不動産投資のサブリース契約にメリットはある!契約前にリスクを把握
オーナーが所有する不動産投資物件をサブリース業者が丸ごと賃貸し、入居者を募集・転貸する「サブリース契約」は、空室対策や家賃滞納対策として、オーナーにとって大きなメリットになります。
しかし、「保証されていた家賃が払われない」「解約しようとしたら違約金を請求された」といったトラブルが発生し社会問題として取り上げられたことから、「サブリースは儲からない」「デメリットしかない」といったネガティブなイメージが強くなってしまいました。
そこで国土交通省は、サブリース契約に関して重要な契約内容をオーナーが正しく理解できるよう、契約締結前に「重要事項説明書の交付」および「重要事項説明」を義務づけました。
(「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」令和2年12月15日施行)
こうしてオーナーはサブリース契約についてのメリットとデメリットを把握することで、契約する・しないかの判断が可能となったのです。
今回はサブリースについてのメリットおよび把握すべきデメリット(リスク)、そしてサブリース新法についてまとめました。
正しいサブリースの活用に向けて、ぜひ当記事を参考にしてください。
サブリース契約とは?
オーナーが所有する賃貸物件をサブリース業者(不動産管理会社)が丸ごと借り上げて、入居者募集・転貸する賃貸契約方法のひとつです。
空室のあるなしに関係なくサブリース業者は、取り決めたとおりの賃料をオーナーに保証・支払うため、不動産オーナーは空室リスク・家賃滞納リスクを気にせずにすみます。
また、サブリース業者側にとっても通常の管理委託料が賃料の5%~8%のところ、サブリース契約では賃料の10%~20%が得られます。
このように、本来のサブリース契約とは、上手に活用すればオーナー側・サブリース業者側、それぞれがwinwinとなれる契約方法のひとつなのです。
トラブルが起こる問題点
本来であれば不動産オーナー、サブリース業者ともにメリットのあるサブリースですが、過去には多数のトラブルが報告されています。
トラブル内容は、おもに以下のような「契約時に聞いた内容と違う・聞いていない」というオーナー側からの訴えが多くみられました。
- 保証賃料の見直しがおこなわれることを知らず、契約時の賃料がずっと保証されると思っていた
- 途中で契約解除される可能性があることを知らなかった
- 契約解除には違約金が発生することを知らなかった
- 原状回復費用や修繕費用負担の範囲や業者の指定をオーナーができないことを知らなかった
これらトラブルの原因の多くは、サブリース業者による契約内容の説明が不十分だったり、故意に説明されていなかったことです。
また「ずっと保証賃料は変わらない」など虚偽の内容をオーナーに伝える悪徳業者の存在が考えられます。
その一方で、契約書にはこれらの項目が記載されていることから、オーナー側の契約書の確認不足も理由と考えられました。
こんなトラブル事例も!建築目的の勧誘には要注意
一時期、「空いている土地にアパートを建てれば家賃を保証する」というサブリース業者や不動産会社の勧誘を受け、郊外に多数のアパートが建築されました。
しかし、それらアパートの立地は賃貸需要が少なく、入居付けのむずかしい土地です。
サブリース契約と新築物件がセットで販売されるのは珍しくありませんし、建築を請け負う建築会社が指定されることもよくあります。
物件建築後、しばらくのあいだは契約どおりに保証した賃料が支払われましたが、やがて契約書に記載されたとおり、家賃の見直しがおこなわれます。
もともと賃貸需要が少ない立地ですから入居者がつかず、空室の増加を理由に保証賃料の引き下げがオーナーに通告されます。
「それじゃ、サブリース業者も儲からないのでは?」と考える人も多いかもしれませんが、サブリース会社(建築会社)は、アパート建築時に割高な建築工事費用で利益を得ているため、サブリース面では損をしません。
結局、高額な建築費用の支払いだけが残り、オーナーの負債が増えることになったのです。
このときも、保証賃料の見直しなどの説明がオーナーにされなかったこと、また同様の手口で負債を抱えたオーナーが多かったことから一気にサブリース問題が表面化し、大きな社会問題に発展しました。
このように、説明不足に加え、「建築工事費用目当てのサブリース勧誘」といった手口もあるため、賃貸需要を見込めるかどうかの判断も慎重におこなう必要があります。
サブリース新法の施行で重要事項説明が義務化
サブリース契約を結ぼうとする不動産物件所有者のなかには、不動産投資初心者の人も多く、不動産に関する専門知識が少ないこともしばしばです。
