空室対策に!ZEHマンションを選ぶメリット・デメリットを詳しく解説
政府が普及促進を進める省エネ・創エネの「ZEH(ゼッチ)マンション」は、高効率仕様の建材や太陽光発電などを備えた集合住宅です。
当初は新築戸建住宅が対象だったZEH支援事業による建築費の補助金申請が、マンションやアパートなど、新築の集合住宅や超高層マンションも補助の対象となったことで建築件数が増加しています。
今後はさらに増加が見込まれるZEHマンションは、周辺の競合物件との差別化につながるため、新たな空室対策としても期待されているのです。
またZEHマンションは、オーナー側はもちろん、入居者にとってもメリットがたくさんあります。
今回はZEHマンションについて、その特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。
この機会に、ZEHマンションについて理解を深めてはいかがでしょうか。
ZEHマンションとは?
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)」を略した呼び方です。
住宅の省エネ性能を高め、太陽光発電などでエネルギーを生み出すことで、その住宅のエネルギー消費を「ゼロ以下」にする住宅のことをZEH住宅と言います。
政府は環境の保護や地球温暖化対策の一環として、ZEH住宅の普及促進を進めています。「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という政府目標の達成に向けてZEH支援事業(補助金)を実施しているのです。
当初は新築戸建住宅を建築・購入する個人向けだったZEH支援事業ですが、2018年度からマンションなどの新築集合住宅も支援対象に、2019年度には21階建て以上の新築超高層マンションもZEHマンションとして補助対象となり、その普及件数は拡大傾向にあります。
ZEHマンションと一般的なマンションの違い
ZEHマンションと一般的なマンションの一番の違いは「性能」にあります。
ZEHマンションの場合、外壁や屋根には高断熱素材を使用したり、省エネ性の高い床暖房を設置したり、窓にはアルミ樹脂複合サッシと複層ガラスを採用するなど高効率仕様が取り入れられているのが特徴です。
また、エアコンや照明も省エネ性の高いものが使われ、給湯器にエコジョーズやエコキュートなど消費効率のよい製品が採用されています。
設計面でも、夏の日差しを遮り、風通しをよくするなど省エネ化を図っているのです。
ここに太陽光パネルなどによる発電=創エネを組み合わせることで、年間の1次エネルギー消費量を20%削減し、光熱費をプラスマイナスでゼロ以下である「ZEH」の実現を目指します。
なお、1次エネルギー消費量の対象となるのは、「暖冷房・換気・給湯・照明」で、テレビや冷蔵庫などの家電製品は対象外であることを覚えておきましょう。
ZEHの種類と補助金について
ZEHマンションを普及させるために、資源エネルギー庁、国土交通省、環境省の3省を中心に「ZEH支援事業」として建築費用の支援を実施しています。
ZEHマンション(集合住宅)の省エネ率は階数が上がるに応じて低くなることが考慮され、以下の4種類に分かれています。
・ZEH-M(ゼッチ・マンション)
・Nearly ZEH-M(準ゼッチ・マンション)
・ZEH-M Ready(ゼッチ・マンション・レディ)
・ZEH-M Oriented(ゼッチ指向型マンション)
それぞれの基準は以下の通りになります。
【ZEHマンション評価基準】
参考:
令和4年度3省連携事業『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス推進に向けた取り組み』
またZEHマンションは、一定の要件を満たすことで建築費に対する補助金を申請できます。
なお、ZEHの補助金を受けるには「ZEHデベロッパー」である建築会社やハウスメーカーなによる施工が必須です。
補助金申請の際は、要件を満たせるよう、建築会社と相談しながら建築プランを作る必要があります。
各ZEHマンションの補助内容および公募スケジュールは以下のようになります。
◇超高層ZEH-M実証事業(住宅用途部分が21層以上 におけるZEH-M)
・補助対象経費の1/2以内(令和3年度以前は2/3以内を予定)
◇中高層ZEH-M支援事業(住宅用途部分が4~20層におけるZEH-M)
・補助対象経費の1/3以内*3かつ上限8億円/件(3億円/年)におけるZEH-M
◇低層ZEH-M支援事業(住宅用途部分が1~3層におけるZEH-M)
・定額40万円*3×住棟に含まれる戸数かつ、上限6億円/件(3億円/年)
・蓄電システム2万円/kWh*3 (上限20万円/戸*4 かつ 補助対象経費の1/3以内) (住戸部分に限る)
・低炭素化に資する素材を 一定量以上使用、または 先進的な再エネ熱利用技術を 活用する場合、定額加算
*3 補助額:令和元年度からの継続事業は、同年度の補助率・額から変更なし
*4 補助額:一定の条件を満たす場合は上限24万円/戸
参考:『2021年の経済産業省と環境省のZEH補助金について』
【各補助事業のスケジュール】
参考:『2021年の経済産業省と環境省のZEH補助金について』
ZEHマンションはオーナーにも入居者にもメリットがある
