不動産投資で会社設立のメリット・デメリット!法人化の流れも紹介
2021/07/12

不動産投資で会社設立のメリット・デメリット!法人化の流れも紹介

不動産投資で会社設立!法人化はこんな人におすすめ不動産投資を拡大したい人将来的に不動産の相続を予定している人事業を拡大する予定がないなら個人のままという選択肢も不動産投資で会社を設立するタイミングは?不動産投資で会社を設立するメリットとデメリット会社設立で得られるメリット会社設立のデメリット「株式会社」と「合同会社」を比較株式会社の設立費用目安は?株式会社のメリットとデメリット合同会社の設立費用目安は?合同会社のメリットとデメリット会社設立の流れを紹介!基本事項を決定する印鑑をつくる定款の作成・認証資本金を払い込む設立の登記申請サラリーマンが会社を設立する際には注意が必要!まとめ

不動産投資の家賃収入が増えてくると、個人よりも節税効果が高い会社設立(法人化)も視野に入ってきます。

もし、今後も不動産投資を拡大していきたいと考えているのであれば、会社設立は心強い存在になるでしょう。


しかし、会社設立には多くのメリットがある反面、しっかりと把握しておくべきデメリットも存在します。


そこで今回は、不動産投資においての会社設立のメリットとデメリットについてまとめました。

また、会社を設立するための流れについても紹介します。


会社設立を検討している人は、ぜひ参考にしてください。


不動産投資で会社設立!法人化はこんな人におすすめ


不動産投資で会社を設立すれば、たくさんのメリットを受けられます。

ここでは、不動産投資を有利にすすめるためにも法人化したほうがよいのはどんな人なのかについてまとめました。


また、法人化せずに個人のままで不動産投資をおこなったほうがよい人についても例をあげたので、自分がどちらにあてはまるか参考にしてください。


不動産投資を拡大したい人


すでに不動産投資をはじめている人も、これからはじめる人も、本気で不動産投資を拡大していきたいと考えている人は、法人化することで社会的信用度があがり、金融機関からの融資を受けやすくなります。


将来的に規模の大きな不動産物件を複数購入したいのであれば、法人化することをおすすめします。


将来的に不動産の相続を予定している人


個人で不動産物件を所有している場合、所有者が亡くなると相続税が派生します。

また、相続人が複数いると不動産物件の分割で争いが起きることも少なくありません。


しかし、不動産物件が法人名義の場合は相続税の対象外となるため、個人に相続税がかからず、相続税対策につながります。


また、相続人を会社役員にして役員報酬を支払うことで、遺産分割で揉めることも少なくなります。


事業を拡大する予定がないなら個人のままという選択肢も


不動産投資規模を現状のまま維持したい、これ以上拡大する予定がない場合は、個人のままで不動産投資をつづけるのも一案です。


法人化するためには設立費用がかかりますし、経理会計処理などの事務処理も複雑になるため税理士や会計士などへの依頼で会社の維持コストもかかります。


下記で詳しく記載しましたが、年間の課税所得が900万円以下であれば、個人の所得税率と法人税率は同じくらいです。


そのため、会社設立の手間やコストを考えると、無理に法人化せず、現状を維持することに注力してもよいかもしれません。


個人事業主について詳しくはこちら!>>不動産投資で節税するなら個人事業主がおすすめ!法人化も視野に


不動産投資で会社を設立するタイミングは?


ビジネス 電球 タイミング

不動産投資を法人化するベストなタイミングは、ふたつあります。


まずひとつめは、不動産投資を開始するタイミングです。

この場合、会社を設立したうえで、法人名義で不動産用投資物件を購入・運営することになります。


これは、将来的に本格的な不動産投資を視野に入れている場合、初期段階で賃貸経営の実績をつくることで、のちのち数億円規模の収益物件の融資を受けやすくなるのがメリットです。


また、個人から法人化に切り替えるよりも会社設立費用が少なくてすむため、いずれ法人化する予定であれば費用削減につながります。


ふたつめは、個人の所得税率より法人の税率が低くなったタイミングで法人化することです。


個人の所得税率

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円超え 330万円以下

10%

97,500円

330万円超え 695万円以下

20%

427,500円

695万円超え 900万円以下

23%

636,000円

900万円超え 1,800万円以下

33%

1,536,000円

1,800万円超え 4,000万円以下

40%

2,796,000円

4,000万円超え

45%

4,796,000円

参考:国税庁



法人税率票(資本金1億円以下の法人の場合)

普通法人

全て

23.90%

中小法人

所得が年800万円相当額以下

15.00%

所得が年800万円相当額超

23.90%

参考:国税庁


上記の表を比べると、個人の課税所得額が900万円以下の所得税率は23%ですが、900万円を超えると所得税率が33%になります。


法人税の場合は最高でも23.90%なので、課税所得が900万円を超えるようであれば、所得税を少なくするためにも法人化がお得と言えます。


不動産投資で会社を設立するメリットとデメリット

メリット デメリット 比較

会社を設立して不動産投資をおこなう場合、節税できることが最大のメリットになりますが、法人化するにあたって会社設立の手続きや事務処理の複雑化などのデメリットも存在します。