サブリース契約にまつわるトラブルのなかには、このような不動産投資・経営に不慣れな人をターゲットにして、故意に契約内容の説明をしなかったり、口頭で虚偽の約束をして契約を結ぶ不誠実なサブリース業者が存在しました。
そこで国土交通省は、サブリース契約を含む賃貸管理業務に関連するトラブル防止策として令和2年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(サブリース新法)を交付しました。
そのなかの、「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(令和2年12月15日施行)によって、サブリース契約前にはサブリース業者による不動産オーナーへのサブリース契約の重要事項を理解してもらうために「重要事項説明書」を交付し説明することを義務づけたのです。
なお、重要事項説明で説明される項目は、おもに以下の内容になります。
- 契約期間について
- 保証賃料の額やその根拠(周辺競合物件の家賃相場等)の説明
- 保証賃料の見直しについて(期間やタイミング)
- 免責期間について
- 修繕費等にかかる費用の負担について
- 契約の更新と解除について ほか
これによってオーナーは、重要な契約内容について理解したうえでサブリース契約を結ぶことが可能となりました。
不動産投資でサブリース契約をする4つのメリット
上記の「サブリース新法」の施行で契約しやすくなったサブリース契約。
では、どのようなメリットがあるのでしょうか。
管理業務全般を任せられる
不動産賃貸経営では、入居付け、入退去管理、家賃管理、退去後の原状回復、建物のメンテナンスなど多岐にわたる管理業務が必要です。
上記の不動産賃貸管理業務を含め、入居者間のトラブルなど、サブリースでは管理業務全般を任せることが可能です。
そのため、副業として不動産投資をおこなうサラリーマンの人でも、通常の不動産管理を委託するよりも、時間や手間の負担を受けずにすみます。
規模の大きな賃貸物件は特におすすめ
区分マンションや戸数の少ない一棟アパートなどは、自主管理や通常の管理委託でも十分業務をまわすことは可能です。
しかし、数十戸を超えるような規模の大きな賃貸物件は、所有者であるオーナーの管理業務をする手間がぐっと簡便になるため、サブリース契約も検討をおすすめします。
空室対策や家賃滞納対策になり、収入が安定する
不動産賃貸物件を丸ごとサブリース業者に貸し出すことで、空室のあるなしに関係なく賃料が保証されます。
そのため物件オーナーは、空室リスク・家賃滞納リスクを気にせず安定した収益を得られます。
当然ですが、通常は空室がつづくかぎり家賃は入ってきません。
また、家賃滞納が発生すれば、その間の家賃が入らないばかりか退去問題などで時間や費用がかかることも予想されますが、サブリース契約ではそういった心配をせずにすむのです。
広告料・原状回復などの費用負担が減る
一般的な賃貸経営では、優先的に入居付けをしてもらうために不動産仲介業者に「広告料(家賃の1~2か月分)」を仲介料とは別途支払うことがあります。
しかし、サブリース契約の場合は、入居付けも契約に含まれるため広告料は不要です。
また、退去後の原状回復費用はサブリース業者側が負担するため、所有者であるオーナーの金銭的負担が軽減します。(オーナー負担の可能性もあり)
確定申告が簡単におこなえる
確定申告では、家賃額が部屋ごとに異なったり支払った費用などがまちまちだったりと、都度計算したものをまとめて確定申告しなくてはなりません。
しかし、サブリース契約は毎月入ってくる賃料が一定額なため、確定申告書類の記載や計算が簡単におこなえます。
確定申告が簡単におこなえる
通常の不動産賃貸経営の確定申告では、家賃額が部屋ごとに異なったり支払った費用などがまちまちだったりと、都度計算したものをまとめて確定申告しなくてはなりません。
しかし、サブリース契約していれば、毎月入ってくる賃料が一定額なため、確定申告書類の記載や計算が簡単におこなえます。
サブリース契約5つのデメリット
管理不要、賃料保証などのメリットがありますが、もちろんデメリットも存在します。
しかしデメリットの多くは、契約前の「重要事項説明」で内容をしっかり把握・納得したうえで契約を結ぶことで、不動産オーナーにとって不利な契約を交わす確率を低減できます。
賃料は定期的にみなおされる
保証された賃料を毎月得られるサブリース契約ですが、通常、賃料は定期的に見直しがおこなわれることが契約に含まれているため注意が必要です。
経年劣化などで入居率が低下した場合や競合物件の家賃相場下落などにともない、保証される賃料の減少が考えられます。
