不動産投資の融資の可否はどう決まる?審査に通りやすいのはこんな人
2022/03/16

不動産投資の融資の可否はどう決まる?審査に通りやすいのはこんな人

不動産投資の融資の基礎知識不動産投資の融資審査内容について不動産投資の融資額上限は年収の10倍が目安不動産投資の融資の返済方法は家賃から支払う融資金利について不動産投資で融資を受けるメリットレバレッジを効かせた投資ができる効率よく不動産投資がはじめられる自己資金をプールしておける不動産投資で融資を受けやすいのはこんな人安定した収入を得られる人自己資金が多い人借入の額が少ない人健康な人金融機関と取引実績のある人不動産投資の融資の流れ金融機関をピックアップする審査の申し込みをおこなう融資審査の可否の通知を受け取る融資の手続きをおこなう融資審査に必要な書類融資の事前審査(仮審査)に必要な書類融資の本審査に必要な書類不動産投資の融資を有利な条件で受けるためには?クレジットカードの限度額を下げる、解約する住宅ローンや不動産投資ローンの繰り上げ返済や借り換えで借入額を減らす転職すると融資審査で不利になる可能性があるまとめ

これから不動産投資をはじめる人にとって、銀行など金融機関の融資審査に通るかどうか心配ない人も少なくないかもしれません。

また審査に通らないだけでなく、不動産投資の融資条件も非常に重要なポイントです。


金利が高ければ月々のローン返済額が高額になり収益を圧迫するため、できるだけ低金利で融資を受けたいものです。

そのためには個人属性のほか融資対象物件の収益力など不動産投資の融資審査ポイントをしっかり理解したうえで物件を選ぶ必要があります。


今回は不動産投資の融資について、審査内容や融資申し込みといった基礎知識をはじめ、融資を受けるメリットを解説します。

また融資審査に通りやすい人の特徴や、融資条件をよくするためのヒントも。


これから不動産投資の融資を受けようと考えている人は、ぜひ当記事を参考にしてください。


不動産投資の融資の基礎知識

不動産投資の融資は、一般的に馴染みのある住宅ローンとは使用目的が異なります。

そのため融資審査の内容や融資される額、ローン金利などに特徴があります。ここでは不動産投資の融資の基礎知識について、住宅ローンと比較しながら解説します。


不動産投資の融資審査内容について

自分自身や家族が住む住宅ローンの融資審査の可否を決めるのは、ローン契約者(借主)の属性で審査されます。

一方で、不動産投資の場合は個人属性に加えて融資対象物件の収益力も審査の対象になるのが住宅ローンと大きく異なる点です。


そのため、不動産投資の融資審査時には、物件情報の詳細がわかる資料(物件概要書、賃料や賃貸借条件等を記載したレントロールなど)の提出が必要です。


なお、属性とは「融資申込者の社会的背景と経済的背景」のことを指し、融資条件を決める重要な指標です。なお属性は、以下のような項目が審査されます。


【おもな個人属性項目】

・年収(過去3年分)

・勤務情報(勤務先名・規模、雇用形態、勤続年数、役職など)

・資産状況(預貯金や株などの資産の額、借入の有無・残債など)

・その他(家族構成、居住環境など)


不動産投資の融資額上限は年収の10倍が目安

一般的に不動産投資の融資額は、住宅ローンよりも高額です。

これは、住宅ローンは「自分の居住用」として融資されるのに対して、不動産投資の場合は「購入した不動産(アパートやマンションなど)を第三者に賃貸して賃料を得る」という目的で融資がおこなわれるためです。


一般的に住宅ローンの融資上限は、高属性の人で年収の7倍~8倍、一般的には5倍~6倍と言われています。

一方で、不動産投資の融資上限は通常の場合で年収の10倍程度、本人属性や物件の収益力によっては、それ以上の融資を受けられる可能性があります。


たとえば年収500万円の人ならば、通常で5,000万円、条件次第では1億円程度の融資を受けられることもありうるのです。


不動産投資の融資の返済方法は家賃から支払う

住宅ローンの返済は、おもに給与収入からおこないますが、不動産投資ローンの返済は基本的に収益物件の家賃収入からおこなわれます。


そのため、融資対象物件の空室リスクが大きい、収益力が低く安定した家賃収入を得るのがむずかしいと融資審査で判断された場合、融資を断られたり、希望する条件で融資を受けられなかったりといったこともあります。


