不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
不動産投資をはじめるにあたって必要になるのが「初期費用」です。
初期費用は、大きく「頭金」と「諸費用」のふたつに分けられ、頭金は物件価格の10%~30%程度、諸費用は5%~10%程度が目安と言われています。
2,000万円の物件であれば、最低でも頭金が200万円、諸費用が100万円、合わせて300万円の自己資金が必要となりますが、実は目安よりも初期費用を抑える方法があるのです。
今回は、不動産投資をはじめる際に必要となる初期費用について、種類ごとに目安額や割合を解説します。
また、できるだけ初期費用を安くするための方法もまとめました。
これから不動産投資をはじめる人にとって必須の内容ばかりです。
ぜひ参考にしてください。
不動産投資で必要な初期費用とは?種類や目安額は?
不動産物件を購入するには物件・土地の購入費用のほか、手続きにかかる費用や専門家への報酬、各種税金、保険料などの「諸費用」がかかります。
これら諸費用に加えて、物件購入代金の「頭金」を含めたものが「初期費用」になります。
初期費用額は、購入する不動産物件の価格や融資額、個人の属性、物件の収益性・資産価値などによって異なりますが、おおよその目安として諸費用が物件価格の5%~10%程度、頭金は10%~30%程度みておくとよいでしょう。
なお、初期費用の種類とそれぞれの目安は以下のようになります。
【主な初期費用の種類と目安】
・仲介手数料:物件価格の3%+6万円+消費税
・不動産取得税:固定資産税評価額×3% (令和6年3月31日まで。土地および住宅)
・印紙税:物件価格によって異なる(1,000万円超5,000万円以下の場合1万円~)
・登録免許税:土地・建物の1.5%
・司法書士への報酬:10万円~15万円程度
・清算金(固定資産税など):物件引き渡しのタイミングなどによって異なる
・融資事務手数料:借入金額の1~3%程度
・融資保証料:借入額の2%程度(一括で支払う場合)
・火災・地震のための損害保険料:建物の構造や面積によって異なる
・頭金:物件価格の10%~30%程度
仲介手数料
「仲介手数料」は、不動産仲介会社を通して不動産物件の売買が成約した際、不動産仲介会社に支払われる成功報酬です。
よって、仲介会社を介さずにおこなった不動産物件の売買には仲介手数料は発生しません。
仲介手数料は、宅地建物取引業法の第46条にて上限額が決められており、不動産仲介会社は上限額を超える額の仲介手数料を受け取ることはできません。
仲介手数料の上限額は以下のようになっています。
【仲介手数料の上限額】
・200万以下の部分 :取引額の5%以内+消費税
・200万円を超えて400万円以下の部分:取引額の4%以内+消費税
・400万円超の部分 :取引額の3%以内+消費税
物件価格が2,000万円の場合、200万円までに5%、200万円~400万円に4%、残り1,600万円に3%の仲介手数料がかかることになります。
なお、取引額が400万円を超える場合は、下記の計算式を利用すると仲介手数料の上限額を算出することができます。
【400万円を超える物件についての仲介手数料額】
・仲介手数料 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
2,000万円の不動産物件について、上記の計算式で仲介手数料上限額を計算してみると次のようになります。
(2,000万円 ✕ 3% + 6万円) ✕ 1.1 = 72万6千円
ただし、上記の計算式で算出した額は、あくまで仲介手数料の上限額で下限額は決められていません。
そのため、不動産仲介会社によっては、もっと安い仲介手数料を提示している場合もありますし、物件によっては仲介手数料無料のこともあります。
不動産取得税
不動産を購入した場合、「不動産取得税」が発生します。
不動産所得税は、不動産の購入価格ではなく固定資産税評価額に対して以下の計算式で課税されます。
【不動産取得税の計算式】
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 税率4%(標準税率)
ただし特例により、2024年(令和6年)3月31日までは、土地および住宅の場合は標準税率が3%に軽減されます。
なお、不動産所得税の課税率については各自治体によって異なる部分があるので、詳しくは各自治体で確認してください。
印紙税
10万円以上の不動産売買契約書を紙媒体で交わす場合は「印紙税」が発生します。
印紙税の額は、以下のように売買契約の金額により異なります。
【印紙税額】
記載された契約金額 |
軽減後の税額 |
10万円を超え50万円以下のもの |
200円 |
50万円を超え100万円以下のもの |
500円 |
