未来の不動産投資の鍵は単身世帯と高齢者!高齢者受け入れの注意点
日本の人口は、2004年1億2,768万人をピークにその後は減少の一途をたどっています。
「人が減ってしまったら入居者がいなくなるのでは?」と不動産投資の未来を心配する人もいるかもしれませんが、人口が減っても賃貸需要はゼロにはなりません。
とくにこれから増加する単独世帯や、増え続ける高齢者を受け入れた賃貸経営が必要になると考えられます。
そこで今回は、人口の推移を解説しながら、未来の不動産投資の入居者ターゲットである高齢者の受け入れ時に注意する点を解説します。
日本の人口減少の現況!
総務省統計局『人口推計(2023年3月20日公表)』によると、65歳以上の高齢者は3,623万6千人で、前年同月に比べて2万2千人増加しています。
一方、15~64歳の人口は7,420万8千人で、前年同月に比べて29万6千人減少し、15歳未満では1,450万3千人で、前年同月に比べ28万2千人減少していることから、少子高齢化であることがわかります。
引用:総務省『我が国における総人口の長期的推移』
総人口も減少しており、2004年1億2,768万人をピークとして現在まで減り続け、2023年3月20日の総人口は1億2449万人でした。また上記のグラフから見てもわかるように日本の人口は今後減りつづけ、増えることはないまま2050年には1億人を下回ると予測されているのです。
「夫婦と子」の世帯が減少し、単独世帯が増加する
世帯数の推移を表す下記のグラフを見ると、これまで主流だった「夫婦と子」の世帯が減少し、代わって単独者世帯が増加しているのがわかります。
引用:総務省『世帯数の推移』
グラフ上では、2010年には夫婦と子の世帯数を単独世帯数が超えています。(推定)
そのため今後は3LDKなどのファミリー向け賃貸物件より、単身者向けの間取りの需要が増加すると考えられます。
また世帯数の推移を見てみると、2050年には単独世帯のうち半分以上が高齢者単独世帯です。
引用:総務省『我が国における総人口の推移(年齢3区分別)』
年齢別総人口の推移を見てみると、2050年の高齢人口が占める割合は全体の約40%である一方で、若年人口は全体の9%未満となっています。
このことから、今後の不動産投資の入居者ターゲットとして有望なのは、高齢者と単独世帯であると考えられます。
人口が減少するなか賃貸需要はどの程度見込めるのか
未来の日本では人口が減少の一途をたどりますが、人口が少ない中では、どの程度の賃貸需要が見込まれるのでしょうか。
上記は国土交通省が2018年4月におこなった『住宅所有に関する意識調査』において、住宅を所有したいかという質問への回答をグラフ化したものです。
これによると、「所有する必要はない」と「どちらかといえば所有する必要はない」と回答した人が全体の16.5%だったことがわかります。
賃貸住宅でかまわないと考えている人が一定数いることから、今後も賃貸需要がまったくのゼロになるとは考えにくいと言えるでしょう。
未来の日本で不動産投資を成功させるには?
下記の表は、2015年の総人口を100としたときの指標で見た、2045年時点
の人口の予測推移を表したものです。
引用:国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成 30年推計)』
この予測推移によると、2030年には東京都と沖縄県の人口が増えていましたが2045年には沖縄県も東京都も人口が減少しています。ただし、他県に比べると減少率が少ないことがわかります。
また同じ県内であっても人口の減少率が地域で異なることが予想されます。そのため、収益物件を選ぶ際は、都道府県という大きなくくりに加えて、各市区町村が公開している人口動態調査などを参考にして、人口減少率が低いエリアで物件を探す必要があります。
高齢者を受け入れる際のリスク対策
前述したように今後の入居者ターゲットとして、高齢者と単独世帯が有望であると考えられます。しかし高齢者を入居者として受け入れる場合は次のようなデメリットもあるため注意が必要です。
孤独死のリスクと対策
孤独死のリスクは、高齢者を入居者として受け入れるにあたって、もっとも注意すべきポイントのひとつです。
とは言え、孤独死であっても死亡後すぐに発見された場合は自然死として取り扱われます。賃貸募集についても、国土交通省の『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』に記載されているとおり、入居希望者に報告する義務はありません。