融資金利について

一般的な住宅ローンの金利は0.5%~2.0%程度と低めに設定されています。

しかし不動産投資の融資にかかる金利は1%台~4%台と高く設定されます。

これは、不動産投資の融資額が高額なこと、アパートなどの賃貸経営において空室などで家賃収入が減ることで貸し倒れになるリスクがあるためです。


なお金利は、銀行など金融機関の種類や本人の属性・物件の収益力、頭金額などによって幅があるので、できるだけ低金利で融資を受けることが不動産投資の成功へとつながります。


不動産投資で融資を受けるメリット

ローン 家 模型

不動産投資で融資を利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは融資を受けることで得られるメリットを解説します。


レバレッジを効かせた投資ができる

不動産投資では「レバレッジ(てこの原理)」を効かせた投資をおこなうことで、自己資金以上の高額物件を購入することが可能です。


たとえば、価格が1,000万円、表面利回り8%の不動産物件を現金一括で購入した場合の年間家賃収入は80万円になります。

しかし、自己資金1,000万円で表面利回り8%と同じ条件であっても、1,000万円を頭金にして3,000万円の融資を受けて4,000万円の不動産物件を購入した場合、年間320万円の家賃収入が見込めるのです。


このように同じ自己資金額、同じ利回りの物件であっても融資を受けて購入した不動産を賃貸することで、より多くの収益を得られます。

(*上記は、いずれもローン返済や管理委託料などの経費を含めずに考えた場合)


効率よく不動産投資がはじめられる

金融機関から融資を受けることで、効率よく不動産投資をはじめられます。

資金を貯めるには長い期間が必要なため、高額の不動産を全額自己資金のみで購入するのは現実的ではありません。


もし自己資金に余裕があれば、より資産形成のスピードもアップさせるためにも、前述のようにレバレッジを効かすことを考慮したうえで、複数の物件購入に自己資金を分散させることをおすすめします。


自己資金をプールしておける

不動産投資では、予期せぬ出費に備えて自己資金をプールしておくことも大事です。

たとえば設備の故障で想定外の出費があったときや、空室期間の長期化で想定した家賃収入が得られえないなど、収支に問題があるとローン返済が滞ってしまう恐れもありますが、手元に自己資金があれば対応が可能です。


このように融資を利用することで、万一に備えて自己資金を手元に残しておけるため、余裕のある不動産投資につながります。


不動産投資で融資を受けやすいのはこんな人

ここでは、不動産投資で融資を受けやすい人の特徴をまとめました。


安定した収入を得られる人

金融機関が融資をおこなう際にもっとも重視するのが、「貸し倒れ」のリスクです。

そのため融資審査では、「お金を貸す相手がきちんと返済できる能力があるか」が厳しく審査されます。


お金をきちんと返済できる人、要するに「貸し倒れになる可能性の少ない人=毎月、安定した給与をもらえる公務員や会社の正社員」に融資することで、金融機関は貸し倒れのリスクを最小限におさえるのです。


特に倒産リスクや経営不振によるリストラの心配のない公務員は、融資において大変有利です。

また会社の正社員の場合も、倒産しにくい上場企業など大企業に勤務している場合は、融資審査が通りやすくなります。


そのほかにも、難関国家試験(弁護士や会計士、司法書士、医師など)の有資格者も失職しにくい・再就職しやすく高収入の場合が多いことから、融資審査に有利です。


自己資金が多い人

自己資金や金融資産(有価証券や担保の不動産など)を蓄えている人で頭金を多く入れた場合は、年収が低くても融資を受けられる可能性があります。


融資に有利になるための具体的な自己資金額については金融機関によって異なりますが、頭金は最低でも物件価格の1割以上、できれば2~3割と考えておきましょう。

頭金の額が多くなればなるほど融資額が少なくなるため、融資条件がよくなる可能性が高くなります。


借入の額が少ない人

金融機関が融資審査をおこなう際は不動産投資にかぎらず、融資申込者の「与信枠」を確認します。

与信枠とは、その人にどの程度お金を貸すことができるか(信用できるか)を計るもので、融資可能額の上限を指します。


与信枠の上限は一般的に年収の10倍までと言われており、これには住宅ローンも含まれます。

たとえば年収600万円の人が融資を受けられる上限額は6,000万円となり、その内3,000万円が住宅ローンの残債だった場合、与信枠の残りは3,000万円と考えられます。

