不動産投資に役立つ資格10選!メリットや難易度を紹介
不動産投資初心者のなかには、「不動産投資をするのに資格はあったほうがよいのか?」と考える人も多いようです。
しかし、不動産投資をおこなうにあたって必要な資格はありません。
ただし不動産投資で成功するには、不動産投資の知識は必要不可欠です。
そのため資格や資格取得のために勉強した知識は、不動産投資において非常に役立つ大きなメリットになります。
そこで今回は、不動産投資に役立つ資格10種を紹介しながら、それぞれの資格で学べる内容や資格取得の難易度を解説します。
また、資格取得に関する注意点もまとめました。
不動産投資の知識を得る方法のひとつとして、ぜひ当記事を参考にしてください。
不動産投資をおこなうには資格は不要だがメリットはある
結論から言うと、不動産投資をおこなうために必要な資格は一切ありません。
資金さえ工面できれば、だれにでも不動産投資はおこなえます。
ただし、不動産投資を成功させるためには不動産投資の仕組みに関する知識はもちろん、法律や税金などの知識が非常に重要です。
不動産投資初心者にとって、不動産投資の専門用語や不動産業界の一般常識・慣例などに戸惑うことも少なくありません。
また、不動産投資をはじめたくても「なにからはじめたらよいか分からない」という人も多いでしょう。
資格を取得するまでに得た知識を活用すれば、不動産投資の疑問や不安を解消する手助けになり、効率的な不動産の運用はもちろん、確定申告や相続など専門的な分野でも役立つ場面も多く見られます。
したがって、不動産投資に資格は不要ですが、資格や資格を取得するために学ぶ内容は決して無駄にならず、むしろ不動産投資をするうえで大きなメリットにつながります。
不動産投資に役立つ資格10選!学べる内容や難易度は?
ここでは、不動産投資に役立つ10種類の資格について、学べる内容や資格取得の難易度を紹介します。
1:宅地建物取引士(宅建士)
国家資格である宅地建物取引士(宅建士)は、不動産の売買や賃貸に関する法律知識・税金知識を有する、不動産取引に不可欠な資格のひとつです。
不動産会社では、従業員5人に対して宅建士1人を置くよう義務付けられているので不動産業界でも需要の多い資格です。
また、宅建士の資格を持つ不動産投資オーナーも多数存在しています。
学べる知識や取得の難易度について
宅地建物取引士の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・宅建業法の知識
・民法の知識
・法令上の制限(都市計画法や建築基準法など)についての知識
・不動産に関する税金の知識
宅建士の資格取得やその内容を学ぶことで、不動産取引に関する知識や税金などの基本的な知識をはじめ、不動産売買契約時の「重要事項説明書」についても内容を深く理解できるようになります。
不動産に関する知識を深めることで、トラブルを回避したり不動産売買の取引を有利にすすめたりといった効果が期待できます。
宅建士試験は受験資格の制限がないため、だれでも受験でき、また独学でも合格できる内容であるため毎年約20万人が受験する人気の国家資格のひとつです。
合格率は16%前後と高くはありませんが、国家試験の中での難易度は「普通」となります。
詳しくは、「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」をご覧ください。
2:ファイナンシャル・プランニング技能士(ファイナンシャルプランナー)
ファイナンシャル・プランニング技能士は、資産設計のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)の技能を認定する国家資格です。
お金の流れについての専門知識を有し、不動産業界だけでなく、金融業界や保険・証券など、さまざまな場所で活躍できる資格です。
学べる知識や取得の難易度について
ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・生命保険や損害保険の基礎知識
・税金に関する知識
・不動産に関する基礎知識
・相続に関する基礎知識
ファイナンシャルプランナーは、不動産にかかわる税金や相続といった項目について、お金の流れを把握できるため、収支シミュレーションに役立てられるのが大きなメリットになります。
また、不動産投資以外の場面でも活用できる資格であるため、ほかの資産運用も併用した資産形成の効率化などにも役立ちます。
