不動産投資ローンは年収の何倍が融資上限?融資審査を有利にする方法
「自分の年収で不動産投資をはじめるのは可能?」
「年収に対していくらまで融資してもらえるのだろう?」
「年収以外で融資審査を有利にする方法はないものか……」
サラリーマンなど本職を持っている人にも人気の不動産経営ですが、これからはじめたいと考えている人のなかには、自分の年収がネックになっている人も多いかもしれません。
資金さえあれば物件を現金一括購入する手もあるため、年収によって不動産投資ができないということはありません。
しかし金融機関の不動産投資ローンを利用する場合、年収は融資審査の重要なポイントになります。
そこで今回は、不動産投資ローンの融資限度額は年収の何倍なのか、融資審査の基準などを解説します。
年収別で利用できる金融機関や融資審査を有利にする方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
不動産投資ローンの融資限度額は年収の10倍が目安!
不動産投資をはじめる際に、「今の年収でいくらまで融資を受けられるのか」という指標が欲しいと考える人は多いでしょう。
一般的に不動産投資ローンの融資限度額は、年収の7倍~10倍程度が目安と言われています。
年収500万円のサラリーマンであれば融資可能額は3,500万円~5,000万円、これが年収1,000万円の場合の融資上限額は5,000万円~1億円となります。
年収1,000万円の人なら一棟アパートの購入が視野に入ってくるでしょう。
ただし「融資は年収の〇倍まで」という絶対的な決まりはありません。
なぜなら最終的な融資額は、年収だけで決まるわけではないからです。
融資先の金融機関によって違いがあるのはもちろん、同じ銀行でも支店や担当者によっても最終的な融資額は変わってきます。
また後述しますが、職業や年収、年齢などの「本人属性」や融資対象となる投資用物件の「収益性」や「担保性」によっても融資額は変動します。
たとえば、同じ会社に勤めるサラリーマンのAさんとBさんが、同じ投資用区分マンションを同じ銀行の同じ融資担当者に融資申し込みをしたとして、AさんとBさんの異なる部分がある限り、それぞれが受けられる融資額は違ってきます。
そのため融資限度額が年収の7倍~10倍というのはあくまで目安であり、状況によっては年収の10倍以上の融資を受けられる可能性もありますし、逆に7倍以下の融資しか受けられない場合もあるのです。
不動産投資ローンは年収いくらから利用可能?
前述のように、融資額は申し込み者本人の属性や融資対象の物件などに応じて変動します。
では、融資を受けるために必要な年収はいくらあればよいのでしょうか?
不動産を現金一括購入する場合は別として、一般的に融資を受けられる年収の目安は500万円~700万円と言われています。
なお年収が高いほうが融資には有利です。
下記は、年収別で金融機関が融資をおこなう確率を示したものです。
・年収1,000万円以上:80%以上の金融機関が融資可
・年収700万円以上 :50%以上の金融機関が融資可
・年収500万円 :30%以上の金融機関が融資可
やはり年収が高いほうが、融資を受けられる確率も高いようです。
繰り返しになりますが、融資の可否は、本人の年収だけでなく、そのほかの属性や融資対象の物件の収益性など総合的に判断されます。
とはいえ「年収〇〇万円以下の人はお断り」という金融機関もあり、年収によってはハードルの高い金融機関は存在します。
そのため、年収によって融資を検討してもらえる金融機関の種類は、ある程度決まっていると言えるでしょう。
年収別の融資可能金融機関は?金利目安も紹介
ここでは年収によって不動産投資ローンの融資を受けられる金融機関を紹介します。
ただし、前述のように融資を実行するかどうか、融資額をいくらにするかは審査によって決定するため、確実に融資を受けられるわけではないのでご注意ください。
不動産投資ローンと銀行について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンを扱う銀行の金利相場や審査難易度の目安を比較
年収500万円以下で利用できる金融機関
日本政策金融公庫
【日本政策金融公庫の基本情報】
・金利:基準利率1.08~2.35、特別利率U0.58~1.45 *担保あり (2022年4月1日現在)
・融資額:上限4,800万円
・借入期間:最大で20年
日本政府が100%出資した金融機関の日本政策金融公庫(日本公庫とも)は、個人や法人の「事業」を対象に融資をおこなっています。
日本公庫の特徴は、利益を追求していないため、民間金融機関から融資を受けにくい層(中小企業・個人事業者、低年収、非正規社員など)への融資を積極的におこなっていることです。
そのため、不動産貸付業として「事業性」が認められれば年収に関係なく融資を引ける可能性があります。
また金利は民間金融機関よりも低いがメリットです。
ただし融資を受けるためには、公共料金や税金に未納がないことが条件になります。
また民間金融機関と比べて、借入期間が短く、融資限度額が低いため、注意が必要です。
参考:日本政策金融公庫
日本政策金融公庫について詳しくはこちら!>>日本政策金融公庫で不動産投資の融資を受ける方法とは?
