不動産投資でクーリングオフの条件と手続き方法を解説!
「営業マンのセールストークにのせられて不動産投資物件を契約してしまった」
「知り合いの紹介で断り切れず不動産物件を買ってしまった」
実際に不動産売買契約を結んだのちに契約を解除したくなった場合、どのように契約解除をおこなえば良いのでしょうか?
じつは不動産投資の場合でも、条件次第でクーリングオフが可能です。
今回は、不動産投資物件の売買契約をクーリングオフするための条件と手続き方法を中心に解説します。
欲しくもない不動産投資物件の支払いをおこなわないためにも、売買契約解除の方法をしっかりと学びましょう。
クーリングオフ制度とは?
クーリングオフ制度(以下クーリングオフ)とは、契約申込みや締結した契約に対して「一定の期間内に意思表示をすることで、損害賠償又は違約金を支払うことなく申込みの撤回や契約の解除ができる」制度です。
これは、訪問販売や電話販売、マルチ商法など悪徳業者による消費者への被害をおさえるためにできた制度で、最近では知名度もあがり、多くの人がクーリングオフを利用して意に沿わない契約を解除するのに役立っています。
ただしクーリングオフできる取引内容や期間には条件があります。
その条件に当てはまらない場合はクーリングオフ対象外となるため注意が必要です。
参考:国民生活センター
不動産投資売買契約のクーリングオフは可能!
不動産投資物件の売買契約のクーリングオフは「宅地建物取引業法(宅建業法)第37条の2(第1項)」において法的に認められているため、諸条件を満たしていればクーリングオフが可能です。
ただし、クーリングオフの対象となるのは「宅地又は建物の売買契約」のみとなるため、賃貸契約についてはクーリングオフの対象外となります。
不動産投資でクーリングオフできる5つ条件を解説
ここでは、不動産投資の契約でクーリングオフできる条件についてまとめました。
1.宅地建物取引業者(宅建業者)が売主であること
ひとつ目の条件は、「宅建業者が売主で、非宅建業者が買主あること」です。
たとえば、宅建業者同士の不動産売買契約の場合はクーリングオフの対象外となります。
また、売主が宅建業者以外(個人や法人)の場合もクーリングオフの対象外となるので、不動産売買契約を締結する際には注意が必要です。
2.事務所や関連建物以外で契約を結んでいること
ふたつ目の条件は、「どこで売買契約を締結したか」になります。
上記の宅地建物取引業法(宅建業法)第37条の2(第1項)では、「その会社の事務所や関連建物以外の場所」で契約を締結した場合は、クーリングオフの対象になるとあります。
ようするに、「その会社の事務所や関連建物以外の場所(自宅や勤務先、喫茶店など)」で売買契約を締結した場合は、冷静ではない状態で不動産売買契約がおこなわれたと判断されるため、クーリングオフの対象となるのです。
なお「その会社の事務所や関連建物(宅建業者の事務所やモデルルームなど)」に買主が自ら赴き、不動産売買契約を締結した場合は、冷静に不動産売買契約がおこなわれたとみなされクーリングオフの対象外となります。
また、買主の希望によって自宅などで不動産売買契約を締結した場合も、冷静だったと判断され、クーリングオフの対象外とされるため注意が必要です。
3.クーリングオフの説明を受けてから8日以内
3つ目の条件は、クーリングオフ(契約解除について)の説明を受けてから8日以内に契約解除の手続きをおこなうことです。
ただし、契約締結時にクーリングオフについての説明を受けていない場合は、期限の縛りはなくなるため、いつでもクーリングオフ手続きが可能です。
なお、クーリングオフの意思表示は書面でおこなう必要がありますが、ここで言う8日以内とは、売主に書面が到達した日ではなく、買主が書面を発行した日になります。
クーリングオフ申込みの書面については、下記「クーリングオフの手続き方法」の項で詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。
4.代金を支払っていないこと
不動産売買契約が締結されても、代金の支払いをしていない場合はクーリングオフの対象となります。
