不動産投資でデッドクロスが起こる3つ原因と9つの対処方法を解説
不動産投資では、「不動産投資ローンの元本返済額が減価償却費を上回る」状態を「デッドクロス」と呼びます。
デッドクロスが起こると、帳簿上は黒字なのに税金が増えることでキャッシュフローが悪化し、最悪の場合には黒字倒産に陥るリスクもあります。
では、デッドクロスにはどのように回避や対処すればよいのでしょうか?
今回は、デッドクロスが起こる3つの原因とデッドクロスの対処方法を9つ紹介します。
来るべきデッドクロスに対処できるよう、当記事をしっかりと確認してください。
不動産投資におけるデッドクロスとは?
不動産投資ローンで借り入れた元本返済分は必要経費としては計上できませんが、毎月一定額をローン返済額として支払う必要があります。
その一方で経費として計上できていた減価償却費は経年とともに減少していくため節税効果が少なくなり、税金のかかってくる部分が大きくなります。
そのため、ある時期を境に元本返済額が減価償却費を超えてしまい、帳簿上は利益がある(黒字)なのにもかかわらず、その利益に課される所得税額が増えることで最終的な収益が赤字になってしまうのです。
このようにデッドクロス状態になると最悪の場合、手元の資金が不足し「黒字倒産」する可能性もあるため不動産投資をはじめる際には、デッドクロスの原因と対処方法をしっかりと理解しておく必要があります。
不動産投資でデッドクロスが起こる3つの原因
原因をしっかりと理解することで、不動産投資物件の購入前後でデッドクロス対策を立てることができます。
1.ローン返済期間が経過することで経費にできる利息の割合が減る
デッドクロスの原因となるひとつ目は、不動産投資ローンの金利部分の減少があげられます。
不動産投ローンの元本分については経費にすることはできませんが、金利部分については必要経費として計上することが可能です。
なお、不動産投資ローンの返済方法には、以下の2種類があります
- 毎月の返済額が一定である「元利均等返済方式」
- 毎月の元本返済額が一定となる「元金均等返済方式」
このとき、元利均等返済方式を選んでいると、返済が進むにつれて費用として経費計上できる利息が減少していくためデッドクロスの原因につながりやすくなるのです。
2.不動産の減価償却が進み経費として計上できなくなる
ふたつ目の原因としてあげられるのが、減価償却費の減少です。
不動産物件(建物や設備等、土地は除く)は、経年とともに減価償却費が減っていきます。
すると、いままで計上できていた費用が経費として計上できなくなり黒字部分が増加することで、結果として課税額が増えるためデッドクロスに陥りやすくなるのです。
減価償却には、ふたつの方法があります。
ひとつ目が、償却期間にわたって毎年同じ額を経費計上する「定額法」。
そして、毎年一定の割合で費用計上していく「定率法」があります。
定率法は、償却期間の初期ほど経費計上できる金額が大きく年数が経つにつれて徐々に減っていきます。
どちらの方法でも、やがて減価償却期間が終われば経費計上はできなります。
すると、実際の家賃収入が以前と同額であっても、それまでは経費として計上できた分がなくなるため帳簿上の利益は大きくなります。
帳簿上の利益が増えることで課税される所得税額も増えるため、キャッシュフローが悪化し、結果的にデッドクロスに陥りやすくなるのです。
とくに中古物件の場合は新築に比べて減価償却期間が短いため注意が必要です。
中古物件の減価償却費について
減価償却費とは、不動産物件の建物や設備などを購入した時点で全額を経費計上するのではなく、資産を使用できる期間で分割しながら複数年に分けて経費計上する方法です。
(土地は時間が経っても価値の減らないものなので、減価償却の対象にはなりません)
減価償却費は、毎年の確定申告時に経費として計上することができるため、利益が減る分、所得税額をおさえることができるので節税につながるのです。
なお減価償却期間は、建物の構造や用途、設備の種類によって「法定耐用年数」に定められた期間になります。
新築物件の耐用年数は、木骨造アパートであれば22年、鉄筋コンクリート造のマンション等は47年です。
中古の場合は、取得後の使用可能年数を見積もって耐用年数とします。
【中古物件の耐用年数計算例】
法定耐用年数30年、経過年数10年の中古資産を簡便法により計算した場合の耐用年数
(1) 法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数
30年 - 10年 = 20年
(2) 経過年数10年の20%に相当する年数
10年 × 20% = 2年
(3) 耐用年数
20年 + 2年 = 22年
3.築年数の経過によって家賃収入が減少する
経年による空室率の上昇や家賃下落が原因の3つ目となります。
新築で購入した不動産投資物件でも、築年数が経てば入居付けがむずかしくなり空室期間も増えてきます。
入居付けのためには家賃額を引き下げることもあるため、実際に入ってくる家賃収入が減少するため、デッドクロスに陥りやすくなるのです。
不動産投資で起こるデッドクロスの9つの対処方法!
