不動産投資とリート(J-REIT)を比較!それぞれに向いてるのはどんな人?
2024/03/08

不動産投資とリート(J-REIT)を比較!それぞれに向いてるのはどんな人?

不動産投資のメリットとデメリット不動産投資のメリット節税効果が期待できる不動産投資のデメリットJ-REIT(ジェイリート)のメリットとデメリットJ-REITのメリットJ-REITのデメリット不動産投資とJ-REITを比較!向いているのはどっち?自己資金が少ない人はJ-REITがおすすめ手間や時間をかけずに売買したい人は流動性の高いJ-REITがおすすめ分散投資したい人はJ-REITがおすすめ投資効率を重視したい人は不動産投資がおすすめ節税したい人は不動産投資がおすすめ生命保険代わりにしたい人は不動産投資がおすすめ利回りは物件や銘柄によって異なるため比較はむずかしいまとめ

実物不動産投資とJ-REIT(ジェイリート)は、どちらも不動産を対象とする投資方法です。

しかし不動産を投資対象にしていることを知っていても、不動産投資とJ-REITの違いは詳しく知らないという人も多いでしょう。


そこで今回は、不動産投資とJ-REITについて、資金面や利回り、投資効率などを比較しながら、それぞれに向いているのがどんな人なのか解説します。

また不動産投資とJ-REITのメリットとデメリットも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。


不動産投資のメリットとデメリット

家 メリット デメリット


一般的な「不動産投資」とは、土地や建物などの現物の不動産を購入して第三者に貸すことで毎月一定額の賃料を受け取る投資方法をいいます。

ここでは不動産投資のメリットとデメリットを解説します。


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不動産投資のメリット

毎月安定した家賃収入を得られる

投資した収益物件に入居者がいるかぎり、毎月一定額の家賃収入が得られます。また礼金や更新料なども不動産収入となります。

不動産投資ローンの返済は、原則として家賃収入からおこなうため、収支計画をたてやすいのが特徴です。


手残り金は貯蓄したり、新しい物件の購入資金に回したり、家計費などとして自由に使用できます。

万が一ケガや病気で収入が減ったり、高齢になり働けなくなったりした場合でも家賃収入があれば安心です。


他人資本を使ってレバレッジを効かせた投資ができる

レバレッジとは「てこの原理」という意味で、「小さな力で大きなモノを動かす」ことをいいます。

不動産投資におけるレバレッジ効果とは「少ない自己資金で大きな収益を得る」ことを指します。


不動産投資で投資対象の物件を購入する際は、金融機関から融資を受けるのが一般的です。少額の自己資金に加えて金融機関の融資を利用することで、自己資金の何倍もの投資物件を購入でき、レバレッジを効かせた投資によって大きな利益を得ることが可能になるのです。


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節税効果が期待できる

不動産投資をおこなううえで発生した物件取得費用や賃貸経営に必要なさまざまな費用は、一部を除き経費に計上できます。

経費計上できる費用のなかでも「減価償却費」は、実際には現金での支出がないにも関わらず経費として計上できる費用です。


計上できる経費が増えることで利益が減少し、課税対象となる所得額も減少するため、結果的に節税につながるのです。


また不動産所得が赤字の場合、そのほかの黒字の所得(給与所得や事業所得など)と相殺できる「損益通算」がおこなえます。

損益通算することで所得額を減らせるため、所得税や住民税の節税につながります。


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また所得税・住民税だけでなく、不動産投資をおこなうことで相続税や贈与税の節税にもつながります。

相続税や贈与税は、「相続税評価額」に所定の税率をかけ合わせることで算出されますが、現金や有価証券は額面通りに評価されるのに対して、不動産が時価よりも低く評価されます。


そのため1億円を現金で相続する場合の相続税業価額は1億円そのままです。

しかし1億円で購入した不動産の場合、土地の評価額は路線価を基準に評価されるため、時価の8割程度になります。建物は固定資産税評価額から評価され、実際の価格の7割程度なるのです。


さらに相続する不動産が賃貸用物件の場合は、時価の6割程度まで評価額が下がる可能性があります。

このように不動産投資をおこなうことで評価額を下げることができ、その結果として相続税・贈与税の節税につながるのです。


関連記事:不動産投資で節税できる仕組みや理由を税金の種類別に詳しく解説!


