不動産投資でペット可物件にするメリットとは?注意ポイントも解説
空室対策方法のひとつにあげられる「ペット可物件」ですが、導入することで相場よりも高い家賃設定ができるなどのメリットがあります。
一方で、ペット可物件にするためには、飼育に関してさまざまなルールを決め、飼主である入居者に十分理解してもらわなくてはいけません。
今回は不動産投資でペット可物件にするメリットとデメリットを中心に、注意ポイントについて解説します。ペット可物件を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
不動産投資でペット可物件は不足している
一般的に「ペット可の賃貸物件は少ない」という見方が多いなか、実際にペット可の物件はどの程度足りていないのでしょうか。
下記は、一般社団法人ペットフード協会が2021年におこなった『全国犬猫飼育実態調査ペット 飼育阻害要因』の結果をグラフにしたものです。
引用:一般社団法人ペットフード協会『2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査ペット飼育阻害要因』
そのなかで「非飼育者で飼育意向のある人」を対象に「ペットを飼育できない阻害要因は何か?」という質問に対して、その最大理由が「集合住宅(アパート、マンションなど一戸建てでないもの)に住んでいて、犬・猫の飼育を禁止されているから」と回答した人(犬を飼いたい人は19.1%、猫を飼いたい人が27.2%)の割合が多いことがわかりました。
つまり、ペットを飼いたくても禁止されている集合住宅が多い=ペット可の物件はまだまだ不足していると推測できます。そのため収益物件をペット可にすることで、ほかの競合物件との差別化につながり、さまざまなメリットを得られることが期待できます。
不動産投資でペット可物件にするメリット
ここでは賃貸物件をペット可にすることで得られるメリットを紹介します。
空室対策につながる
ペット可物件は需要に対して供給数が少ないため、通常の物件と比べて入居希望者が多く、比較的簡単に入居が決まる可能性が高いです。
また、ペットを飼いたい人の多くは物件を選ぶ際、立地条件よりも、「ペット可」であることを重視します。そのため、通常は入居付けがむずかしく空室になりやすい駅から遠い物件であっても入居が決まりやすく、空室対策につながります。
長期入居が期待できる
供給が少ないペット可物件は、一度入居したら、次のペット可物件が見つかりにくいため、転勤など特別な理由がないかぎり、長期入居が見込めます。
入居期間が長ければ、その間は安定した家賃収入を得ることができるため大きなメリットになるでしょう。
通常よりも高い家賃設定ができる
前述したようにペット可物件の数は少ないため、その希少性から賃料設定を相場よりも高くしても入居者は見つかりやすいです。ペット可物件の家賃設定は、周辺の家賃相場よりも1割~2割程度の額をプラスするケースが多いため、多くの収益が期待できます。
ただし、あまりにも高額すぎても入居が付きにくくなるため注意が必要です。
また、敷金も通常よりも多く設定できる可能性も高いです。
ペット可物件は、ペットが室内を汚したり傷つけたりする場合も多いため、原状回復の費用が通常よりも高くなるケースが多いです。そのためにも通常よりも多めの敷金に設定しておくといいでしょう。
普通の賃貸物件の敷金は家賃の0~3ヶ月を支払いますが、ペット可物件は1~4か月程度が相場となります。
不動産投資でペット可物件にするデメリット
ここではペット可物件のデメリットについて解説します。
近隣トラブルになる可能性がある
ペット可物件のデメリットとして、ペット特有の臭いや鳴き声、マナーなどが原因で入居者同士のトラブルにつながりやすいことが考えられます。
特にもともとはペット不可だった物件をペット可に変更した場合、以前からの入居者からの理解が得にくく、トラブルになりやすいので注意が必要です。
既存の入居者がいる賃貸物件でペット可に変更する場合は、十分な説明をして同意を得たうえで「ペット可」に変更しましょう。
また騒音対策に効果的な方法については、後述する『騒音トラブルを防ぐために防音対策をおこなおう』をご覧ください。
原状回復費が高額になる可能性がある
室内でペットを飼育すると、壁や床が損傷したり、臭いなどが染みついたりといった問題が発生する可能性があります。
飼育するペットの種類や大きさ、飼い主の飼育方法などによって異なりますが、通常の原状回復費用に比べると高額になるケースが多いです。
原状回復にかかる費用については、賃貸借契約を結ぶ際に特約事項として費用負担の範囲を定めておきましょう。詳しくは後述する『原状回復の費用負担範囲を細かく設定する』をご覧ください。
ペット飼育者以外の入居希望者が見つかりにくくなる
ペット可物件への入居希望者は、ペットを飼っている、もしくはこれからペットを飼う予定の人です。そのため、ペットを飼う予定のない人は入居者ターゲットからはずれることになります。
ペット可物件は需要が高いといっても、実際にはペットを飼っていない人の割合のほうが多いため、ターゲット層の絶対数は少なくなってしまいます。