1.物件の購入時に頭金の割合を増やす
不動産物件購入時にできるだけ多くの頭金を入れて不動産投資ローンの借入額をおさえる方法です。
借入額を減らすことで毎月の返済が減り、借入期間も短くできるため、デッドクロスになりにくい状況をつくることができます。
2.残存耐用年数が長い新築や築浅の物件を購入する
新築物件であっても経年とともに減価償却費は減っていきますが、減価償却期間が短い中古の築古物件は、それだけデッドクロスに陥りやすくなってしまいます。
デッドクロスを避けるのであれば、減価償却期間が終わるまでにローン返済を終了できる物件を購入しましょう。
ただし、減価償却期間が長くなれば初期の節税効果は低くなるため、物件の減価償却期間と借入期間を比較し、バランスのよい物件を選ぶことが重要です。
3.ローン返済を元金均等返済方式にする
元利均等返済方式の場合、初期は利息部分が大きいため経費にできる額が増えますが、後半は経費にできる利息部分が減り経費にできない元本部分が増えるため、デッドクロスに陥りやすくなります。
そこで不動産投資ローンの返済を元金均等返済方式にすることも、デッドクロスを避けるための有効な手段のひとつです。
4.高利回り物件を購入する
直接的なデッドクロスの対処方法ではありませんが、できるだけ実質利回りが高い物件を購入し、税引き前の家賃収入額を増やしましょう。
家賃収入の額が増えれば、税引き後のキャシュフローを赤字にするのを防ぐこが可能になります。
そのためにも、不動産物件を購入する前にどの程度の利回りであればデッドクロスを避けられるか、または最小限の被害で抑えられるかについて、しっかりと収支シミュレーションすることが重要です。
5.自己資金を貯めておく
デッドクロスの発生を想定したうえで、あらかじめ自己資金を貯めておくことでデッドクロスが発生した場合の対処が可能です。
デッドクロスを乗り切るためにいくらくらいの資金が必要なのかについては、不動産物件購入前のローン返済額や減価償却費、経年による空室リスクや家賃下落リスクなどを含めた収支シミュレーションをしっかりとおこないましょう。
6.ローンの借り換えや借入期間を延長する
キャッシュフローの悪化を防ぐために、金利の低いほかの金融機関にローンの借り換えを打診してみましょう。
うまくいけば総返済額を減らすことができるので、デッドクロスを防ぐことが可能になります。
また、返済期間を延長することで毎月のローン返済額が減るため、キャッシュフローがよくなります。
ただし返済期間が長くなり、返済総額が増えることもあるため注意が必要です。
7.繰り上げ返済をする
手持ちの資金に余裕がある時点で、ローンの繰り上げ返済をおこなって毎月のローン返済額を減らしてもよいでしょう。
また、繰り上げ返済でローンを完済できれば、ローン返済分のお金を資金として貯めておくことも可能になりますし、売却しやすかったり、新たな物件を購入する際の担保をして有利な条件で融資を受けやすくなる可能性もあります。
8.新たに不動産物件を購入する
デッドクロスが起こるタイミングで新たに減価償却期間が長い不動産物件を購入し、経費計上できる原価償却費を増やして節税する方法も有効な手段です。
ただし、新規物件を購入するには頭金の用意や不動産投資ローンの借入総額が増えるため、資金繰りをしっかりとシミュレーションしたうえで実行する必要があります
9.デッドクロスが発生した物件を売却する
デッドクロスが発生した物件を赤字のまま所有するのであれば、思い切って売却するのもよいでしょう。
とくに地価の上昇などで売却益が見込めるのであれば、よい出口になります。
しかし、逆に売りたくても買手が付かない場合も考えられるため、あらかじめどのタイミングで売却するのか、しっかりとした出口戦略を立てておくことが大事です。
また、不動産物件の売却には譲渡所得にかかる所得税や住民税、仲介手数料などの費用がかかるためあらかじめ費用額を算出したうえで検討する必要があります。
まとめ
不動産投資のデッドクロスによってキャッシュフローが悪化する原因には、経費計上できる減価償却費やローン利息の減少、築古になることで起きる空室や家賃下落リスクに原因があげられます。
そんなデッドクロスの対処方法には、頭金の増額や繰り上げ返済などでローン借入総額を減らしたり、借入期間を延長したりすることが有効です。
また、物件を購入する際にも、できるだけ高利回り物件を選ぶ、ローンの返済を元金均等返済方式にするなども効果があります。
いずれにしても、デッドクロスの発生とその対処を視野に入れた綿密なシミュレーションをおこなうことが、不動産投資の成功につながります。