ただし孤独死したことに気付かず、遺体の発見が遅れてしまい、特殊清掃が入るような場合は「物理的瑕疵」のある事故物件となるおそれもあります。また特殊清掃費用のほか、リフォーム費用が発生することも考えられます。
高齢者の入居における孤独死のリスク対策としては「孤独死保険」への加入がおすすめです。孤独死保険には大きく分けて2つの種類があり、ひとつは大家さんが保険料を負担して加入する「家主型」、もうひとつは入居者自身が保険料を支払い加入する「入居者型」です。
〇家主型の特徴
入居者が孤独死したことで事故物件となった場合、遺品整理にかかった費用、原状回復費用や特殊清掃費用を保証してくれます。また事故物件となったことで減額した家賃の差額や、入居が付かず空室期間が長引いた場合の損失もカバーしてもらえるのがメリットです。
〇入居者型の特徴
自身が孤独死した場合、本来遺族が支払う費用が保険でカバーされるシステムになっています。補償内容は遺品整理費用のほか、原状回復費用や特殊清掃費用になります。
入居者型の補償内容に家賃損失は含まれていません。そのため孤独死による家賃の減額や空室期間中の家賃の損失は補償されないため、大家さんは注意しましょう。
また、入居者が保険契約者となるため、原則として原状回復後の保険請求は、死去した入居者の相続人がおこなうことになります。もし相続人がいない場合には、保険金が支払われないため注意が必要です。
孤独死保険は、保険会社によって掛金や補償内容が異なります。まずは複数社に資料を請求し、補償内容や保険料を比較したうえで契約するとよいでしょう。
認知症によるトラブル対策
入居時点では問題のなかった場合でも、年齢を重ねるにつれて認知症を発症し、さまざまなトラブルに発展するケースがあります。入居者に家族や親族がいる場合はサポート依頼や相談することができますが、身寄りのない独居高齢者の場合、適切な対応ができない可能性もあるため注意が必要です。
認知症により正確な判断がおこなえず、少しのことで激高したり、徘徊したり、不法侵入などで周辺の住民とトラブルになる可能性があります。また日常生活を送ることができなくなった場合、掃除やゴミ処理ができなくなり、その結果ゴミ屋敷化したり、害虫が発生したりといった物理的瑕疵を引き起こすリスクもあります。
高齢者にかぎらず、一度賃貸借契約を結んでしまうと年齢などを理由に退去を促すことはできません。入居期間が長くなる反面、身寄りのいない高齢者の場合にはのちに認知症によるトラブルを引き起こすリスクがあることを十分理解しておく必要があるでしょう。
見守りサービスの利用
「見守りサービス」とは、入居者の異常を検知した場合、それを家族や大家さん、管理会社に知らせてくれるサービスです。近年の高齢者による賃貸需要の増加にともなってサービス内容も豊富になっています。
とくにプラバシーに配慮し、電気・ガス・水道といったライフラインやセンサーから異常を検知するタイプの見守りサービスも定着しつつあります。
遠隔で操作ができるものなど、人件費をかけずに安価に済ませることができるのも見守りサービスを利用するメリットのひとつと言えるでしょう。
なお、見守りサービスは、入居者本人またはその家族が契約・加入するサービスです。大家さんや管理会社が契約することはできないため注意しましょう。
安全のために見守りサービスに加入してもらいたい場合は、入居審査のタイミングでサービスの利用を提案するとよいでしょう。
インバウンド需要を見込んだ不動産投資の検討も
2022年10月に新柄コロナウィルス水際対策が緩和されて以降、海外からの旅行客の姿が増えました。2023年のインバウンド需要は4.96兆円とコロナ前を上回る予想も出ています。
加えて、2025年に大阪でおこなわれる万博など、国内で大きなイベントがあるとそれに向けて外国人観光客も増加することで、ホテルや商業施設の需要が増えて不動産価格も高まる傾向にあります。
今後は外国人旅行客をターゲットにした民泊経営などで安定した収入を得る機会が増えるかもしれません。
まとめ
少子高齢化がすすむ日本の人口は減り続けています。そのため、不動産投資の未来が心配な人も多いかもしれませんが、人口が減っても賃貸需要はなくなりません。
ただし人口の減少にともなって、エリアの選定や入居者ターゲットについても見直す必要があります。
とくに今後はさらなる高齢者社会となることが予測されます。そのため高齢者からの賃貸ニーズも高まることが考えられます。賃貸物件に高齢者を受け入れる際はリスク対策をしっかりおこなうことが肝心です。