不動産クラウドファンディングの運用期間や不動産投資との違いを解説
「不動産クラウドファンディング」は、投資対象にさまざまな種類や規模の物件があり、少額の資金で不動産投資がおこなえることもあり注目を集めています。
そんな不動産クラウドファンディングの運用期間には、短期案件と長期案件があり、投資先を選ぶうえで重要なポイントのひとつです。
今回は不動産クラウドファンディングの運用期間について、短期と長期それぞれのメリットとデメリットを解説します。
また不動産クラウドファンディングと不動産投資やJ-REITとの違いについても紹介しています。
不動産投資を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
不動産クラウドファンディングとは
そもそもクラウドファンディングとは、「インターネットを使って、特定の事業に対して不特定多数の人から出資を募る仕組み」のことです。
そして、調達した資金の使い道が不動産に特化しているのが「不動産クラウドファンディング」になります。
不動産クラウドファンディングは、投資家から集めた資金をあらゆる不動産(マンションや商業ビル、ホテルなど)に投資し、その運用益や売却益が出資比率に応じて投資家に分配される仕組みです。
なお投資家から資金を募ることができるのは、「動産特定共同事業法」で認可された事業者のみです。認可事業者は集めた資金で不動産を購入し、運用・管理・売却などをおこないます。
不動産クラウドファンディングの特徴は、すべての手続きをインターネットのみで完結できる点です。
また投資した不動産物件の運用・管理は事業者がおこなうため、投資者には手間などが一切かかりません。
さらに不動産クラウドファンディングの最低投資額は1万円程度であり、自己資金が少ない人でも少額から投資がおこなえます。
このように不動産クラウドファンディング不動産投資が少額からおこなえて、インターネットのみで手続きができ、管理などの手間もかからない新しい不動産投資方法として多くの投資家から注目されているのです。
不動産クラウドファンディングの運用期間は2種類
新しい不動産への投資方法として注目されている不動産クラウドファンディングですが、
案件が募集される際には、すでに運用開始日及び運用期間が設定されています。
運用期間は、3ヶ月~1年未満の短期間と、1年~10年程度の長期間の2種類にわかれます。
不動産クラウドファンディングは、原則として定められた運用期間中に途中解約や売却することはできません。
運用期間中に解約ができる場合であっても、条件が設定されていたり、手数料が課せられたりするため、場合によっては大きな損失につながるケースもあります。
そのため不動産クラウドファンディングに投資する際は、運用期間を事前に確認しておくことが大事です。
不動産クラウドファンディングの短期運用のメリットとデメリット
ここでは不動産クラウドファンディングの運用期間が短期の場合のメリットとデメリットを解説します。
短期運用のメリット
投資リスクをおさえることができる
前述したように、不動産クラウドファンディングの多くは、運用期間内の契約解除や売却ができないか、または条件が設けられています。
そのため設定された運用期間が終了するまでは投資した資金を自由にすることはむずかしく、その間に経済状況などが大きく変化することがあれば大きな損失につながるケースもあります。
しかし運用期間が3ヶ月~1年未満の短期案件であれば、企業の経営状況や市況が大きく変化する可能性が低く、損失リスクを軽減できます。
出資金が手元に戻るのが早い
短期運用であれば、手元に出資金が戻るのも比較的早いです。そのため、新たな案件への出資もしやすくなります。
短期運用のデメリット
投資効率が悪くなる
不動産投資クラウドファンディングでは、投資先へ資金を入金してから実際に運用が始まるまでに時間がかかります。また運用終了後も、資金が戻ってくるまでに時間がかかります。
このように設定された運用開始までの期間や手元に資金が戻ってくるまでのあいだに運用できない期間が発生するため、投資効率が悪くなるのがデメリットです。
不動産クラウドファンディング短期運用の案件に投資する際は、運用開始までの流れと、運用終了後の流れを事前に確認したうえで投資をするかしないかの判断をおこないましょう。
すぐに次の投資先が見つかるとはかぎらない
運用期間が短期の案件の場合、投資効率を上げるためには、すぐに次の案件への投資をおこなう必要があります。
しかし投資をおこないたくても、条件に適した案件がすぐに見つかるとはかぎりませんし、よい案件が見つかっても、すぐに完売したり、抽選に外れたり、投資したくてもできないこともあります。
投資先が見つかるまでに時間がかかると、さらに投資効率が悪くなってしまいます。
