不動産投資で毎月手出しのある物件の対策方法!損切りのタイミングも
2023/11/06

不動産投資で毎月手出しのある物件の対策方法!損切りのタイミングも

不動産投資の「手出し」とは?原因を見極めよう手出しが発生するおもな4つの原因と対策方法①空室率が高い②所有する収益物件が少ない(区分マンション1戸のみなど)③ローンの返済比率が高く、月々の返済額が負担になっている④家賃収入と比較して修繕費や管理費・保険料などランニングコストが多い不動産投資で手出し物件を損切りするタイミングローンの返済ができなくなる直前手出しが負担になっている場合まとめ

不動産投資で毎月の赤字分を手持ちの資金から補填することを「手出し(「持ち出し」とも)」といいます。

そもそも資産を増やすために不動産投資をおこない「黒字にしたい」と思っている人は多いです。ではなぜ、「手出し」は起きてしまうのでしょうか。


じつは赤字を補填する「手出し」は、かならずしも悪いことばかりではありません。

特に不動産投資を節税目的でおこなっている場合や、手出しがごく少額であれば、そのまま不動産投資をつづけてもなんら問題がないケースも少なくないのです。


そこで今回は、不動産投資で「持ち出し」が発生する原因とその対策法、損切りを検討するタイミングなどを解説します。


不動産投資の「手出し」とは?原因を見極めよう

収入と支出 バランス 黒板

不動産投資でキャッシュフローがマイナスの状態のときに手持ち資金から赤字分を補填することを「手出し」や「持ち出し」といいます。

キャッシュフローがマイナスということは、収入よりも支出が大きい、すなわち「赤字」であることを示しています。


不動産投資は、収益物件の購入価格の大部分を金融機関からお金を借入れ、ローンを組んでスタートするのが一般的です。

そして毎月の家賃収入からローンの返済や修繕費用や保険料などの必要経費を支払い、最終的に手元に残ったお金(キャッシュフロー)が利益となります。


不動産投資ローンを利用する場合、個人属性や投資用物件の収益性や担保価値が審査され、「返済可能」であることを前提に融資が実行されます。


しかし、さまざまな要因から、想定通りの家賃収入が得られなかったり、予定外の支出が生じたりすることで、キャッシュフローがマイナスになることはめずらしくありません。


キャッシュフローがマイナス状態ということは利益がないのはもちろん、毎月の必要経費を支払うために手持ちの資金を切り崩している状態です。

手出しが一時的なものであれば問題は少ないですが、これが長期間にわたった場合、いずれ


資金が尽きてしまうおそれがあるため、できるだけ早い段階で「手出しの原因」を突き止めたうえで対策をおこなう必要があります。


手出しが発生するおもな4つの原因と対策方法

原因 対策 ビジネスマン

まず、手出しが発生するおもな原因についてみてみましょう。不動産投資で手出しが発生するおもな原因には以下の4つが考えられます。


  1. 空室率が高い
  2. 所有する収益物件が少ない(区分マンション1戸のみなど)
  3. ローンの返済比率が高く、月々の返済額が負担になっている
  4. 修繕費や管理費、保険料などの経費が多い

それぞれについて詳しく解説します。


①空室率が高い

前述したように、不動産投資は収益物件から毎月得られる家賃収入からローン返済や経費を支払います。しかし、入居者の退去や新しい入居者が見つからず空室が長引いてしまうと想定していた家賃が得られません。


しかし家賃収入が減っても、ローン返済額や管理費など賃貸経営に必要な支出(ランニングコスト)は大きく変わらないためキャッシュフローが圧迫されます。その結果マイナス収支になり、不足した分のお金を手元の資金から「手出し」をすることになるのです。


対策方法:空室の原因を見極めたうえで適切な対応をおこなう

まず空室になっている原因を解明したうえで、原因に見合った空室対策をおこないましょう。

たとえば、経年劣化による建物の傷みや汚れ、備品の故障が原因の場合は、適切な修繕をおこなったり、外壁の洗浄をおこなったり、故障した備品の取り換えをおこないましょう。


また家賃が相場よりも高いため空室になっているケースも考えられます。

特に退去したのが長期入居者だった場合、家賃が見直されておらず、数年前の家賃相場のまま入居者を募集している場合があります。


周辺の家賃相場を確認し、相場から大きく乖離している場合は、家賃を相場にあわせることで入居者を獲得しやすくなるでしょう。設備についても周辺の競合物件をリサーチしてみると、自分の物件に足りないものが見えてくるかもしれません。


資金に余裕があれば、入居者に人気の最新設備の導入や、和室を洋室にリノベーションをおこなうなどの方法もおすすめです。


なお安易に家賃を下げたり、費用対効果を無視したリノベーションをしたり、空室になる原因を明らかにしないままお金をかけて空室対策をおこなっても、かえって収支を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。