100万円を超え500万円以下のもの |
1千円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの |
5千円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの |
1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの |
3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの |
6万円 |
なお、令和2年4月1日から令和4年3月31日までに作成される「不動産譲渡契約書」のうち、その契約書に記載された契約金額が10万円を超えるものおよび「建設工事請負契約書」のうちその契約書に記載された契約金額が100万円を超えるものについては、印紙税の軽減措置の対象となります。
登録免許税
不動産を購入した際には、所有権や抵当権にかかわる登記が必要です。
土地・建物を購入する際には「所有権移転登記」をそれぞれおこないます。
新築物件を購入する際は、「所有権の保存登記」が、不動産投資ローンで融資を受ける場合は「抵当権設定登記」も必要になります。
こういった不動産登記にかかる税金が「登録免許税」です。
登録免許税額は、不動産の購入価格ではなく固定資産税評価額に対して以下の税率が課税されます。
【登録免許税の税率】
・土地の売買による所有権移転登記 : 2%(令和5年3月31日まで1.5%)
・建物の売買による所有権移転登記 : 2%
・所有権の保存登記 : 0.40%
・抵当権設定登記 : 0.40%
司法書士への報酬
前述のように、不動産物件を購入した場合は登記手続きが必要です。
登記申請は、だれでもおこなうことができますが、多くの書類が必要であり手続きも複雑なため司法書士に依頼するのが一般的です。
報酬額は司法書士によって異なりますが、10~15万円程度みておきましょう。
清算金(固定資産税など)
年の途中で不動産物件の売買がおこなわれた場合、不動産物件の引き渡し以降分の税金や管理費、修繕積立金などは日割り計算して買主が売主に「清算金」として支払うのが一般的です。
そのため、いつ不動産物件の引き渡しがおこなわれたかによって、清算金の額は変わってきます。
なお、固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点で不動産の所有者(固定資産台帳に登録されている人)に対して課せられます。
固定資産税計算方法は、不動産価額(固定資産税評価額)×1.4%となります。
融資事務手数料
不動産投資物件を購入する際に金融機関の不動産投資ローンを利用し融資を受ける場合は、ローン手続きのための「融資事務手数料」が必要です。
融資事務手数料は、借入金額に関わらず一定の金額を支払う定額型と、借入金額に対して設定された割合で事務手数料を支払う定率型の2種類があります。
一般的な目安は、定額型の場合は3万円~10万円程度、定率型で1%~3%程度になりますが、どちらも金融機関によって金額や割合が異なるため、細かな数字は融資を受ける金融機関に確認してください。
融資保証料
金融機関から融資を受けた場合、貸し倒れを防ぐためにローン保証会社と契約する必要があります。
その際は保証会社に「融資保証料」を支払います。
融資保証料の目安は、借入時に一括で支払う場合は借入金額の2%ほど、毎月の返済額に上乗せされる場合は0.2%~0.3%ほどを上乗せした利息を支払います。
融資保証料額については、ローン契約者の信用度や返済期間になどによって異なりますし、また保証料不要という金融機関もあるので、詳しくは融資を受ける金融機関に確認してください。
火災・地震のための損害保険料
不動産投資のリスクのひとつに、火災や地震、風水害などの災害リスクがあります。
これらの災害リスク対策として、不動産物件を所有す場合は必ず各種損害保険に加入することが望ましいです。
なお保険額は、所有する不動産物件の構造や大きさ、補償内容によって異なります。
頭金
不動産を購入にあたって、不動産投資ローンを利用する場合に手元資金から支払う物件価格の一部を「頭金」と言います。
頭金の額に決まりはないため個人で用意できる範囲で支払うことになりますが、頭金が多ければ多いほど、融資審査通過に有利に働きます。
目安は、物件価格や個人の属性、物件の収益性などによって異なりますが、物件価格の10%~30%程度みておきましょう。
なお頭金は、不動産物件を現金一括で支払う場合や頭金なしで組めるフルローンや初期費用なしのオーバーローンを利用する際は必要ありません。
フルローンとオーバーローンについては、下記の「頭金や初期費用なしで不動産投資ローンを組む方法」をご覧ください。
不動産投資の初期費用を安くするための方法は?
