数】
・軽量鉄骨造:19年
・木造:22年
・鉄骨造:34年
・鉄筋コンクリート造:47年
なお、法定耐用年数はあくまで「法的に定められた資産価値の寿命」であり、期間を過ぎても実際に使えなくなるわけではありません。
中古物件の法定耐用年数の計算方法
築年数が法定耐用年数を超えている、または一部を経過している中古物件の耐用年数は、それぞれ以下の計算式で算出します。
【築年数が法定耐用年数を超える建物の計算式】
・法定耐用年数 × 20%
例)築28年の木造アパートを取得した場合の耐用年数
木造の法定耐用年数22年 × 20% = 4年
この場合の耐用年数は4年になります。
【築年数が法定耐用年数の一部を経過している建物の計算式】
(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%
例)築25年のRC造マンションを取得した場合の耐用年数
(法定耐用年数47年 - 築年数25年)+(築年数25年 × 20%)= 27年
この場合の耐用年数は27年になります。
デッドクロスには要注意!
不動産投資でいう「デッドクロス」とは、会計上は黒字でありながらキャッシュフローが不足し、黒字倒産を起こしかねない状況のことをいいます。
デッドクロスの原因のひとつが、「不動産投資ローンの元本返済額が減価償却費を上回る」ことです。
不動産物件(建物や設備など)は、経年とともに減価償却費が減っていきます。
すると、いままで計上できていた費用が経費として計上できなくなり、黒字部分が増加=課税所得が増えるため、税金負担が増加してしまいます。
その結果、キャッシュフローが悪化し、結果的にデッドクロスに陥りやすくなるのです。
特に節税目的で築古の物件(特に木造)を購入する場合、新築に比べて減価償却期間が短いためデッドクロスはほぼ避けられません。
対策方法として、デットクロス発生前に物件を売却する「出口戦略」をあらかじめ検討しておくことも節税を意識した不動産投資には不可欠です。
デッドクロスについて詳しくはこちら!>>不動産投資でデッドクロスが起こる3つ原因と9つの対処方法を解説
減価償却費と損益通算を組み合わせて節税する
「損益通算」とは、不動産所得が赤字だった場合、サラリーマンの給与所得から不動産所得の赤字を控除する会計処理で、確定申告でおこないます。
給与所得が不動産所得の赤字により減額されるため、払い過ぎた所得税が還付されます。
また給与所得が減るため住民税の節税にもつながります。
この損益通算と前述の減価償却費とを組み合わせることで、さらに所得税の節税につながります。
減価償却費を必要経費として計上し、会計上の赤字をつくり、その赤字を損益通算して給与所得から控除することで所得を圧縮でき、より大きな節税効果が得られるのです。
なお、損益通算する際には、土地の取得時の借入金利息は除外する必要があるので計算する際は注意しましょう。
損益通算について詳しくはこちら!>>不動産投資の損益通算で節税しよう!計算例や注意ポイントを解説
確定申告で節税する
不動産投資をおこない、不動産所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要です。
なお、不動産所得が20万円以下の場合は確定申告をする必要はありません。
ただし、前述の損益通算をおこなう場合は忘れずに確定申告をおこないましょう。
確定申告について詳しくはこちら!>>家賃収入の確定申告はするべき!やり方や経費にできるものを解説
青色申告のメリット
確定申告では、白色申告か青色申告のどちらかを選んで申告をおこなえますが、青色申告と白色申告では税制上の優遇措置に違いがあります。
白色申告は基本的に税制上の優遇措置がないため、より節税したい場合は青色申告がおすすめです。
青色申告には、「青色申告特別控除」として10万円もしくは事業的規模(5棟10室)の場合は55万円を控除(e-Taxにより電子申告する、または電子帳簿保存をおこなうと控除に10万円上乗せされる)することができます。
ただし、65万円の特別控除を受けるためには「複式簿記」で記帳する必要があります。
手書きするのがむずかしい場合は、会計ソフトを使うと自動で仕分けされるため簡単です。
そのほかにも青色申告には以下のようなメリットがあります。
・赤字の場合、3年間の繰越ができる
・減価償却資産(30万円未満)の一括経費計上が可能
・家族への給与を「青色事業専従者給与」として全額必要経費にできる(青色事業専従者給与に関する届出の提出が必要)
・自宅をオフィスにすると家賃や光熱費の一部が経費にできる
青色申告をおこなうには?