どのような空室対策をおこなうかについては、空室の原因をつきとめたうえで、今後の賃貸ニーズを考慮し、それに見合った対策をおこなうことが大切です。


②所有する収益物件が少ない(区分マンション1戸のみなど)

区分マンションは、収益物件のなかでは比較的販売価格が安く、少ない自己資金で購入できるため不動産投資初心者にも人気の収益物件です。


しかし所有戸数が1戸のみの場合で入居者がいない空室状態では家賃収入がゼロ円なため、月々のランニングコスト全額が手出しとなってしまいます。


一棟アパートのように複数の部屋があれば、1室が空室でも残りの部屋の家賃収入でカバーできるため大きなダメージにはつながりにくいです。

分散投資できないのが区分マンション投資のデメリットといえるでしょう。


対策方法:賃貸ニーズが高いエリアの物件を選ぶ

不動産投資の成功は、物件の立地に大きく左右されます。前述したように分散投資ができない区分マンションは、できるだけ空室率をおさえる必要があります。そのため、とくに入居者ニーズが途切れない人気エリアで交通や生活の利便性のよい立地の物件を選ぶことが必須となります。


また退去者が出た後、すぐに原状回復工事をおこない入居者募集をしてくれるようなフットワークが軽い管理課者を選ぶのも空室対策として効果的です。


なお区分マンションは修繕やリフォームなどができるのは専有部分だけなので、共有部分を自由に変更などはできません。間取り変更などのリノベーションも管理組合の許可が必要になるケースもあるため注意が必要です。


③ローンの返済比率が高く、月々の返済額が負担になっている

前述したように不動産投資では、収益物件で得た家賃収入から月々のランニングコストを支払います。月々のランニングコストのなかでもっとも大きな割合を占めるのが「ローン返済金」です。


毎月の家賃収入に対してローン返済額が大きすぎる場合はキャッシュフローを圧迫するため、わずかに空室率が上昇したり、突発的な修繕費などが発生したりしただけで赤字になってしまうケースもめずらしくありません。

特に頭金なしで収益物件の購入費全額を金融機関から融資を受けられる「フルローン」を利用する場合は注意が必要です。


フルローンのメリットとデメリットについて詳しくはこちら!>>不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう


対策方法:ローンの返済比率を見直し、繰り上げ返済などを検討する

まず、物件を購入する際におこなう収支シミュレーションをさまざまな数字を使って綿密におこない、きちんと返済できるかどうか返済比率の見極めが必要です。


返済比率とは、家賃収入に対して毎月のローン返済額の割合を示し、ローンの支払いリスクがどのくらいあるかを知る指標となります。なお一般的に、不動産投資が安全におこなえる返済比率の目安は50%といわれており、比率が高くなればなるほどキャッシュフローが減るため経営状態はきびしくなります。


返済比率を下げるためには、借入れ時に頭金を多く入れて借入額を減らすほか、繰り上げ返済をおこない元本を減らすとよいでしょう。金利の低い金融機関にローンの借り換えることで月々の返済負担が減少します。


なおサラリーマンが不動産投資ローンの融資を受ける際の上限は金融機関や個人属性・物件の資産価値などによって異なりますが年収の7倍~10倍が目安と言われています。


金融機関から借入れをおこなう際は、自身の収入に見合った融資額を見きわめ、無理せず余裕をもって返済していける返済計画を立てることが重要です。


返済比率について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?


④家賃収入と比較して修繕費や管理費・保険料などランニングコストが多い

収益物件を運用するためには、毎月ランニングコストが必要です。物件の清掃やメンテナンス、入居者対応などを不動産管理会社に委託している場合に発生する管理費、建物や設備の修繕費用、災害に備えて加入する損害保険料など、どれも必要不可欠なものです。


しかし、家賃収入に対して比率が大きくなりすぎるとキャッシュフローを圧迫し、赤字になってしまいます。


また不動産投資は長期にわたっておこなう投資方法です。そのため一棟アパートなどは、収益物件の資産価値を維持できるよう10年単位でおこなう大規模修繕が欠かせません。(区分マンションの場合は毎月修繕積立金をマンションの管理組合などに支払っています)


大規模修繕は外壁塗装や屋根の葺き替え、配管の取り換えなど高額の費用が必要です。

そのほかにも地震や台風などの自然災害で建物がダメージをうけるおそれもあります。

こういった修繕費用についても考慮したうえで不動産投資をおこないましょう。


対策方法:毎月のランニングコストの比率を見直し、万一に備えて資金を貯めておく

月々のランニングコストの目安は月額家賃の20%~30%程度が一般的です。もしキャッシュフローに余裕が少ないと感じたら、ランニングコストに掛かる支出が大きすぎないか見直し、不要なコストを削減することでランニングコストをおさえることにつながります。


