不動産投資でサラリーマン大家のメリットや注意するポイントを解説
終身雇用や年功序列が揺らぐなか、サラリーマン大家になる人が増えています。
サラリーマン大家として不動産投資で家賃収入を得られれば、現在や将来についても安心できる生活基盤を作る助けになります。
今回は、サラリーマンが不動産投資をはじめるメリットや注意すべきポイントについて解説します。
またサラリーマン大家が法人化する際のメリットとデメリットについてもまとめました。
これから不動産投資をはじめたい、法人化を目指すサラリーマン大家さんは、ぜひ当記事を参考にしてください。
サラリーマン大家になるメリット
不動産投資をおこなうには特別な資格や条件などは存在しません。
誰でもはじめることが可能ですが、特にサラリーマンが大家になることで以下のようなメリットが得られます。
融資審査に通過しやすい
高額の投資用不動産物件を購入するにあたって全額を自己資金で購入するのはむずかしいため、ほとんどの人が金融機関の不動産投資ローンを利用します。
その際、金融機関の融資審査を受ける必要がありますが、安定した給与収入のあるサラリーマンは審査に通過しやすい点がメリットです。
特に大手上場企業のサラリーマンや公務員は高属性とみなされるため、有利な条件で融資を受けやすいです。
不動産投資ローンの融資上限額は年収の5倍~7倍程度が一般的ですが、高属性であれば10倍以上と非常に大きな額が融資されることもあります。
不動産投資ローンの融資審査について詳しくはこちら!>>不動産投資の融資の可否はどう決まる?審査に通りやすいのはこんな人
個人属性とは?
個人属性とは、融資を申し込む人の勤務先や年収など、経済的・社会的背景を指します。
融資申込者の属性によって、融資の可否・融資条件(融資限度額や金利など)が金融機関によって決定されるのです
金融機関は融資審査内容について明らかにしていませんが、一般的には以下の項目が個人属性として審査されます。
・家族構成:同居している家族の有無など
・居住環境:持ち家か賃貸か、居住年数など
・勤務先の状況:勤務先名、勤続年数、職種、会社の規模、雇用形態など
・収入:個人年収(過去3年間)、夫婦での年収など
・資産:金融資産(預貯金、株、債券など)の有無など
・借入状況:借入の有無、残債額、返済計画など
給与収入が減収したときの備えになる
終身雇用や年功序列システムの崩壊が危ぶまれる中、収入源を複数に分散させていくことが大切です。
サラリーマン大家として家賃収入を得ることができれば、給料収入が減少した場合に備えることができます。
不動産投資を成功させることができれば、サラリーマンの給料以上の安定した収入が期待できるでしょう。
節税につながる
サラリーマン大家は、不動産投資によって赤字が出た場合でも給与所得と「損益通算」することで所得税の還付が受けられるケースがあります。
不動産投資では、運用にかかる費用・税金を必要経費として計上できます。
また、投資用不動産物件の購入費用を減価償却費として毎年一定額を経費計上できますが、減価償却費は実際の出費はないにも関わらず経費計上できる費用です。
そのためキャッシュフローは黒字でも減価償却費を計上することで会計上は経費が増え、利益が減ります。
減価償却費を上手に使って不動産所得を赤字にし、損益通算することで課税所得が減り、結果的に所得税や住民税の節税につながります。
不動産投資は副業にあたらない
勤務先で「副業禁止」とされている場合でも、不動産投資は例外として認められるケースがあります。
その理由として、相続や譲渡でアパートなどの収益物件を譲り受けたなど、やむを得ないケースが存在するためです。
また会社社員の副業を禁じる理由には、副業に多くの時間や労力を割くことで「本業への支障が出ること」や「本業の機密漏洩の危険性」などがあげられます。
しかし、業務の大部分を管理委託できる不動産投資は本業への支障がでにくく、機密漏洩のリスクが低いため、不動産投資は副業とみなされない可能性が高くなります。
ただし、不動産投資が事業規模(5棟10室以上)の場合や、家賃収入が年間500万円以上のときは副業とみなされる可能性もあるため注意しましょう。
いずれにしても副業禁止の会社に勤めている場合は、不動産投資をおこなっても問題がないか事前に確認することをおすすめします。
不動産投資と副業について詳しくはこちら!>>家賃収入は副業にあたらない?会社員の不動産投資で注意するポイント