メリットの多い青色申告ですが、青色申告するためには、あらかじめ必要書類を期限内に税務署に提出する必要があります。
提出書類は以下の通りです。
・個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
開業後1ヶ月以内に住所地または納税地を管轄する税務署に提出します。
提出しなくても特に罰則はありませんが、確定申告時に青色申告を選ぶ場合、開業届の提出は必須です。
・青色申告承認申請書
青色申告を選ぶ際、住所地または納税地を管轄する税務署に提出します。
提出期限は、1月1日から1月15日までに開業したときは、その年の3月15日まで、1月16日以降に開業した場合は開業日から2ヶ月以内に提出しましょう。
すでに開業していて白色申告から青色申告に変更したい場合は、青色申告をする年度の3月15日までに提出する必要があります。
法人化することでさらなる節税も可能
課税所得が900万円以上になると、個人の所得税率よりも法人税率のほうが低くなり、節税につながる可能性があります。
累進課税制の所得税は、課税所得が増えればふえるほど税率が上がる仕組みです。
課税所得が900万円以上になると所得税率は33%になり、住民税10%を合わせると43%になります。
一方、法人税の最大税率は23.2%です。(実際は地方法人税、法人住民税、事業税、地方法人特別税など、法人の所得に関するさまざまな税金が加わるので、実効税率はこれよりも高くなります)
収入が高くなった場合は、法人化して法人税を納税することで節税となるため、課税所得額によっては法人化を検討してもよいでしょう。
ただし、法人化した場合、勤務先によって不動産投資が「副業」とみなされる可能性があるため、副業禁止の会社に勤めているサラリーマンは注意が必要です。
詳しくは後述の『サラリーマンの不動産投資は副業にならない?』をご覧ください。
サラリーマンが不動産投資で節税する方法!【相続税】
不動産物件を相続する場合、相続税額を決定する「相続税評価額」が低くなります。
その結果、ほかの財産(現金、株式や債券など)を相続する場合に比べて相続税を減らすことができるのです。
たとえば1億円の財産を相続する場合、現金や株式は額面通り1億円に相続税がかかります。
しかし、1億円(公示価格)で購入した不動産物件は、「路線価」や「固定資産税評価額」をもとに相続税評価額が算出されます。
土地の部分は公示価格のおよそ80%、建物部分についてはおよそ70%~80%(自治体によって異なる)の評価額になるのです。
これによって、1億円の不動産の相続税評価額は土地のみでも8,000万円程度まで下がります。
また相続する不動産に賃貸用の建物がある場合、「貸家建付地」や「小規模宅地」など、特例の要件をすべて満たせば、額面の6割程度まで評価額が下がる可能性もありうるのです。
相続税は、相続税評価額によって税率が決まります。
そのため、評価額が低ければひくいほど支払わねばならない相続税が少なくなり、結果として節税につながるのです。
相続税対策についてはこちら!>>不動産投資が相続税対策になる理由を解説!負動産にしないヒントも
サラリーマンの不動産投資は副業にならない?
働き方改革によって、サラリーマンの副業が推進されるようになりましたが、まだまだ副業禁止の会社も多いようです。
しかし、サラリーマンの副業を禁止としている会社でも、不動産投資は例外として認められるケースがあります。
その理由として、相続などでアパートやマンションなどの収益物件を譲り受けたなど、やむを得ない事情があるためです。
また不動産投資は、物件の管理を業務委託することで本業に支障が出にくく、本業の機密漏洩の危険性が低いこともあげられます。
ただし、不動産投資が事業規模(5棟10室以上)の場合や、家賃収入が年間500万円以上のときは副業とみなされる可能性もあるため注意しましょう。
いずれにしても副業禁止の会社に勤めている場合は、不動産投資をおこなっても問題がないか事前に確認することをおすすめします。
不動産投資と副業について詳しくはこちら!>>家賃収入は副業にあたらない?会社員の不動産投資で注意するポイント
まとめ
不動産投資をおこなうことで、サラリーマンでも所得税や住民税、相続税を節税することが可能です。
特に減価償却費と損益通算をおこない所得税・住民税を節税するのは、節税手段のほとんどないサラリーマンにとって大きなメリットになります。
ただし、不動産投資はあくまで収益を得るための投資方法です。
決して「節税だけ」を目的にしないことが不動産投資の成功へとつながります。