ファイナンシャル・プランニング技能士試験は、「日本FP協会」と「金融財政事情研究会(きんざい)」のの2機関でおこなわれており、どちらで合格しても資格は同じです。
合格率は、3級に関しては日本FP協会で約80%と非常に高くなっています。
なお、2級試験の受験資格は3級合格が、1級試験の受験資格は2級合格が条件です。
級を飛び越えての受験はできないため注意が必要です。
詳しくは、「日本FP協会」、「金融財政事情研究会」をご覧ください。
3:マンション管理士
国家資格のひとつであるマンション管理士は、分譲マンションの管理組合の管理に関してアドバイスや指導ができる資格です。
マンションの長期修繕計画の作成や工事会社の選定などのほか、管理規約の見直しや居住ルールの作成・見直しなど、相談内容によって仕事範囲は多岐にわたります。
なお、次項の「管理業務主任者」とは、試験の出題範囲が似ているので、同時に受験する人も多いです。
学べる知識や取得の難易度について
マンション管理士の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・民法の知識
・区分所有法の知識
・マンション管理適正化法の知識
・会計や税務の知識
・建築の構造や設備に関する知識
マンション管理士は、マンション管理組合のアドバイザー的立場としてマンションに関する専門知識を有する資格です。
学んだ内容を活かすことで、マンションの管理会社から送られてくる書類の内容や修繕積立金などの費用の根拠などについて、オーナー側に不利な運用がされていないかという視点を持つことが可能になります。
また、管理組合の総会や理事会について理解を深めるためにも役立ちます。
区分マンション経営をおこなっている人や目標とする人にとっては非常に有意義な内容ですが、逆に一棟アパート経営をする人にとっては関連の薄い資格です。
なお、マンション管理士の受験資格に制限はありませんが、合格率は8%前後と低く、国家試験の中でも「難関」と言われる試験のひとつです。
詳しくは、「一般社団法人 マンション管理業協会」をご覧ください。
4:管理業務主任者
管理業務主任者は、マンションの管理組合へマンションの委託契約に関する重要事項説明や管理事務報告を管理会社側の立場でおこなう国家資格で、「宅建士」のマンション版といった役割を持ちます。
マンション管理業をおこなう管理業者、管理業務主任者の有資格者の設置が義務付けられているため、マンション運営においてなくてはならない存在となっています。
学べる知識や取得の難易度について
管理業務主任者の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・民法の知識
・区分所有法の知識
・マンション管理適正化法の知識
・会計や税務の知識
・建築の構造や設備に関する知識
学ぶ内容は、前述の「マンション管理士」とほぼ同じです。
両者の違いは、マンション管理士がマンションの管理組合側の立場であるのに対して、管理業務主任者はマンション管理会社の立場であることです。
資格取得に必要な勉強内容はほぼ同じながら、管理業務主任者試験の合格率は20%超程度で難易度は「普通」となります。
難関だったマンション管理士よりは合格しやすい傾向があります。
試験範囲もほぼ同じ、試験日も1週間程度の違いがあるだけなので、2種類とも受験する受験者が多く見られます。
詳しくは、「一般社団法人 マンション管理業協会」をご覧ください。
5:賃貸不動産経営管理士
2021年度より国家資格となった賃貸不動産経営管理士は、おもに賃貸住宅に関する専門的な知識を持ち、管理委託契約や賃貸借契約の締結・更新・終了について、説明や書面交付をおこなう管理業務者です。
管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者の事務所ごとに、1名以上の賃貸不動産経営管理士の設置が義務付けられています。
学べる知識や取得の難易度について
賃貸不動産経営管理士の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・入居付けから退去までの規制についての知識
・建物や設備についての知識
・賃貸住宅の管理に関する税金の知識
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅(アパートやマンションなど)の管理に関する知識や技能など、賃貸経営中の大家さんにとって必要な知識を学ぶのに最適な資格のひとつです。