「重要事項説明」時には、以下の点を確かめましょう
- 家賃額見直しの有無
- 家賃額見直しの時期やタイミング
- 見直した家賃額の根拠の説明等
通常の賃貸経営と比べて収益が少なくなる
通常、物件オーナーが得られる敷金や礼金ですが、サブリース契約ではサブリース業者側が受け取ります。
また保証賃料は、通常の賃貸経営時の家賃額の80%~90%程度が多く、オーナー側の収益は少なくなることが予想されます。
入居付けのための免責期間中は賃料が保証されない
通常、賃貸経営では入居者が入居した時点から家賃が発生し、オーナーは家賃を受取ることができます。
しかしサブリース契約では、新築物件や退去後の入居付け期間中を「免責期間」としている可能性がありますが、この免責期間中(1ヶ月~半年程度)は賃料の保証はされません。
免責期間があることを知らずに契約してしまうと、想定していた収益が減ってしまうため、「重要事項説明」で免責期間の有無や長さをしっかり確認しましょう。
途中解約で違約金が発生する可能性がある
なんらかの理由でオーナー側からサブリース契約の解除を申し出た際には、契約内容によって、違約金などが発生することもあるので注意が必要です。
サブリース契約は借地借家法によって、借主であるサブリース業者が保護されるため、貸主であるオーナー側からは簡単に契約解除できないのが実状です。
そのため、解約不可期間の有無や長さ、解約できる条件、解約予告の有無などを「重要説明事項」で確認しておきましょう。
入居者を選べない
一般的な賃貸経営では入居者の最終的な選定はオーナーがおこないますが、サブリース契約の場合は、入居者についてオーナーへの報告等がおこなわれないことがほとんどです。
そのため、好ましくないタイプの人が入居してしまい、隣人トラブルやモラルの低下といった入居付けに影響をおよぼすことが考えられるため注意しましょう。
不動産投資のサブリース契約で失敗しないために!3つのポイント
サブリースで失敗しないためには、契約締結前におこなわれる「重要事項説明」の項目を含め、以下の3点をチェックすすることをおすすめします。
契約書の内容を細かくチェック
下記の項目は、サブリース契約前の「重要事項説明」で説明されるため、もし疑問点や不明点があれば、うやむやにせず、しっかりと確認し納得したうえでサブリース契約を結ぶことが重要です。
- 保証賃料の割合が適切か
- 家賃見直し期間、見直し条件の確認
- 免責期間について
- 契約更新、解約条件について
- 広告費用・原状回復などの費用負担について
広告費用や原状回復費用について、多くの場合はサブリース業者が負担していますが、契約によって異なります。
そのため、サブリース業者とオーナーで各種費用(通常の故障か? 経年劣化か? などで修繕費を分担するしないなど)の負担がどのようになっているのか確認しましょう。
また、修繕を委託・施工する業者の指定方法も確認しておくとよいでしょう。
サブリース会社の信用度をチェック
信用度の高いサブリース業者を選ぶことも重要です。
過去にサブリース契約で問題を起こしていないか、サブリース契約の実績、利用者の口コミなどをチェックして評判のよい会社を選びましょう。
また、サブリース契約中に会社が倒産してしまった場合、保証賃料が支払われなくなってしまうため、サブリース会社の経営状態の確認は非常に大事です。
万が一、サブリース会社が倒産した場合は、入居者と通常通りの賃貸借契約を結んで賃料を得ることは可能ですが手間や時間がかかります。
物件の収益性をチェック
不動産投資で成功するには、どれだけ優良な不動産投資物件を選ぶかにかかっています。
立地や周辺の競合物件の入居率、家賃相場などを吟味したうえで、入居者に選ばれる物件を選びましょう。
賃貸需要の低い立地や条件が悪い物件では入居者がつかず、賃料の見直しにともなって賃料が下がってしまう可能性が高くなり、結局はオーナーの負担が増えてしまいます。
物件購入にあたっては、厳しい収支シミュレーションをおこない、安定したキャッシュフローを得られる物件を購入してください。
まとめ
サブリース契約のメリットは、不動産投資に必要な管理業務全般をサブリース業者に任せながら、安定した保証賃料を毎月得られることです。
またサブリース契約で起きたトラブルのほとんどは、サブリース業者の説明不足などが原因で「サブリース」そのものが悪いわけではありません。
なお、「サブリース新法」の施行により、契約前の「重要事項説明」が義務づけられたことでオーナーが理解したうえでサブリース契約を結びやすい仕組みになりました。
ぜひ、この記事を参考に、サブリース契約のメリットを享受していただけたらと思います。