不動産投資のデメリット

不動産投資特有のリスクがある

不動産投資には、さまざまなリスクがあります。ただし想定できるリスクには対策方法もあるため、リスク内容を理解したうえで適切な対策をおこなうことで、損失を最小におさえることも可能です。

下記は不動産投資のおもなリスクになります。


◦空室リスク

入居者が見つからず、空室状態によるリスクです。

不動産投資のおもな収入源は入居者が支払う家賃です。そのため入居者がいない空室状態では家賃収入を得ることができず、ローンの返済や各種経費を手元資金から持ち出さなくてはなりません。


空室を埋めるためには、空室の原因にあわせて適切な空室対策をおこなう必要があります。


◦家賃滞納リスク

入居者が家賃を支払わないことで発生するリスクです。

滞納されてしまうと家賃収入が減ってしまいますし、区分マンションの場合は満室であるにもかかわらず家賃収入はゼロ円になります。


家賃の滞納は立ち退きの理由になりますが、立ち退き訴訟を起こすためには、時間や費用がかかります。もちろんその間の家賃回収はできません。


家賃滞納リスク対策として、家賃保証会社との契約を入居条件にしておくなど、あらかじめ対策をおこなっておくとよいでしょう。


関連記事:家賃滞納者を強制退去させるための流れや費用、未然に防ぐ方法を解説


流動性が低い

現物の不動産を売買する不動産投資は、物件を売買するのに1ヶ月~6ヶ月程度の時間がかかるのが一般的です。買い手が見つからない場合はさらに時間がかかることもめずらしくありませんし、また売りたい価格で売れるともかぎりません。


不動産投資の売買に時間がかかるのは、物件を選ぶために時間がかかるのももちろんですが、ローンを利用するために金融機関の融資審査を受ける必要があるためです。


時間をかけずに売却したいのであれば、不動産会社に直接買い取ってもらうこともできます。

直接買い取りにかかる期間は不動産会社によってさまざまですが、最短3日という会社もあるので、急に現金が必要になったときは便利です。


ただし、買い取りは仲介に比べて売却価格が低くなることがほとんどです。また、物件の立地などによっては買い取ってもらえないケースもあることを覚えておきましょう。


J-REIT(ジェイリート)のメリットとデメリット

reit グラフ パソコン

J-REIT (ジェイリート)とは「不動産投資信託」とも呼ばれているとおり、不動産専門の投資信託です。

複数の投資家から資金を募り、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する仕組みです。


REIT(Real Estate Investment Trust)はアメリカで生まれ、日本では海外REITと区別するために頭にJAPANの「J」をつけて「 J-REIT(ジェイリート) 」と呼ばれています。