ノンバンク系金融機関
【ノンバンク金融機関の基本情報】(セゾンファンデックスの場合)
・金利:3.75%~4.55%(2022年4月1日現在)
・融資額:100万円~5億円
・借入期間:5年~30年
参考:セゾンファンデックス
ノンバンク系金融機関とは、その名の通り「銀行以外の金融機関」のことを指し、消費者金融や信販会社、クレジットカード会社などの会社が業務をおこなっています。
ノンバンクの大きな特徴は、業務内容が貸付のみで預金業務をおこなっていないことです。
「セゾンファンデックス」や「アサックス」などが、ノンバンク系金融機関に該当します。
ノンバンク系金融機関の特徴は、融資審査が比較的緩く審査時間が短いことです。
ほかの金融機関から融資を断られても、ノンバンク系なら融資を受けられる可能性がありますし、審査期間も最短3日で終了する会社もあります。
ただし、ほかの金融機関に比べて金利は3%台~5%台と高めに設定されています。
金利は会社によって異なりますが、借入れる際にはきちんとキャッシュフローが確保できるか念入りなシミュレーションは必須です。
年収500万円~700万円で利用できる金融機関
【地方銀行の基本情報】(東京スター銀行の場合)
・金利:0.85%~8.35%(変動金利)、1.35%~9.05%(固定金利) (2022年4月1日現在)
・融資額:100万円以上1億円以内
・借入期間:1年以上20年以内
参考:東京スター銀行
年収500万円~700万円の人には、地方銀行や信用金庫・信用組合が視野に入ります。
前述の日本政策金融公庫の利用もできますが、融資期間や融資額、その後の資金繰りを考えると、融資を受けられるなら地方銀行などのほうがおすすめです。
地方銀は、本店のある都道府県内での営業をおもにおこないますが、なかには融資対象エリアが広い地方銀行もあります。
「横浜銀行」や「東京スター銀行」など、地域の名前が付くことが多いです。
金利は年1.5~4.5%程度が目安です。
信用金庫・信用組合は、地方銀行よりもさらに狭い一定地域を営業エリアとしており、対応地域内の居住者および物件を対象に融資をおこないます。
金利は年2%~3%程度が目安となります。
なお、地方銀行や信用金庫・信用組合と一口に言っても、融資期間、融資限度額、金利は金融機関によって幅があるので、居住地や物件所在地の地方銀行や信用金庫・信用組合を積極的に調べてみましょう。
年収700万円以上で利用できる金融機関
【都市銀行の基本情報】(みずほ銀行)
・金利:別途問い合わせ
・融資額:50万円以上5億円以内
・借入期間:1年以上35年以内
参考:みずほ銀行
年収が700万円以上であれば、最難関の都市銀行から融資を受けられる可能性が見えてきます。
都市銀行とは、メガバンクとも呼ばれる日本全国や海外など広いエリアで展開している銀行を指します。
「みずほ銀行」や「三菱UFJ銀行」、「三井住友銀行」など、だれでも一度は耳にしたことのある有名銀行ばかりです。
都市銀行の不動産投資ローンの金利は別途問い合わせが基本ですが、相場は1~2%台程度と、ほかの金融機関に比べて低いのが特徴です。
返済期間も長く、融資限度額から高価格帯の物件も狙えます。
また全国に支店があるので、どんなエリアでも利用しやすいのもメリットです。
ただし審査基準は非常に厳しく、金融機関の種類の中でもっともハードルが高いと言えるでしょう。
年収だけでなく、自己資金額も求められることが多いため、融資申し込みをおこなう際は万全の体制で臨むことをおすすめします。
不動産投資ローンの融資審査の基準は?