ペット可物件にするための改修費用が高くなる可能性がある
ペット可物件にするためには、通常よりも傷つきにくい床材や壁紙にしたり、電源コンセントの位置を高くしたり、ペットが出入りする入り口を設置したり、ペットが暮らしやすい部屋をつくる必要があります。
そのため、普通の賃貸物件のリフォームにかかる費用に比べて、費用が高額になる可能性があります。それらの費用を回収できるよう収支シミュレーションをおこない、家賃などを設定しましょう。
不動産投資でペット可物件にするときの注意ポイント
ここでは、ペット可物件を運用する際に注意しておきたいポイントについて解説します。これらのポイントをおさえることで、リスク回避につながり、よりスムーズにペット可物件の運用がおこなえるでしょう。
原状回復条の費用負担範をこまかく設定する
先にも述べたように、ペット可物件は通常の賃貸物件に比べて、原状回復費用が高額になりやすいです。なぜなら、床や壁紙の汚損や室内の匂いなどは特殊なクリーニングが必要になるケースもあるためです。
こういった原状回復費用を大家さんと入居者のどちらが負担するかで揉めてしまい、トラブルに発展することも少なくありません。
そこで入居前に原状回復の費用負担の範囲をこまかく設定しておき、入居者に説明して了承をおくことをおすすめします。また敷金も多めに設定するなど、大家さんが損をしないよう、しっかりと書面を取り交わしておけば安心です。
入居者が費用負担する範囲は、おもに以下のような部分になります。
・室内の壁紙全体の張り替えにかかる費用全額
・匂いを除くためのクリーニング費用
・汚損や破損した床の修復にかかる費用
・その他(ペットが傷つけた設備や備品の修繕や交換費用など)
上記のような内容について賃貸借契約を交わす際にしっかりと説明して、きちんと理解してもらうよう努めましょう。
もともとペット可だった物件を購入する
もともとペット不可だった中古物件を購入し、ペット可物件に変更する際は、既存の入居者とトラブルになる可能性があります。こういったトラブルを未然に防ぐためにも、すでにペット可として運用されている物件の購入をおすすめします。
もともとペット可物件であれば、既存の入居者もペットを飼育している可能性が高いため、トラブルになる確率も低くなります。
また、ペット可として運用されている物件であれば、共用部のペット用の洗い場や室内の壁紙や床材もペット用のものが使用されているなど、すでにペットが暮らしやすい環境が用意されていることも少なくありません。
その場合、通常の中古物件をペット可物件にリフォームするよりコストをおさえられる可能性があります。
ただし、入居者がいる状態の「オーナーチェンジ物件」として購入した場合は、物件の室内を見ることができないため、現況を把握ができないケースもあります。
その場合は、管理会社にこれまでに近隣からクレームがあったかどうか確認してみましょう。過去に何度かクレームがあった場合は、今後もクレームが来る可能性が高いため注意が必要です。
ペットの飼育についてルールを作る
ペット可物件を賃貸する場合は、飼育できるペットの種類や大きさなどのほか、こまかなルールを決めておきましょう。あいまいな記載内容では、入居者が勝手に解釈してしまう場合もあるため、誤解を与えないよう、はっきりとわかりやすくするのがコツです。
なお必要なルールの決め方などは、不動産管理会社に相談するとよいでしょう。
例として、以下を参考にしてください。
【例】契約締結前に説明する内容
まず、飼育できる動物の種類や大きさについて説明しましょう。
・飼育できる動物の種類(犬はOK、猫はNGなど、記載のない動物は飼育不可など)
・大きさ(体重5kgまでなど)
・数(中型犬なら1匹まで、小型犬であれば2匹までなど)
・飼育するペットの写真
飼育できる動物の数はかならず決めておきましょう。記載しない場合、多頭飼いされてしまう恐れがあるため注意が必要です。
飼育可能な動物の指定と、飼育可能な数を指定しておくことで、常識から大きくはずれた飼育問題を回避できます。
つづいて、ペット飼育時の敷金・礼金の額(または家賃額)、退去時の原状回復費の負担範囲についても説明しましょう。
・原状回復費の負担範囲について(前述の『原状回復条の費用負担範をこまかく設定する』をご覧ください)
・ペット飼育時の敷金や礼金、家賃について(前述の『通常よりも高い家賃設定ができる』をご覧ください)
【例】入居時(飼育開始時)に提出するもの
入居者がどのようなペットを飼うつもりなのか、「ペット飼育承諾申請書」として書面にて提出してもらいましょう。承諾書には下記の情報を入居者に記載してもらいましょう。
・ペットの種類、頭数、体重、性別、生年月日
・ワクチンや去勢手術を実施した日時
・しつけ状況(無駄吠えはしないか、トイレのしつけはできているかなど)
・室内での飼育計画(トイレの設置場所などの確認など)
なお、ワクチンの接種証明書や去勢手術の証明書は、第三者機関発行の証明書を添付してもらいましょう。