サラリーマン大家が注意すべきポイント
前述のように副業とみなされない可能性の高い不動産投資ですが、サラリーマン大家として注意すべき点がいくつかあります。
ここでは注意すべきポイントを解説します。
確定申告をかならずおこなう
サラリーマンの税金の過不足は基本的に年末調整でおこなわれますが、サラリーマン大家として不動産所得が20万円を超える場合は、確定申告をおこなう必要があります。
ただし、不動産所得が20万円未満の場合でも、前述のように不動産所得が赤字であれば損益通算することで所得税が還付されるケースもあります。
なお、給与収入が2,000万円を超える場合や、不動産所得が20万円未満でもほかの副業による所得との合計が年間20万円を超える場合など、所定の要件に該当するときは確定申告が必要です。
不動産所得が20万円を超えているにもかかわらず確定申告をしない場合、無申告課税や延滞税などのペナルティが課されます。
また悪質な所得隠しの場合は脱税とみなされ、刑事事件に発展する可能性もあるため、確定申告はかならず期限内におこないましょう。
(不動産所得とは「家賃などの不動産収入から必要経費を差し引いた額」であり、家賃収入額そのままではありません)
確定申告について詳しくはこちら!>>家賃収入の確定申告はするべき!やり方や経費にできるものを解説
管理委託を利用する
不動産投資が副業とみなされない場合でも、サラリーマン大家として本業に支障が出ないよう十分注意しましょう。
所有する賃貸物件の管理業務は多岐にわたり、すべてサラリーマン大家として自主管理するのは非常に時間と労力を要します。
賃貸物件の管理には以下のようなものがありますが、本業に支障をきたさないためにも、管理会社に業務委託することをおすすめします。
【賃貸物件の管理内容】
・建物の管理:清掃や修繕・メンテナンスなど
・入居者管理:入退去や更新手続き、クレーム処理など
・家賃管理:賃料の集金など
事前に会社に相談しておく
安心してサラリーマン大家をするためにも、不動産投資をおこなう旨を事前に会社側に相談しておきましょう。
前述のように、副業禁止の場合でも不動産投資は副業とみなされないケースも多いですが、最終的な判断は勤務先によって異なります。
不動産投資をはじめても問題ないか、どの程度の規模であれば副業あつかいにならないかなど事前に確認しておくとよいでしょう。
また不動産投資をつづけていく過程で、副業あつかいになる基準(事業的規模、年間家賃収入が500万円超えなど)を超えた場合も、勤務先に相談し許可を取ることをおすすめします。
なお、公務員の場合は基本的に副業が禁止されていますが、やはり不動産投資は副業にあたらないとされています。
ただし、公務員の副業に関するルールは国家公務員か地方公務員かによっても異なるため、不動産投資を計画する際は、かならず担当者に確認することをおすすめします。
サラリーマン大家として賃貸経営をおこなうのに必要な届け出は?
サラリーマン大家として賃貸経営をおこなうにあたって、届け出が必要な書類もあります。
ここでは用意する書類についてまとめました。
・開業届
不動産投資をはじめる際に届け出る書類のひとつが「開業届」です。
正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」と言い、開業後1ヶ月以内に住所地または納税地を管轄する税務署に提出します。
なお、開業届は提出しなくても特に罰則はありませんが、確定申告時に青色申告を選ぶ場合、開業届の提出は必須です。
・青色申告承認申請書
確定申告で、節税メリットが多い青色申告を選ぶ際は、税務署に「青色申告承認申請書」の届け出が必要です。
提出期限は、1月1日から1月15日までに開業したときは、その年の3月15日まで、1月16日以降に開業した場合は開業日から2ヶ月以内となります。
すでに開業していて白色申告から青色申告に変更したい場合は、青色申告をする年度の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。
なお、状況によっては以下の書類の提出も必要になります。
控除する内容にあわせて忘れずに提出しましょう。
・青色事業専従者給与に関する届出
・給与支払事務所等の開設の届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
サラリーマン大家が法人化するメリットとデメリットは?