金融機関は、「この人にお金を貸しても問題なく返済してもらえるか」を第一に考えています。
そのため融資の可否はもちろん融資額や融資期間・金利は、購入する物件の収益性や担保性、本人属性をこまかく審査された上で決定されます。
ここでは融資審査で判断される基準について解説します。
不動産投資の融資について詳しくはこちら!>>不動産投資の融資の可否はどう決まる?審査に通りやすいのはこんな人
個人属性
個人属性として、一般的には次のような項目がチェックされます。
収入や雇用に関する項目
おもに、勤務先(職業)、勤続年数、年収などが審査されます。
不動産投資ローンの返済は、基本的に家賃収入からおこないますが、物件の収益性が計画通りでなかったときに補てんできるかどうかという面から、年収は審査の重要なポイントです。
勤務先や職業は、安定した収入を得られるか、勤務にあたって危険はないかなどをチェックされます。
なお、安定収入が望める公務員や上場企業の正社員、医師・弁護士・公認会計士など一部の専門職は融資審査の際に有利です。
自由業や非正規社員など、安定した収入が得にくい人は属性が低くなる傾向が強くなります。
勤続年数は「安定して働いている人かどうか」の判断基準になります。
少なくとも勤続3年以上が評価の目安となり、同じ会社で長期間勤めているほど高評価です。
逆に転職を繰り返していて勤続年数が少ない場合、ヘッドハンティングなどポジティブな理由がない限りは属性としてマイナスになることがあります。
資産状況に関する項目
ローン返済の補填という面から、いざというときに返済できる自己資金や資産の有無は重要な審査ポイントです。
そのため、住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードなど借入金の有無や預貯金などの額、持家か賃貸かなどが審査されます。
借入れはしていないのが一番有利ですが、残債があっても延滞せずにきちんと返済している実績があれば、それほど不利には働きません。
特にメガバンクなど大手金融機関から融資を受けて返済している場合は、却って属性は良好と判断されるケースもあります。
ただし、きちんと返済していても借入金が多すぎる場合は注意が必要です。
借りる人それぞれには、借入れ限度額である「与信(与信枠とも)」が設定されています。
そのため、きちんと返済していてもローンの残債で与信枠を超える場合、融資審査が通らないことがあります。
物件の収益性や担保性
不動産投資ローンの返済原資は、基本的にその物件で得る家賃収入からおこないます。
そのため万一、ローンの返済が滞った場合に担保として回収する不動産にどれほどの価値があるのかということが重視されます。
よって、融資対象となる投資物件の収益性と担保性がきびしく審査されるのです。
担保性は、公示地価や路線価、固定資産税評価額などの価値から総合的な判断がおこなわれます。
収益性としてチェックされるのは、まず建物の築年数や耐用年数、コンディションなどです。
耐用年数は、融資期間や融資額など融資条件の基本として大きく関わります。
建物の状態がよければ、それだけ空室リスクや修繕リスクが減り、経営破たんする確率が下がります。
また立地も重要なポイントです。
交通アクセスがよく買い物しやすく生活しやすいなど利便性の高さや、人口流出が少ないエリアなど賃貸需要が見込めると立地の物件は、空室リスクが低く収益性があり、年数の経過による資産価値の下落も緩やかだと判断されやすいです。
なお、災害被害が少ないエリアであることも融資審査では有利になります。
不動産投資ローン審査を有利にするためにできること
年収が低くて融資審査に通らなかったり、希望した条件で融資が受けられなかったりする場合でも年収をすぐに上げることはむずかしいです。
しかし、年収以外の属性をあげたり、自己資金を増やしたり、融資審査を有利にすることは可能です。
クレジットカードを見直す
クレジットカードは使用していなくても所有しているだけで「借金ができる可能性がある」と判断され、属性が下がる可能性があります。
使用していないクレジットカードを解約したり、カードの限度額を下げたりすることで属性アップにつながります。
借入れ中のローンを見直す
ほかのローンの借入れが融資のネックになっている場合は、それらのローンを見直すことで融資限度額を上げられる可能性があります。
・ローンを借り換える
金利を減らすために、金利の低い金融機関にローンの借り換えをおこないましょう。
また複数のローンを契約している場合は、契約先をひとつにまとめることで毎月の返済額を減らせます。
・繰り上げ返済(一部または全額)でローン残債を減らす
繰り上げ返済することでローンの残債が減り、借入れ限度額が回復します。
重要なのは残債を減らすことなので、全額がむずかしい場合は一部でも構いません。
自己資金を増やす
年収が低い場合でも、自己資金(貯金や金融資産)が多ければ融資審査に通りやすくなるケースがあります。
金融機関は貸し倒れリスクを警戒するので、万一の際に補てんできる自己資金が豊富にあれば問題ないと判断されることが多いからです。
そういった判断は金融機関によって異なるため、融資申し込みの際に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
不動産投資ローンの融資限度額は、年収の7倍~10倍が一般的な目安です。
しかし、年収などの属性や融資対象物件の収益性や担保性によって、融資額を含めた融資条件は変動します。
年収が低く、希望する融資を受けられない場合は、クレジットカードを解約したり限度額を下げたり、ローンを見直して残債を減らしましょう。
年収を上げることはむずかしいですが、そのほかの属性を上げる努力をすることで融資に有利になる方法があります。
不動産投資をはじめる際に年収が気になったら、ぜひ当記事を参考にしてください。