なお、下記のようにランニングコストには削減しやすいものと削減しづらいものがあります。


【削減しやすいランニングコストと削減のポイント】

・所得税:経費計上をもれなくおこなう、確定申告で青色を選ぶ

・修繕費や原状回復費:工事費が安い業者に依頼する、DIYで対応する

・共用部の水道光熱費:節電や節水を心がける

・火災保険料:複数のプランを比較し、コスパのよい保険に加入する

・管理委託料:委託料(相場は家賃の5%~8%/月)と業務内容が適切か確認する

・消耗品費など:無駄な出費は削減する、通信費など家事按分できるものは経費にする

・専門家への報酬:税理士などは複数の事務所の料金や実績を比較したうえで依頼する


【削減しづらいランニングコスト】

・固定資産税・都市計画税

・ローン返済金


ただし、コストカットばかりに注目してしまうと、賃貸経営の品質の低下につながる恐れがあります。質をおとすことなく無駄なコストのみの削減を心がけましょう。


大規模修繕には高額な費用がかかるため、あらかじめ大規模修繕計画を立て、毎月大規模修繕費用を積み立てておくとよいでしょう。


また災害などで突発的な修繕費が必要になった場合に備えて、手元資金をある程度貯めておくことをおすすめします。


不動産投資で手出し物件を損切りするタイミング

グラフ ハサミ 損切り

どんな対策をおこなっても手出しをおさえられない場合は、損切りするのもひとつの方法です。一時的な赤字であれば手持ち資金から持ち出しで対応できますが、黒字にならない限り赤字は増える一方です。


手持ち資金も尽きてしまうとローン返済が困難になり、最悪の場合、収益物件が差し押さえられてしまいかねません。そこで、これ以上赤字を増やさない「損切」として物件の売却を検討しましょう。

ここでは、損切を検討するタイミングごとに、すぐに損切りすべきかどうかを解説します。


ローンの返済ができなくなる直前

キャッシュフローのマイナス収支がつづき、手元の資金が尽きてしまうとローン返済ができず滞納になってしまいます。


ローンの返済が滞ると金融機関から督促が届きますが、それでも滞納がつづくとやがて担保物件を債権者が強制的に売却する競売といった方法でローンの残債務の返済がおこなわれます。それでもローンを完済できない場合は自己破産してしまうおそれもあるのです。


またローンを一定期間以上滞納した場合、信用情報が金融機関に登録される可能性もあり、今後の金融機関からの借入に悪影響を及ぼします。


ローンが払えないときには、リスケジュール申請や借り換え、物件の売却などの対策をおこないましょう。それぞれデメリットや条件はありますが、その後の生活に影響を残さず、土地活用をつづけられる可能性があります。


手出しが負担になっている場合

不動産投資では毎月、多少の手出しが発生するケースはめずらしくありません。節税目的や将来的な資産価値など、さまざまなメリットを加味して、許容できる範囲での手出しであれば、すぐに損切りせずに様子を見てもよいでしょう。


しかし、毎月の手出しが家計を圧迫するほど重い負担になっている場合は、早めの損切りを検討しましょう。高額で売却できればこれまでの手出し分を回収できる可能性もゼロではありません。


なによりも損切りをすることで金銭的にも精神的にも負担が減り、新しい投資や貯金などに回せる経済的余裕が生まれる可能性があります。


すぐに損切が必要のない例

前述したように、ほかに収入を得る手段があり、毎月の手出しが少額の場合は慌てて収益物件を売却する必要はありません。


たとえば、2,000万円の不動産を返済期間20年の融資で購入し、毎月1万円の手出しをしながら賃貸経営をおこなった場合、20年間で240万円の赤字になります。一見、大きな赤字に見えますが、ローンを完済した21年目以降はこれまでローン返済していたお金もそのまま収益になります。


同じように20年後に2,000万円の不動産を貯金だけで購入しようとすると年間で100万円、毎月8万円以上のお金を貯めなければなりません。


このように「手出し」を長期的な目線で見ると、240万円で2,000万円の不動産を取得できたとみることも可能なのです。


まとめ

不動産投資で月々のキャッシュフローがマイナスになった場合に役立つのが「手出し」です。ただし、手出しにはすぐに損切りしたり、対策を立てたりする必要がないケースもあります。

特に節税目的で不動産投資をおこなっている人や、納得したうえで毎月手出しをしている場合もあります。


一方でローン返済が滞ったり、家計費が圧迫されたりする場合は、キャッシュフローがマイナスになる原因を突き止め適切な対策をおこなうことをおすすめします。またその際は、損切りも視野に入れたうえで、ダメージを極力抑えることが重要です。

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