入居付けから退去までの一連の管理や対応の流れがわかるようになるので、学んで損はありません。
賃貸不動産経営管理士が国家資格になって、はじめての試験が2021年11月21日におこなわれました。
合格発表は2022年1月7日に予定されているため、今年度の合格率はまだわかりませんが、2019年度の合格率が36.8%、2020年度の合格率は29.8%であったことから、2021年度の合格率は昨年度よりも低くなると予想されています。
詳しくは、「一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会」をご覧ください。
6:不動産鑑定士
不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価をおこなう国家資格です。
公示地価など、不動産の公的価格についての鑑定のほとんどに関わります。
学べる知識や取得の難易度について
不動産鑑定士の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・民法の知識
・不動産の適正価格を判断するための知識
・経済学や会計学の知識
土地価格を鑑定できる不動産鑑定士の知識は、不動産投資物件を購入する際、その価格が適正であるかどうかを判断するのに大いに役立ちます。
不動産投資を失敗した人のなかには、不動産会社に言われるがまま、相場よりも高い土地であることを知らずに購入してしまった例も少なくありません。
土地価格を正しく診断できるノウハウがあれば土地を適正価格で購入することができるため、不動産投資で成功できる確率も上がるのです。
しかし、不動産鑑定士の国家試験の合格率は1割程度と非常に低く、司法試験や公認会計士とならぶ「超難関」試験のひとつです。
試験を突破するには独学でも不可能ではありませんが、短答式試験と論文式試験の2段階試験ということもあり、資格取得を目指すならば、できれば専門学校などで勉強することをおすすめします。
詳しくは、「公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会」をご覧ください。
7:簿記
簿記は、経営に欠かせない会計処理をおこなう重要なスキルです。
簿記資格はすべて公的資格ですが、有資格者は企業の経理財務で活躍する機会も多く見られます。
学べる知識や取得の難易度について
簿記の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・貸借対照表や損益計算書の知識
・収支バランスの判断や知識
・確定申告書の知識
簿記を勉強することで、不動産投資における利益や負債はもちろん、減価償却などの費用についての知識が学べます。
不動産投資家の多くは税務処理を税理士に委託するすことも多いですが、不動産投資の規模が小さい場合や、自分でも税務を把握したい人には簿記の資格取得や勉強は大いに役立ちます。
公的資格である簿記検定にはいくつか種類がありますが、一番メジャーなのは日本商工会議所がおこなう「日商簿記検定」です。
日商簿記検定は、初級、3級、2級、1級がありますが、3級か2級を取得すれば、不動産投資には十分役立ちます。
合格率は実施回によってばらつきがありますが、3級で50%前後、2級は20%前後となります。
昔からある資格検定のひとつなので、テキストや過去問題集は豊富で手に入りやすく、また仕事をしながらでも取得が可能な資格です。
2級、3級の試験は年に3回あるため、受験しやすいのも魅力のひとつです。
詳しくは、「日本商工会議所」をご覧ください。
8:ホームインスペクター(住宅診断士)
2018年4月から中古住宅売買時のホームインスペクション(住宅診断)が義務化されたことにより、注目されているホームインスペクター。
ホームインスペクターは「住宅診断士」とも呼ばれ、中古住宅などの建物を観察し、欠陥部分などを見抜くとともに修繕費用の見積もりなどアドバイスをおこなうに民間資格です。
学べる知識や取得の難易度について
ホームインスペクターの資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・建築関連の法規に関する知識
・建築技術に関する基礎知識
・ホームインスペクション実務(劣化の判断や調査、診断方法など)の知識
ホームインスペクターの資格取得・勉強によって得られるのは、おもに住宅に関しての建築関連の法規事項や建築技術や住宅診断に必要な知識です。