会社設立で得られるメリット


法人化最大のメリットは、節税できる幅が広がることと信用度があがり融資を受けやすくなるなどがあげられます。


課税所得額によっては個人より法人の税率が低い

上にも書いたように、個人より法人税率が低くなるタイミングで会社を設立することで、所得税の支払いを少なくすることができます。


経費計上できる幅が広い

会社では、個人と比べて経費計上できる費用が大幅に増えます。


たとえば、家族を役員にして支払った役員報酬や退職金といった人件費、生命保険料(年間保険料30万円以内)、社用車の購入・維持費、会社に関係する交際費も一定金額までは経費として認められます。


これらの経費を上手に活用することで、法人税や法人住民税をおさえることが可能です。


赤字の繰越期間が長い

赤字決算になった場合、法人の場合は繰り越し期間が最長10年と長いです。

個人事業主の青色申告の場合は3年かんだったので、これは法人化の大きなメリットになります。


信用度が上がるので融資を受けやすくなる

個人に比べて法人は信用度が高くなります。

また会社で不動産物件を購入して賃貸経営をおこなうことで、金融機関から事業として見てもらえるようになり実績も示せるため、個人ではむずかしい高額な不動産物件の融資も法人は受けやすいです。


また、個人の場合は寿命があるためローン完済までの年齢制限が決まっていますが、会社には寿命がないため、金融機関も積極的に高額な融資をしてくれます。


減価償却費を任意償却できる

法人の場合、減価償却する金額を任意で決めることができます。


収支状況によって減価償却費をコントロールすることが可能なので、たとえば、利益が大きくなった年は経費として減価償却費を多く計上することで支払う税金を少なくことができます。


個人の場合は経営状況にかかわらず毎年減価償却費を計上する必要があるため、これは法人ならではメリットです。


短期売却の場合は個人より有利

個人で不動産物件を売却し利益が出た場合、所有していた期間によって売却時の譲渡税率が異なります。


個人の場合は、1月1日時点で所有期間が5年以内の場合を短期譲渡といい税率が約39%、同5年超を長期譲渡といい税率は約20%(+復興特別所得税)。


法人の場合は所有期間による税率の違いはないため、5年以内に売却しても税率は30%前後です。


そのため、不動産物件を短期譲渡する場合は法人が有利になります。

逆に、不動産物件を長期所有しても優遇税制は利用できないので注意が必要です。


会社設立のデメリット


ここでは会社を設立するにあたってのデメリットをまとめました。


会社設立のための手続きや費用が必要

下記にまとめたように、会社を設立するには所定の手続きが必要になりますが、個人で作成するのがむずかしい定款なども多く、手間や時間がかかります。


また、下記に記載したように会社設立費用も必要です。


自分で手続きをするのが困難な場合は、料金はかかりますが、時間や手間を省くために司法書士など専門家に依頼を検討するとよいでしょう。


会社の維持に費用がかかる

個人で不動産投資をするのに比べると、会社の経理・会計業務などは複雑です。

そのため、会計士や税理士に決算書の作成や税務関連の処理を依頼する必要があるため、会社の維持費用が派生します。


赤字でも法人住民税を支払う必要がある

法人にかならず課税される「法人住民税均等割」。

収益が赤字の年でもかならず支払わなくてはならないため、ランニングコストとして把握しておきたい税金です。


法人住民税均等割は資本金額によって変動するため、会社設立時は注意しましょう。


「株式会社」と「合同会社」を比較


比較 どっち AとB

不動産投資で会社を設立する場合、「株式会社」か「合同会社」のどちらかが選ばれることが多いです。


それぞれどのような点が異なるのか、設立にかかる費用やメリット・デメリットをまとめましたので、法人化を検討するうえで参考にしてください。


株式会社の設立費用目安は?


株式会社の設立には以下のような「法定費用」が必要となります。


定款認証手数料 

52,000円

定款用印紙税  

40,000円

登録免許税    

150,000円(または資本金額の0.7%のうち高いほう)

合計 

242,000円


なお、電子定款を選択した場合は印紙税が無料になるので、費用を節約したい人におすすめです。


また、上記以外にかかる費用として、会社実印・銀行印・角印の作成代金、印鑑証明など提出用書類の発行手数料が発生します。


法定費用とあわせて、30万円を目安に準備しておけばよいでしょう。

(手続き等を専門家に依頼した場合は、別途報酬が必要になります)


株式会社のメリットとデメリット


株式会社のメリットは、なんと言っても知名度の高さにあります。

「株式会社」の社会的認知度は高く、しっかりとしとした「会社」としての安心感と信頼感を与えます。


また株式会社は、株式を発行し株主を募り出資してもらうことで資金の調達が可能です。


デメリットは、株式会社の設立費用は合同会社に比べて高くなることがあげられます。

決算についても、毎年決算期ごとに業績を報告する義務があり、また「官報」に決算内容を掲載するため、掲載料が必要になります。


さらに、株式会社役員の任期は最長10年ですが、同じ人が再任した場合もあらためて登記する必要があるため登録免許税がかかります。


以上のように株式会社のメリットは社会定期知名度や信頼度が高いこと、デメリットは設立・維持費用がかかることがあげられます。


合同会社の設立費用目安は?