サラリーマン大家として、順調に収益が出せるようになると「法人化」が視野に入ってくることもあるでしょう。
ここでは法人化するメリットとデメリットについて解説します。
法人化について詳しくはこちら!>>不動産投資で会社設立のメリット・デメリット!法人化の流れも紹介
法人化のメリット
法人化することで得られる最大のメリットは節税効果が高まることです。
おもに以下のような節税効果が生まれます。
法人化によって税率が低くなる
サラリーマン大家として順調に不動産投資をおこなっていると、個人の所得税率が法人税率よりも高くなることがあります。
個人の課税所得が900万円以上になると所得税率が33%となり、法人税の最大税率23.2%(平成31年4月1日以降に事業を開始した場合)を超えることがわかります。
(課税所得は、不動産所得と給与所得などのほかの所得を合算した額)
よって、個人事業主として課税所得額が900万円以上の場合、法人化することで節税につながる可能性が高まるでしょう。
ただし、不動産所得が赤字の場合、給与所得と損益通算することで課税所得額を減らせるため、法人化せずに個人で所得税を納めたほうが得になるケースも考えられます。
どちらが得になるのか検討するとよいでしょう。
【個人の所得税率】
参考:国税庁 『No.2260 所得税の税率』
【法人税の税率】(令和3年4月1日現在法令等)
参考:国税庁『No.5759 法人税の税率』
経費の範囲が広くなる
経費として認められる範囲が広くなるため、より大きな節税効果が期待できます。
経費として認められる項目には以下のようなものがあります。
・生命保険料の一部
・社用車の購入・維持費用
・自宅(社宅)の購入費用
・交際費用(一定額まで)
損失の繰り越し期間が長い
赤字だった場合、損失の繰り越し可能期間は個人事業主の青色申告では最大で3年間なのに対し、法人は最大10年間までおこなえます。
相続時の節税対策につながる、分割しやすい
個人事業主として不動産投資をおこなう場合、個人名義の不動産には相続税が課せられます。
しかし、法人の場合は代表が亡くなった場合でも相続税が発生しないため、相続時の節税対策にもつながります。
また法人化することで相続資産としての分割がしやすくなるのもメリットです。
不動産は分けようとすると、相続人同士の間に不平等が生まれてしまいますが、法人化により相続財産が不動産から株式に変わるため、たとえば400株あれば4人に100株ずつ分けることが可能です。
法人化のデメリット
法人化することでメリットが得られる一方、以下のようなデメリットも存在ます。
副業と判断される場合がある
が法人化することで副業と判断される可能性があります。
勤め先が副業禁止の場合、不動産投資を法人化して副業とみなされてしまうと就業規則違反として懲戒の対象となる可能性もあるため、法人化の前にはかならず勤め先に確認しましょう。
特に公務員の場合は法律によって副業が禁止されているため注意が必要です。
設立手続きには手間と費用がかかる
法人として会社を設立するには所定の手続きに時間や費用(株式会社で25~30万円程度、合同会社で10~15万円程度)がかかります。
必要な書類の作成や印鑑の作成、法務局への提出など、最短でも1週間程度かかります。
特に書類作成は、定款など細かなルールに従って作成する必要があるため時間がかかるだけでなく複雑で面倒です。
司法書士など専門家に依頼することで不備なくスムーズに法人化できますが、別途報酬が必要です。
会社の維持費用がかかる
個人事業主に比べて法人の税務処理や会計処理は複雑です。
そのため、税理士に代行や顧問契約を依頼することになるでしょう。
顧問契約料金の相場としては年額で50万円~70万円程度が必要となるため、収益が比較的小さな場合は費用が負担となることも考えられます。
まとめ
雇用や収入面で不安を抱えるサラリーマンにとって不動産投資による収入は、現在はもちろん将来の安心できる生活につながります。
不動産投資は副業とみなされないことから、副業禁止の会社に勤めていても、サラリーマン大家になることは可能ですが、念のために会社に確認をとることをおすすめします。