また運用期間が3ヶ月~1年未満と超短期なため、運用が終わるたびに新しい案件を探さなければならず、それが手間だと感じる人も多いでしょう。
できるだけ自己資金を遊ばせておきたくない人は、短期運用よりも長期運用のほうが向いているかもしれません。
不動産クラウドファンディングの長期運用のメリットとデメリット
ここでは不動産クラウドファンディングの運用期間が長期の場合のメリットとデメリットを解説します。
長期運用のメリット
長期的に分配金を受け取れる
不動産投資クラウドファンディングでは、案件の運用期間中は毎月分配金が支払われることが多いです。そのため長期運用の案件は運用期間が長期になればなるほど利益が得られます。
投資にかかる手間が少ない
不動産クラウドファンディングでは、物件の運用や管理は事業者がすべておこないます。そのため投資家自身は、資金を提供したあとはなにもする必要がありません。
また長期運用の案件は、短期運用の案件のように新しい案件を探したり、申し込み手続きをおこなったりといった手間も不要です。
このように不動産クラウドファンディングの長期運用の案件は、時間や手間が少ないことがメリットになります。
長期運用のデメリット
経済状況などの影響を受けやすい
長期運用の不動産クラウドファンディングの案件では、経済状況や市場の変化によって損失を受けるリスクが高くなるため注意が必要です。
なぜなら運用期間が長期になるほど、経済状況や企業側の経営状況の変化などを予測することがむずかしくなるためです。
景気の落ち込みによる事業撤退や、案件の周辺環境の変化による不動産のニーズの低下などが起こる可能性もあり、これら変化の影響を受ければ損失につながるおそれもあります。
不動産クラウドファンディングで長期運用の案件に投資する際は、将来的な市況の変化なども含めて検討することが大切です。
資金の拘束が長い
前述したように、不動産クラウドファンディングの案件は原則として運用期間中の途中解約ができません。
急に現金が必要になったり、ほかに魅力的な案件を見つけたり、なんらかの理由で不動産クラウドファンディングに出資した資金を引き出したくても引き出せないのは、デメリットのひとつといえるでしょう。
不動産クラウドファンディングの長期運用の案件に出資する際は、途中解約ができないことを念頭においたうえで、今後の収支計画に影響のない範囲で出資額を決めるとよいでしょう。
不動産クラウドファンディングの運用期間を選ぶポイント
「結局、不動産クラウドファンディングの運用期間は、短期と長期どちらがいいの?」
前述したように、不動産クラウドファンディングの短期案件と長期案件にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
どちらに投資するか最終的には、資産計画や投資の目的や目標に合わせて選ぶことになりますが、投資に慣れていない初心者の人には、リスクが低い短期運用の案件をおすすめします。
ただし、収益で見た場合は長期案件に軍配があがります。できるだけ長期間にわたって利益を得たい人や、一定期間、投資資金を引き出せなくても問題のない人は長期案件をおすすめします。
不動産クラウドファンディングに出資する際は、投資の目的や資金の拘束期間などを考慮し、自分にあった運用期間の案件を選びましょう。
不動産クラウドファンディングと不動産投資の違い
ここまで不動産クラウドファンディングについて解説しましたが、同じように不動産を投資対象とした「(現物)不動産投資」とはどう違うのでしょうか。
ここでは、不動産クラウドファンディングと不動産投資の違いを比較しました。
不動産投資とは
一般的な不動産投資とは、現物不動産を購入し、第三者に賃貸して家賃を得たり、物件を売却して売却益を得たりする投資方法をいいます。
投資対象物件の選択肢や規模の違い
不動産クラウドファンディングの案件は、さまざまな種類や規模の不動産が投資対象となっています。
一般的な賃貸マンションもあれば病院や学校の案件もありますし、なかには数十億円規模の商業施設などが案件として扱われることもあるため、個人の投資家ではむずかしい高額物件に投資することも可能です。
一方、不動産投資の場合は個人で投資をおこなうため、投資できる物件の種類や規模には限りがあります。
個人が不動産投資をおこなう場合、物件購入費の大部分を金融機関の融資でまかないますが融資の上限額は年収の10倍が目安です。
病院や学校、超高額物件など、個人で投資するのがむずかしい案件に投資してみたいときは、不動産クラウドファンディングがおすすめです。
資金やリターンの違い
不動産クラウドファンディングでは、一口あたりの投資金額が数万円の案件もあり、少ない自己資金でもはじめやすいのがメリットです。
一方不動産投資は、物件価格の1割~3割程度を頭金として自己資金で支払い、残りの額は金融機関から融資を受けるのが一般的です。その際は、手続きにかかる諸費用として物件価格の5%~10%程度が必要です。