ZEHマンションには、オーナーにとっても入居者にとってもメリットが多くあります。
ここでは、オーナーと入居者、それぞれが得られるメリットについてまとめました。
マンションオーナーのメリット
まず、オーナーが得られるメリットを見てみましょう。
空室対策につながる、家賃を高めに設定できる
ZEHマンションは入居者にとってもメリットがあるため、近隣の競合マンションとの差別化になり、空室対策につながります。
後述しますが、入居者にとって寒暖差の少ないZEHマンションは住み心地がよく、光熱費もおさえられることから高稼働が期待できます。
また賃料に関してもZEHの付加価値が付くため、競合物件よりも高めであっても入居付けがしやすくなります。
金融機関の融資審査が通りやすい
不動産投資ローンの融資審査は、本人属性だけでなく、融資対象物件の資産価値や収益性も審査されます。
ZEHマンションは資産価値が高く、またZEHの付加価値から稼働力のある物件とみなされるため融資審査に通りやすくなります。
ZEHマンションの建築費用は高くなりがちですので、どれだけ好条件で融資を受けられるのかは、その後の不動産投資の成功に大きく関わってくるでしょう。
補助金が受けられる
前述のようにZEHマンションは、一定の要件を満たすことで建築費に対する補助金を申請できます。
ただし、補助金の申請は決められた期間内におこなう必要があります。
また、補助金の予算枠がいっぱいになってしまうと申請しても補助を受けられない場合があるため注意が必要です。
売電収入が見込める
ZEHマンションで発電した電力の売電収入はオーナーの収入にすることができますが、入居者に還元することも可能です。
オーナーの収入とすれば不動産収入が増えますし、入居者側に還元すれば入居付けのアピールとなるので空室対策として役立ちます。
入居者のメリット
ZEHマンションへの入居には、以下のようなメリットがあります。
光熱費が抑えられる
マンションの高断熱性能や高効率設備によって省エネができるため、一般的なマンションよりも月々の光熱費をおさえることができます。
売電収入を得られる可能性がある
太陽光発電で売電収入を得られることもあります。
ただし、この収入はマンションオーナーが使用用途を決めるため、入居者に還元されない場合もあります。
居住空間の快適性がアップする
ZEHマンションは高断熱素材や設備をふんだんに採用しているため、室温を一定に保ちやすく暮らしやすいメリットがあります。
夏は涼しく、冬は暖く、1年を通して快適な住まいを実現します。
災害時でも電気を使用できる
昨今では、毎年のように台風や地震などの災害が原因の停電より、電気のない不自由な生活を余儀なくされるケースが多く見られます。
しかし、ZEHマンションの太陽光発電や蓄電池を活用すれば、停電になった場合でも電気を使うことができるので非常時でも安心なして生活を送ることが可能です。
ZEHマンションのデメリット
メリットの多いZEHマンションですが、一方でデメリットもいくつか存在ます。
マンションオーナーのデメリット
オーナーの受けるデメリットには以下のようなケースが考えられます。
建築コストがかかる(購入価格が高くなる)
太陽光発電設備のほか、断熱や省エネなど、さまざまな高効率仕様の建材や備品を採用するZEHマンションは、一般的なマンションに比べて建築費が高めになるのがデメリットです。
そのため、できるだけ補助金制度を利用して費用負担を軽減するとよいでしょう。
とはいえ、太陽光発電収入が得られることや賃貸の高稼働などによって、長期目線で見れば建築コストが割高でも資金の回収はじゅうぶん可能であると考えられます。
デベロッパーが限定されている
ZEHマンションの建築費用の補助を受けるためには、 SII(一般社団法人環境創生イニシアチブ)に登録されている「ZEHデベロッパー(建築請負会社)」に建築を発注する必要があります。
ZEHデベロッパーとして登録されていない建築会社やハウスメーカーが建築した場合は、補助の対象外となるため注意しましょう。
補助金の申請期間が限定される
補助金を受けるためには申請期間内に申請書を提出する必要があります。
ただし、受けたい支援事業によって申請期間が短い場合もあるため、しっかりとスケジュールを確認した上で必要な書類を揃えておかねばなりません。
入居者のデメリット
ZEHマンションを賃貸する入居者のデメリットは、周辺よりも家賃が高い場合があることです。
ただし、一般のマンションに比べて光熱費がおさえられることや、場合によっては売電収入も見込めることから、極端に高めの家賃でないかぎり、それほど大きなデメリットにならないケースも多いです。
まとめ
断熱性能の向上と高効率設備の導入などによってエネルギー収支ゼロの実現を目指す「ZEHマンション」は、入居者に快適な住環境を提供し、オーナーにとっては空室対策として効果が期待できる物件です。
またZEHマンションは、一定の要件を満たすことで建築費に対する補助金を申請できるのも大きなメリットになりますが、申請期間は期限があるため注意が必要です。
ZEHマンションは一般のマンションに比べて建築コストがかかります。
そのため、補助金をうまく活用して建築費を補填するためにも、申請期間をしっかり確認したうえで余裕をもったスケジュールで建築計画を立てましょう。