ここではJ-REITのメリットとデメリットを解説します。


J-REITのメリット

少額の資金ではじめられる

J-REITの最小投資額は、一口あたり数万円から数十万円程度です。

そのため自己資金が少ない人や金融機関の融資を受けにくい自由業や属性の低い人にもはじめやすい投資方法になります。


換金しやすい

J-REITは証券市場に上場している金融商品です。そのため東京証券取引市場が開いている時間内であれば、いつでも売買できるのがメリットです。


なおJ-REITのはじめかたは以下のようになります。


1:J-REITを取り扱っている証券会社で口座を開設する

2:開設した証券口座に投資資金を入金しておく

3:J-REIT銘柄を選んで投資する


口座さえ開設してしまえば、あとは株式などと同様に証券会社の窓口やインターネット取引を通じて売買することができます。

昨今はインターネット上で口座開設手続きもおこなえるため、サラリーマンなど平日に証券会社に行けないという人でも簡単に口座を開設できるでしょう。


リスクの分散ができる

J-REITは少額の投資がおこなえるため、自己資金を複数の銘柄に投資することでリスクの分散が可能になります。

たとえば万が一、投資先のひとつから分配金が得られなくなっても、そのほかの銘柄に投資していれば、そちらからの分配金を得られるためリスクの分散につながるのです。


運用・管理をプロに任せられる

J-REITでは、不動産の購入・運用は不動産投資のプロである運用会社が厳選しておこないます。そのため投資家は出資するだけなので時間や手間がかかりません。

またJ-REITは、それぞれの投資法人が決算短信や資産運用報告書などの運用状況を開示しているので安心です。


J-REITのデメリット

元本割れのリスクがある

J-REITのほとんどが元本保証されていない金融商品です。そのため金融市況や不動産市況の影響を受けやすく価格が下落すると元本割れするリスクがあります。

また投資法人の倒産や上場廃止など、価値が著しく下落するリスクにも注意が必要です。


配当控除ができない

J-REITで得られる分配金は「配当所得」にあたるため、株式と同様にあつかわれます。

ただし株式の場合は配当に対して「配当控除」が適用されますが、J-REITの場合は適用されないため注意しましょう。


不動産投資とJ-REITを比較!向いているのはどっち?

比較 色鉛筆 青と緑

前述したように、不動産投資とJ-REITにはそれぞれメリットとデメリットがあります。それでは、不動産投資とJ-REITは、それぞれどのような人に向いているのでしょうか?


ここでは以下の項目ごとに、不動産投資とJ-REITのどちらに向いているのか比較しました。


◦自己資金

◦流動性

◦分散投資

◦投資効率

◦節税

◦生命保険代わり

◦利回り


それぞれについて詳しく解説します。


自己資金が少ない人はJ-REITがおすすめ

「不動産投資に興味はあるが自己資金が少ない」という人はJ-REITがおすすめです。

J-REITは数万円程度から投資できるので、自己資金が少ない人でも比較的手軽にはじめることが可能です。


またJ-REITは、投資対象物件の管理などは投資法人にすべて任せられるので、修繕費などの費用負担をせずに済みます。


一方、不動産投資をはじめる際は、初期費用として頭金と諸費用で物件価格の20%〜30%ほどの資金が必要になります。


頭金なしのフルローンや、諸費用もローンに組み込めるオーバーローンを利用できれば、少ない初期費用ではじめることも可能です。ただしその場合は借入額が大きくなりがちであるため、返済リスクには注意が必要です。


手間や時間をかけずに売買したい人は流動性の高いJ-REITがおすすめ

J-REITは証券市場に上場している金融商品です。そのため証券取引市場が開いている時間内であれば、いつでも売買ができるため換金性が高いです。

インターネットを利用すれば、証券取引市場が閉まっている時間帯でも注文を予約することもできるので、昼間は働いている会社員の人にもおすすめです。


一方、現物不動産投資は売却するまでに1ヶ月~6ヶ月程度の時間がかかります。買い手が見つからない場合は、それ以上の時間がかかることもめずらしくありません。

また売りたい価格で売れるともかぎりません。


手間や時間をかけず売買したい人にはJ-REITをおすすめします。


分散投資したい人はJ-REITがおすすめ

J-REITは少額で投資できるため、少ない自己資金でもさまざまな物件に分散して投資することが可能です。また複数の投資対象に分散して投資できる商品もあります。


さらにJ-REITで取り扱っている商品には、大規模な商業施設や複合施設、超高級ホテルなど、数十億円単位の投資費用がかかる物件も豊富です。

そのため一般の個人投資家では投資しにくい超高額物件でも、J-REITであれば数万円程度の金額から投資がおこなえます。


一方、不動産投資の場合は金融機関から融資を受けられる上限額は、年収の10倍程度が一般的です。そのため複数のさまざまな種類の物件に分散投資するのはむずかしいといえるでしょう。


投資効率を重視したい人は不動産投資がおすすめ

投資収益や資産運用などの投資効率を重視するなら不動産投資がおすすめです。


不動産投資において、投資対象の物件を購入する際は金融機関から融資を受けるのが一般的です。融資を受けることで自己資金以上の高額物件を取得できるのでレバレッジを効かせた投資がおこなえます。


自己資金が少ないほど投資効率は高くなりますが、その代わり借入れ額も大きくなりなります。あまりにも高額の借入れをしてしまうと返済比率が高まり、返済リスクが心配です。