よって与信枠の残額によっては、希望する不動産投資の融資を受けられない可能性もあるのです。


健康な人

持病がなく、大病をしたことがない健康な人は、万一のときにローン残債が保証される「団体信用保険(団信)」へ加入できるため融資審査に通過しやすくなります。


金融機関は、融資申込者が死亡したり、働けないほどの障害が残ったり、ローン返済できなった場合のリスク対策として団信への加入を融資条件とする場合があります。

団信とは、ローン契約者が死亡した場合(または高度障害が残った場合)など、万一のときに残債が保証され、遺族(または本人)に物件が残される保険システムです。


団信への加入は指定の健康診断にパスする必要があり、健康状態次第では団信加入を断られることも考えられるため注意が必要です


金融機関と取引実績のある人

すでに不動産投資をおこなっている人や他事業の経営者の場合は、以前から取引している金融機関で不動産投資の融資を申し込みましょう。

金融機関側としては、取引実績が良好な顧客を他行に渡すのを避けたいという考えを持つため、融資条件がよくなったり、与信枠や属性を知っているぶん審査が短期間で済んだりといったメリットが期待できます。


不動産投資の融資の流れ

電卓 ビジネスマン ローン
ここでは不動産投資で融資を受ける際の手順を解説します。

金融機関をピックアップする

まず、不動産投資の融資を受ける金融機関の目星をつけましょう。

融資先の金融機関は自分で探すこともできますが、物件によっては不動産会社の提携する金融機関を紹介してくれる場合があるので確認してみましょう。

また知人や友人に紹介してもらうことで、話がスムーズにすすむこともあります。


審査の申し込みをおこなう

欲しい物件がみつかったら融資相談(面談)のアポイントを取ります。

融資審査は「予備審査(仮審査とも)」と「本審査」の2段階でおこなわれ、予備審査に通過した場合のみ、本審査がおこなわれます。


なお、時間を節約するために融資相談後すぐに融資申し込みをおこなえるよう、融資審査に必要な書類はあらかじめ用意しておき、面談当日に持参しましょう。

書類を揃えたうえで申し込みができたら、ローンの審査がはじまります。


審査期間は金融機関によって異なりますが、予備審査期間の目安は1~2週間程度です。

取引実績がある場合はもっと短い期間で済むことあるようです。


またコロナウイルスの影響で対面でなく、オンラインで融資相談をおこなえる場合もあるので、希望する際はアポイント時に確認するとよいでしょう。


もし融資を断られてもあきらめず、ほかの金融機関に申し込みましょう。

融資の判断は金融機関や同じ金融機関でも支店や担当者によって異なります。

そのため、できるだけ多くの金融機関に融資申し込みをしておくことが重要です。


融資審査の可否の通知を受け取る

融資の事前審査が終了すると決定通知が来ます。

審査に通った場合は、融資額や融資期間、金利といった条件確認したうえで売買契約手続きをおこない、同時に融資の本審査の申し込みをおこないます。

本審査の回答には2週間~1ヶ月程度かかるでしょう。


なお、融資の事前審査に通った場合でも本審査で不成立になるケースもあります。

そのため、売買契約には「融資特約」をかならず付けるようにしましょう。

融資特約とは、「融資の本審査が承認されずローンが組めなかった場合は売買契約を契約解除できる」というものです。


通常、買主側の都合で契約を解除する場合、手付金は返還されません。

融資特約を付けておけば、融資がおりず、契約を解除する場合は支払った手付金が返還されるのです。


融資の手続きをおこなう

本審査に通ったら、正式に「金銭消費貸借契約(ローン契約)」を締結します。

その際は、団体信用生命保険の加入や抵当権の設定も同時におこなわれることが多いです。

その後、物件の決済、引渡し、不動産投資ローンの融資実行を受けて完了となります。


融資審査に必要な書類

ここでは、融資審査に必要なおもな書類を事前審査(仮審査)、本審査にわけて一覧で紹介します。