【例】飼育時のルールについて
飼育中に守ってもらうルールも作成し、契約前にしっかり説明しましょう。また契約時だけでなく更新時にもルールを再確認することで、入居者への注意喚起となります。
・飼育するペットを追加する場合は「ペット飼育承諾申請書」の提出を義務付ける
・廊下や階段などの共用部で排泄をさせない
・室内での排泄物の管理を徹底させる
・共用部ではペットを直接歩かせず、入居者が腕で抱き上げて移動する
・バルコニーやベランダでの飼育を禁止する
・狂犬病などの予防接種を義務付ける
共用部にペット用設備を設置する
ペットが散歩から戻った際に使用できる足洗い場などを共用部に設置しましょう。こういった設備はペットと飼主のためだけでなく、エントランスや廊下などの共用部を清潔に保つことにつながります。
そのほかにも、汚れがつきにくく洗い流しやすい素材を共用部の壁や床への使用や、消臭効果の高い建材を使用するなど、ペットと暮らすための仕様にすることは入居者の満足度と物件の資産価値を高める効果につながります。
騒音トラブルを防ぐために防音対策をおこなおう
ペット可物件といっても、ペットの飼育を念頭に置いて建てられている物件ではない場合、
ペットの鳴き声や足音が原因で、騒音トラブルにつながることもあります。
こういったトラブルを未然に防ぐためには、部屋ごとに防音対策をおこなうとよいでしょう。防音効果といっても、高価な防音用建材を使用するのではなく、安価で取り換えやすい「クッションフロア」と簡単に設置できる「防音パネル」や「遮音シート」を使用します。
クッションフロアを使用する利点
クッションフロアは、2mm~4mm程度の厚さのある塩化ビニール樹脂でできています。市販のはさみやカッターで簡単にカットでき、また軽いので扱いやすいです。
クッションフロアは、その名前の通りクッション性があるため、ペットの足音を吸音してくれる効果があります。また、水を弾くのでペットが粗相をしても染み込むことがなく、また拭き取りやすいので床が傷みにくいです。
クッションフロアは6畳程度で3万円~5万円ほどとフローリングに比べて安価なため、フローリングの上に重ね張りすることで防音効果とフローリングの防護にも役立ちます。
防音パネルを使用する利点
壁に防音パネルを設置することで、ペットの鳴き声が響くのを防ぐことが可能です。防音パネルのほか、遮音パネルや吸音ウールにも同様の効果があります。
防音パネルの設置費用は、防音パネルの種類によって幅がありますが、6帖サイズで15万円~20万円程度が目安になります。
なお、防音パネルが設置できない窓には、二重サッシや防音カーテンを使用することをおすすめします。
防音カーテンはおよそ2万円~3万円程度、防音ガラスや二重サッシの施工には180センチ×170センチの大きさで10万円~15万円程度の費用がかかります。
ペット可物件にするなら傷対策も必須
ペット可物件では、ペットが壁や床を引っ掻いて傷がついたり、動物の匂いが染み付いたりすることもめずらしくありません。しかし、傷がついた箇所の修繕や匂いを取るためのクリーニングには費用がかかります。
また傷や匂いの程度によっては、原状回復費用が高額になるケースもあるため、事前に傷対策をしておくとよいでしょう。傷や匂い対策には、以下のような手段があります。
ペット対応のワックスを使用する
ペット対応のワックスは、床に塗ることで引っ掻き傷が付きにくくなる効果があります。またペットの尿などがかかってしまったとしても劣化しづらいのが特徴です。滑り止め効果もあるので、ペットのケガ防止にも役立ちます。
フローリングだけでなく、クッションフロアに対応しているワックスもあるので、一緒に使用すれば二重の防護効果が得られるでしょう。
ペット対応ワックスの価格は500mlで約30畳に塗布でき、価格は1,000円前後~3,000円前後です。
傷や汚れに強い壁紙や消臭効果のある壁紙を使用する
表面がラミネート加工されている壁紙を使用することで、傷や汚れがつきにくくなります。
また、消臭効果のある壁紙を貼ることで、ペットの匂いが壁紙に染みつくのを防ぎます。
6畳の部屋の壁と天井(約40平方メートル)をラミネート加工されている壁紙を張り替えた場合、36,000円~67,500円程度になります。(壁紙の単価によって変動)
まとめ
ペット可の賃貸物件はまだまだ数が少なく、多くの需要が見込めるため、不動産投資の空室対策として非常に有効な手段です。また、その希少性から相場よりも高い家賃でも入居者が決まりやすく、より多くの収益も期待できます。
一方でペット可物件は、室内の床や壁などが傷つきやすいため、通常の賃貸物件に比べて原状回復費用が高額になりがちなのがデメリットです。またペットの鳴き声や足音が騒音トラブルの原因になるケースもみられます。
不動産投資でペット可物件にする場合は、上記のデメリットを回避するためには、ペットの飼育に関して厳格なルールと対策が必須となります。
空室対策としてペット可物件を検討している人は、ぜひ当記事を参考にして、飼主とペットが安心して暮らせる環境をつくり、賃貸経営を成功させてください。