合同会社の設立には以下のような「法定費用」が必要となります。


定款用印紙税 

40,000円

登録免許税    

60,000円(または資本金額の0.7%のうち高いほう)

合計 

100,000円


合同会社の場合、公証人による定款の認証が不要ですし、登録免許税も株式会社設立に比べて半分以下と安いです。


株式会社同様、電子定款を選択した場合は印紙税が無料になるので、さらに安くすみます。


上記以外に会社実印・銀行印・角印の作成代金、印鑑証明など提出用書類の発行手数料を含めても、15万円程度を準備しておけばよいでしょう。


(手続き等を専門家に依頼した場合は、別途報酬が必要になります)


合同会社のメリットとデメリット


合同会社のメリットは、設立費用等が安くすむことです。

株式会社と違って決算の報告義務もありませんし、役員の任期も設けられていないので、それらにかかる費用は発生しません。


また合同会社は、経営の自由度が高いのが特徴です。

出資比率に関係なく利益配分ができますし、定款の内容も株式会社に比べると自由に作成することが可能です。


反面、デメリットとしては、「合同会社」の認知度の低さがあげられます。

そのため、会社間の取引ができなかったり、求人の応募が少ないなども考えられます。


また事業が大きくなっても、合同会社は上場することができません。

将来的に上場企業を目指すのであれば、株式会社を選択するとよいでしょう。


会社設立の流れを紹介!


印鑑 定款 株式会社

会社を設立すると決めたら、法人化の手続き内容を確認しておきましょう。


準備から会社設立までは10日~2週間程度かかりますが、場合によってはもう少し長くなることも考えられます。


なお一般的に、法人設立関係書類を法務局に提出し受理された日が「開業日」になります。

開業日にこだわりたいのであれば、間に合うよう余裕をもって準備をおこなってください。


基本事項を決定する


まずは、社名(商号)、本店所在地、事業目的、事業年度、資本金、発起人、役員といった基本事項を決めます。


印鑑をつくる


社名が決まったら、実印(代表者印)と銀行印、角印の印鑑をつくりましょう。

実印は登記や重要な契約に、角印は請求書や領収書などに使用します。

銀行印は会社の銀行口座開設時に必要です。


定款の作成・認証


定款とは、会社の基本的な規約や規則が記載されたものです。


書式は決まっていませんが、法律上かならず記載する必要のある項目などが決められていますし、不備があると認証してもらえないので注意が必要です。


法務局のHPにある定款のひな型を参考に作成するか、司法書士に作成を依頼するとよいでしょう。


作成が終わったら、株式会社場合は公証役場で公証人に定款の認証を受ける必要があります。

なお、合同会社は認証を受ける必要はありません。


資本金を払い込む


発起人(または代表者)の個人口座に出資金を払い込みます。

登記申請に必要になるので振込証明書を作成し、通帳のコピーと一緒に登記申請時まで大事に保管しておきましょう。


会社設立後、会社の銀行口座を開設したら資本金を会社の通帳に移します。


設立の登記申請


必要な種類を揃えたら法務局に提出し、設立登記の申請と法人実印登録をおこないます。


用意する書類は、株式会社か合同会社かによっても異なるため、提出書類がすべて揃っているか? 不備はないか? しっかりと確認してください。


登記が完了したら、会社の銀行口座を開設し、税務署や市町村役場、年金事務所などに設立を届け出ましょう。


サラリーマンが会社を設立する際には注意が必要!


不動産投資で会社を設立するにあたって気をつけたいのが、副業で不動産投資をおこなっているサラリーマンの場合です。


最近は副業を認める会社が増えていますが、もし公務員や金融機関に勤めている場合、副業が禁止だったり、事前に許可を取る必要があったりとルールが決められていることも。


そのため、会社を設立して代表取締役や代表社員になってしまうと、勤め先の会社に副業していることがわかってしまうことも考えられます。


一番よいのは、勤め先から許可を得たうえで会社を設立することですが、副業が禁止されていなくても副業や会社設立の事実を隠しておきたいこともあると思います。


そんなときは、家族や配偶者を法人の代表者として登記し、役員報酬を受け取る方法もあります。


ただし、その場合は家族や配偶者にしっかりと事業内容を理解してもらったうえで会社の代表者となってもらうことが重要です。


まとめ


不動産投資で会社を設立すれば、税制面で大きなメリットが期待できます。

これから本格的に不動産投資をはじめる人や、今後不動産投資を拡大したい人、すでに不動産投資で大きな収益をあげている人は、法人化を検討するとよいでしょう。


今回は会社設立にかかる費用や手順も紹介したので、ぜひ参考にしてください。


とはいえ、会社を設立するかどうかは、現在の不動産投資の状況と今後の展望を考慮したうえで慎重な判断が必要です。


いずれにしても、自分にあった不動産投資をおこない、満足できる利益を目指しましょう。

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