ただし、税率が決まっている税金などは安くすることはできないため注意しましょう。
頭金を減らす
初期費用のなかで大きな割合を占めるのが頭金です。
前述のように、頭金の目安は不動産物件価格の10%~30%程度ですが、もっと少ない頭金でも融資を受けることは可能です。
しかし頭金を減らすことで初期費用額は抑えられますが、以下のようなデメリットが考えられます。
・借入額が多くなる
頭金は物件価格の一部を先払いしているため、頭金が多くなればなるほど金融機関からの借入額は少なくて済みます。
逆に頭金を減らすということは借入額が大きくなるということです。
借入額が大きいと、毎月のローン返済額が大きくなったり、返済期間が長くなるなど、キャッシュフローの悪化や金利上昇リスクなどが懸念されます。
頭金を少なくする場合は、しっかりと収支シミュレーションをおこなったうえで、返済計画が破綻しない物件を選ぶ必要があります。
・融資審査が厳しくなる
本人属性や物件の収益性によっては、より多くの頭金を入れることで融資審査に通りやすくなります。
そのため頭金が少ないと、融資審査に通らなかったり、希望する額の融資を受けられなかったりといったことも考えられるため注意が必要です。
仲介手数料を減らす
初期費用のなかで頭金に次いで大きな割合を占めるのが仲介手数料です。
仲介手数料は不動仲介産業者に物件を仲介してもらうことによって発生する手数料なため、売主から直接不動産物件を購入した場合は、仲介手数料は不要です。
同様に、不動産業者が保有する物件を購入する場合も仲介手数料は発生しません。
また前述のとおり、不動産仲介会社が受け取れる仲介手数料は上限額が決まっていますが、下限は決まっていないため、仲介手数料が無料の物件を選んだり、値下げ交渉をおこなうのもひとつの方法です。
なかには、仲介手数料の支払いを売主と買主で折半できる場合もあるので、仲介手数料を少しでも安くしたい場合は交渉してみることをおすすめします。
そのほかの諸費用額を減らす
頭金や仲介手数料以外では、以下の諸費用を減らせる可能性があります。
・司法書士への報酬
不動産登記を依頼する司法書士を探す際、相見積もりをしたうえで、安い司法書士を選ぶことで報酬額を抑えることができます。
ただし、不動産会社によっては司法書士を指定される場合もあるので、事前に確認をしておきましょう。
・火災・地震のための損害保険料
損害保険についても、複数の保険会社から見積もりを取り、掛け金の安い保険会社を選ぶことができます。
また、補償内容によって保険料は大きく違うため、余分な補償をはずすことで保険料を抑えることが可能です。
また保険料は、一括払いに比べて支払う保険料は多くなりますが、単年払いにすることもできます。
できるだけ初期費用を抑えたい場合は単年払いを選択するとよいでしょう。
初期費用の経費計上について
初期費用として支払った諸費用は、初年度に経費として計上できるものと、毎年減価償却費として計上するものに分けられます。
【初年度に経費として計上できるもの】
・印紙税
・登録免許税
・司法書士への報酬
・融資事務手数料
・融資保証料
・火災・地震のための損害保険料
【減価償却費として毎年経費計するもの】
・仲介手数料
・清算金
(それぞれ建物分に関してのみ)
【納税通知書が届いた時点で経費計上できるもの】
・不動産取得税
不動産取得税については、行政から納税通知書が送付され、その税額を納付した時点で経費計上することができます。
頭金や初期費用なしで不動産投資ローンを組む方法
一棟アパートや区分マンションなどの不動産物件を購入する際、多くの場合は金融機関の不動産投資ローンを利用します。
その場合、物件価格のうちいくらかを「頭金」として支払い、残りの額についてローンを組むのが一般的ですが、頭金なしで融資を受けられる「フルローン」や初期費用なしの「オーバーローン」が可能な場合もあります。
どちらも初期費用を大幅に抑えることができますが、借入額が大きくなるというデメリットがあります。
そのため、空室が増えると月々のキャッシュフローが悪化し、家賃収入から返済金を支払えず手元資金を持ち出すなどのリスクが高くなるため、手元の資金が多くない場合は注意が必要です。
また、フルローンやオーバーローンの融資審査の条件は非常に厳しく、本人の属性(職業や収入、借入金の有無など)や融資を受ける物件の資産価値が審査され、審査結果によって融資を受けられない場合もあります。
フルローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう
まとめ
不動産投資物件を購入する際に必要な初期費用の目安は、頭金と諸費用あわせて最低でも物件価格の15%程度が必要です。
ただし、物件価格や本人属性、物件の収益性によってその割合は前後します。
できるだけ初期費用を安くしたい場合は、不動産会社所有の物件や売主から直接物件を購入するなど仲介手数料を抑えたり、司法書士報酬や損害保険料の相見積もりをおこない、より安いものを選んだりするとよいでしょう。
今回紹介した初期費用の目安を参考にして、余裕をもって不動産投資をはじめてください。