知識を活用することで所有物件のコンディションを見抜いて早めの対処が可能です。
また中古物件購入時にも、劣化具合から物件の正確な価値を判断しやすくなるメリットがあります。
ホームインスペクターの合格率は30%前後と、難易度的には「普通」です。
受験資格の制限はありませんが、受験者の多くが不動産関連の職に就いてる有資格者なため、合格を目指すのであれば、建築関係の仕事をしている人と同等レベルの勉強が必要となります。
詳しくは、「NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会」をご覧ください。
9:不動産実務検定
旧称が大家検定だった不動産実務検定は、「不動産投資専門資格」を謳うだけあって、不動産売買や管理といった不動産投資の基礎など、大家さんが知りたい知識を学べる民間資格です。
学べる知識や取得の難易度について
不動産実務検定の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・金融機関の融資についての知識
・満室経営のための管理実務の知識
・賃貸経営に関わるリスク対策などの知識
上記は2級で学べる内容で、おもに賃貸管理実務の知識がメインになります。
1級では、不動産投資全般の実務(不動産の税務知識や融資条件の詳しい内容など)についての知識を学びます。
2級の合格率は約80%と非常に高く、12時間で基本的な内容を習得できると言われているため、これから不動産投資をはじめようと考えている人にもおすすめの資格です。
1級の合格率は約50%となり、2級よりは落ちますが、それでもほかの不動産投資関連の資格に比べると取得しやすいと考えられます。
そのほかの不動産投資関連資格を受験する前のおためしとして、まず受験してみるのもよいかもしれません。
詳しくは、「一般財団法人 日本不動産コミュニティー(J-REC)」をご覧ください。
10:サブリース建物取扱主任者
サブリース建物取扱主任者は、サブリース賃貸住宅に特化した知識を持つ民間資格のひとつです。
賃貸経営の方法のひとつであるサブリース(一括借り上げ)を不動産オーナーが安全かつ安心して活用できるため、適切な建築業者、管理会社の選定やコンサルティングをおこなうことのできる存在です。
学べる知識や取得の難易度について
サブリース建物取扱主任者の資格を取得するためには、おもに以下のことを学びます。
・サブリース契約に関する法律の知識
・サブリース契約書についての知識
・サブリース契約のトラブル事例
・サブリースの実務知識
サブリース建物取扱主任者は、その名称のとおり、サブリースに関して有用なさまざまな知識を網羅して学ぶことができる資格です。
サブリース契約に対する不信感や不安を払しょくし、リスクを伴うことのあるサブリース契約について学ぶことができます。
不動産オーナーの目線で、サブリース契約に不利な点はないか、説明漏れはないかなどの確認をすることで、あらためてサブリース契約を検討することもできるでしょう。
なお、サブリース建物取扱主任者はほかの資格と違い、試験が存在しません。
資格を取得するには、規定の認定講座を受講したうえでレポートを提出すれば資格認定がされます。
詳しくは、「サブリース建物取扱主任者LEC東京リーガルマインド」をご覧ください。
不動産投資で資格を取得する際の注意点
前述のとおり、「不動産投資に資格は不要」です。
不動産投資に必要なのは「不動産投資に役立つ知識」であり、資格そのものではありません。
また、「資格の取得は、不動産投資の成功には直結しない」という認識を持ちましょう。
資格取得にこだわらず、無理のない範囲で不動産関連の書籍を読んだり、不動産セミナーに参加したり、信頼できる不動産会社からアドバイスを受けるなど、不動産投資の知識を得る方法はいくらでもあります。
資格取得を目指すあまり試験勉強にばかり時間をかけ過ぎてしまい、肝心の不動産投資がおろそかになっては本末転倒です。
手段と目的が逆にならないよう注意しましょう。
まとめ
不動産投資をおこなうために必要な資格はありませんが、不動産投資に関する資格そのものや資格を取得するために学んだ知識は不動産投資に少なからず役立ちます。
ただし、「資格を取得した」ことと「不動産投資の成功」はイコールではないことも十分承知しておく必要があります。
「資格」そのものにこだわらず、無理のない時間と費用の範囲で不動産投資の知識を深め、不動産投資の成功へとつなげていくとよいでしょう。