収益の最大化を図る場合は、投資効率と返済比率のバランスも考慮しましょう。


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一方、J-REITでは金融機関から融資を受けることはできません。自己資金以上の投資はおこなえず、よってレバレッジを効かせることはできないのです。

またJ-REITは少額の資金ではじめられるのがメリットですが、投資額が少ない場合はリターンも少ないので大きなリターンを望むのはむずかしいといえます。


節税したい人は不動産投資がおすすめ

前述したように不動産投資をおこなうことで所得税・住民税や相続税・贈与税の節税効果が期待できます。


「減価償却費」をはじめ、不動産投資をおこなううえで発生したさまざまな費用を経費計上することで利益を圧縮したり、不動産所得が赤字の場合は「損益通算」することで課税対象額を減らしたりすることで所得税・住民税を軽減することが可能です。


また不動産投資をおこなうことで、現金などに比べて相続税評価額が低く評価されるため、相続税や贈与税の節税にもつながります。


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一方、J-REITの収支が赤字の場合でも損益通算はおこなえませんし、節税につながる措置はほとんどありません。

投資で節税効果を期待するのであれば、不動産投資を選ぶとよいでしょう。


生命保険代わりにしたい人は不動産投資がおすすめ

不動産投資で金融機関の融資を受ける際は、生命保険の代わりになる「団体信用生命保険(団信)」に加入することができます。

団信とは、団信加入者(不動産投資ローン契約者)が亡くなったり高度障害などで働くことができなくなったり、万が一のことがあった場合に保険金からローンの残債が完済される仕組みの生命保険の一種です。


ローンが完済された収益物件は遺族に遺されるため、そのまま賃貸経営を継続して家賃収入を得ることができます。また物件を売却してまとまった現金にすることもできるので、生命保険代わりになるのです。


団信には、がんや三大疾病などの特約を付加することも可能です。また団信の保険料は、ローン金利に年0.1%〜0.3%程度上乗せされるのが一般的です。(ただし特約の有無や金融機関などによって異なります)

そのため別途で団信の保険料を支払う必要はありません。


一方、J-REITでは団信に加入することができないため、生命保険に加入する際は一般的な方法で加入することになります。


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利回りは物件や銘柄によって異なるため比較はむずかしい

不動産投資において、投資額に対してどれくらいの利益があるのかを数値化した「利回り」は重要な指標のひとつです。しかし利回りは、運用物件の種類やエリア、築年数などによって幅があります。


たとえば物件が築古で価格が安い場合は表面利回りが10%以上の高利回り物件もよくみかけます。

ただし相場を超えた高利回り物件の場合、建物の状態が悪かったり、立地が悪かったり、なんらかの原因で物件価格が安くなっているため利回りが高くなっているケースもめずらしくありません。


では不動産投資用物件の利回りは、どのくらいを目安とすればよいのでしょうか。

投資用不動産の情報を取り扱っている健美家がおこなっている『収益物件市場動向四半期レポート2023年4月~6月期』のデータを参考にした平均表面利回り(全国)は以下のようになります。


◦区分マンション:7.02%

◦一棟アパート:8.06%

◦一棟マンション:7.60%


しかし先にも述べたように、不動産投資の利回りは物件によって大きな幅があります。平均利回りはあくまで参考とし、収益物件を選ぶ際はしっかりと収支シミュレーションをおこなう必要があります。


J-REITの利回りについても銘柄によって差がありますが、想定利回りは2%~6%のものが多いです。なお『JREIT不動産投信情報ポータル』が公表している「加重平均予想分配金利回り」は4.36%となっています。


J-REITの利回りも銘柄によって違いはありますが、銘柄を選ぶ際は平均利回りを基準にするとよいでしょう。


まとめ

不動産投資とJ-REITを比較して解説しました。

その結果、自己資金が少ない人や投資の手間をかけたくない人には、J-REITがおすすめです。

一方、不動産投資は投資効率を重視して短期間で資産を増やしたい人や節税したい人におすすめです。


ただし、不動産投資とJ-REITはどちらも投資である以上、デメリットやリスクがあります。メリットだけでなく、どのようなリスクがあるかについても理解したうえで正しく運用することが重要です。

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