たとえば、1,500万円の区分マンションを購入する場合に必要な自己資金は最低でも225万円になります。
◦頭金:150万円(物件価格の1割)
◦諸費用:75万円(物件価格の5%)
数万円単位で投資できる不動産クラウドファンディングと比較すると大きな金額ですが、225万円で1,500万円の収益分を購入でき、レバレッジを効かせた投資がおこなえるのが不動産投資の最大のメリットです。
またローンを完済することで、1,500万円の物件が自分自身の財産となり、それ以降の家賃収入の大部分が収益となります。
投資効率を重視したい場合は不動産投資がおすすめです。
物件の選定や運用・管理の違い
不動産クラウドファンディングでは、投資家はインターネット上で案件に申し込むだけで、物件の選定や運用・管理は認可された事業者がすべておこなってくれます。
そのため投資家個人の手間や負担はほとんどありません。
一方で不動産投資の場合、物件選びから運用や管理は、基本的に大家さんがおこないます。
物件を探すために不動産会社を訪れたり、物件の現地確認をおこなったり、契約手続きなどもすべて大家さんがおこないます。
また運用についても、必要に応じてリスクヘッジをおこなったり、物件の清掃や修繕の手配をしたり、大家さんが担う管理業務は多岐にわたります。
そのため大家さんの負担を減らすために管理業務の全般を不動産管理会社に業務委託することも可能です。その場合は業務委託料として、賃料の5%~8%/月が発生します。
物件探しや運用や管理の手間を省きたい人には不動産クラウドファンディングが向いているでしょう。
不動産クラウドファンディングとJ-REITの違い
不動産クラウドファンディング同様、少額から始められる不動産投資として人気なのが「J-REIT(ジェイリート)」です。
ここでは、不動産クラウドファンディングとJ-REITの違いを比較しました。
J-REIT(ジェイリート)とは
J-REITとは、不動産専門の投資信託です。日本では海外REIT(Real Estate Investment Trust)と区別するため、JAPANの「J」を頭につけて「 J-REIT(ジェイリート) 」と呼ばれています。
J-REITは、複数の投資家から資金を募り、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する仕組みです。
流動性
不動産クラウドファンディングがJ-REITと大きく異なる点のひとつとして、流動性があげられます。
前述したように不動産クラウドファンディングは、原則として定められた運用期間中に途中解約や売却することはできません。
一方、J-REITは証券市場に上場している金融商品です。そのため東京証券取引市場が開いている時間内であれば、いつでも売買することが可能です。
証券会社に口座を作る必要がありますが、最近ではインターネット上で簡単に口座を開設することができるようになりました。
一度口座を開設してしまえば、あとは株式などと同様に証券会社の窓口やインターネット取引を通じて売買することができます。
流動性を重視するのであれば、J-REITをおすすめします。
投資額や投資対象物件
J-REITの最小投資額は一口あたり数万円から数十万円程度であり、不動産クラウドファンディングとほぼ同じです。
投資対象となる物件の種類や規模に関しては、一般的な賃貸物件などの案件がある不動産クラウドファンディングに対して、J-REITの投資対象は高額物件が多いです。
ただし、不動産クラウドファンディングの場合は、投資家自身が選んだ物件に投資することができます。
一方、J-REITの場合は、物件そのものに投資するのではなく、投資証券を売買しているだけなので、どんな物件に投資しているのか投資家にはわかりません。そのため、じつはリスクの高い物件が組み込まれている場合もあります。
投資家個人で選んだ物件に投資したい場合は、不動産クラウドファンディングが向いています。
関連記事:不動産投資とリート(J-REIT)を比較!それぞれに向いてるのはどんな人?
まとめ
不動産クラウドファンディングの運用期間について、短期案件と長期案件それぞれのメリットとデメリットを解説しました。
短期と長期のどちらがよいかは、資産計画や投資の目的や目標に合わせて変わってくるでしょう。
しかし、投資に慣れていない初心者の人にはリスクが低い短期運用の案件がおすすめです。一方、投資資金を引き出せなくても問題のない人は利益を得られる期間の長い長期案件をおすすめします。
また不動産クラウドファンディングと並んで人気ある、J-REITや現物不動産投資と違いについても解説しました。
投資の目的や自己資金などを考慮し、自分にあった投資方法を選びましょう。