通常、不動産物件の購入には不動産投資ローンを利用する場合がほとんどですが、融資の本審査は不動産売買契約を結んだのちに申込みます。
そのため、上記の「8日以内」であればクーリングオフする時間は十分にあると考えられます。
ただし、現金一括など売買契約締結直後に支払いが済んだ場合は、クーリングオフ制度の対象外となります。
5.物件の引き渡しがされていないこと
物件の引き渡しがおこなわれる前であれば、クーリングオフの対象となります。
通常の場合、物件引き渡しは融資審査が通った後におこなわれるため、上記の代金を支払っていない場合同様、クーリングオフが可能です。
クーリングオフの手続き方法
ここでは、一般的なクーリングオフの手続きについてまとめました。
自力でおこなうなら内容証明郵便がおすすめ
クーリングオフの手続きは、かならず書面でおこないます。
ハガキなどでも問題ありませんが、不動産投資物件のように高額な契約に係わる場合は「内容証明郵便」を利用するとよいでしょう。
内容証明郵便は、「誰が誰宛に・いつ・どのような内容の手紙を送ったか」を郵便局が証明してくれる郵便物です。
宛名の相手に直接手渡しで配達されますし、本人が受け取りを拒否しても手紙を出したという記録が残り、クーリングオフの意思表示を書面で送付したという証拠になります。
ただし、相手が不在の場合は直接手渡し配達ができないため、不在期間を経過すると差出人に戻ってしまい、配達されたという事実にはならないため注意しましょう。
内容証明郵便を作成するうえでの注意点
内容証明郵便を作成する際には、以下のように行数や文字数、使用できる文字の種類など明確な書式ルールがあるので作成時には注意が必要です。
- 縦書きの場合は、1枚当たり1行20文字以内26行以内で記載する
- 横書きの場合は、1枚当たり1行20文字以内26行以内、1行26字以内20行以内、1行13文字以内40行以内のいずれかで記載する
- 使用できる文字は、ひらがな・カタカナ・漢字・数字、英語で使用できるのは固有名詞のみ
見本引用:『経済産業省 東北経済産業局』
パソコンでWordなどを使えば簡単に文書の作成ができますが、自信がない場合は、文房具店で「内容証明郵便用紙」を購入し、そちらを使用してもよいでしょう。
また、封筒の宛名と書面の宛名が異なる場合は、郵便局で内容証明郵便として受け付けてもらえません。
そのため、封筒と書面の宛名に間違いがないよう、しっかりと確認をおこないましょう。
専門家に手続き代行を依頼する
自力でクーリングオフの手続きをする自信がない場合は、クーリングオフ代行をあつかっている法律事務所や行政書士事務所に依頼するとよいでしょう。
料金はかかりますが、取引金額の大きな不動産投資物件の契約解除を確実におこなえるのであれば、依頼するのもひとつの手段です。
クーリングオフの対象外で契約解除したいときは?
クーリングオフできる条件を満たしていない場合は、クーリングオフの適用外となります。しかし、どうしても契約を解除したい場合は手付金を放棄して「手付解除」する方法があります。
一般的に不動産売買契約時には手付金を支払います。
クーリングオフであれば、その手付金は返還されますが、買主の都合で契約を解除する場合は、手付金は没収されてしまいます。
手付金を失うことで金銭面では損をしますが、不要な不動産投資物件の高額な支払いを続けることを考えれば、手付金をあきらめたほうが、のちのち得につながると考えられるため、検討する余地はあると思われます。
まとめ
不動産投資でクーリングオフすることは可能ですが、そのためには5つの条件を満たしていることが必要となります。
もし、条件を満たしていない場合は、支払った手付金を放棄する「手付解除」で契約を解除するしかありません。
クーリングオフにしろ、手付解除するにせよ、一度締結した不動産売買契約を解除するには手間や時間、お金がかかります。
間違った契約を結ばないためにも不動産売買契約書に署名捺印をする前に今一度、「この不動産投資物件を購入してもよいかどうか」冷静に考えることも重要です。