なお、金融機関によって必要な書類が異なることもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

また、取得するのに時間がかかる書類もあるので、できるだけ早く準備をはじめるとよいでしょう。


融資の事前審査(仮審査)に必要な書類

融資相談と同時に融資の事前審査を申し込む場合は、下記の必要書類を持参すれば時間が省けるのでおすすめです。


・3年分の源泉徴収表(給与以外の収入がある人は確定申告書も添付)

・借入金がある場合の返済予定表(住宅ローンやマイカーローンなど)

・身分証明書

・事業計画書(購入希望物件の収支計画などがわかる資料)

・購入希望物件の資料(レントロールや公図、建築確認済証など)


上記のほかに所有する資産がある場合は、保有不動産の固定資産税等の納税通知書や預貯金の通帳コピーなども用意しましょう。


融資の本審査に必要な書類

事前審査に通過したらすぐに申し込めるよう、下記の書類をあらかじめ用意しておきましょう。


・3年分の住民税課税証明書

・3年分の納税証明書

・売買契約書

・重要事項説明書

・賃貸借契約書

・手付金の領収書

・身分証明書、住民票

・実印、印鑑証明書

・金融資産の分かるもの(通帳の原本など)


不動産投資の融資を有利な条件で受けるためには?

不動産投資の融資をできるだけ好条件で受けるためには、できることや気を付けることがいくつかあります。


クレジットカードの限度額を下げる、解約する

不動産投資の融資審査では、クレジットカードの借入状況も確認します。

その際、クレジットカードやカードローンの残債がある場合や、利用していなくてもキャッシング枠のあるカードを保有しているだけでも「将来的に借入の可能性がある」と判断され属性が下がってしまう可能性があります。


属性に不安がある場合は、使用していないクレジットカードを解約したり、限度額を引き下げたりすることで属性改善につながります。

また残債がある場合は、返済できるようなら完済してしまいましょう。


住宅ローンや不動産投資ローンの繰り上げ返済や借り換えで借入額を減らす

前述にように融資は与信枠内でおこなわれます。

そのため、住宅ローンや不動産投資ローンを組んでいる場合は、新たな借入がむずかしい場合があります。


もし自己資金に余裕があれば、繰り上げ返済やローンの見直しをすることで借入額が減少し、属性や与信枠の改善が期待できます。

一度、借り換えや繰り上げ返済のシミュレーションなどをおこなってみるとよいでしょう。


不動産投資の繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類やメリット・デメリットを解説


不動産投資ローンの借り換えについて詳しくはこちら!>>不動産投資ローン借り換えに適したタイミングやメリット・デメリット


転職すると融資審査で不利になる可能性がある

転職直後は転職先での年収が証明できないため、不動産投資の融資審査が通りにくかったり、不利になったりする可能性があります。


不動産投資の融資審査では、給与所得の証明や源泉徴収票(会社発行)、所得証明書、納税証明書(役所発行)がひつようになりますが、これらの証明書は原則として1年間給与収入がないと発行できません。

そのため転職して間もない場合、自分の給与収入を証明することがむずかしくなってしまうのです。


ただし、安定した職場(上場企業や公務員など)に転職した場合は、融資を受けられる可能性があります。

しかし、不動産投資の融資申し込みと転職時期が重なりそうな場合は、先に融資申し込みをおこないローン契約を結んだのちに転職するほうが融資審査で不利にならずに済むと考えられます。


まとめ

不動産投資で融資を受けることでレバレッジを効かせた投資ができ、さらに万一に備えて自己資金を手元に残せるなどメリットがあります。

ただし不動産投資で融資を受けるには、住宅ローンとは異なり、個人属性のほかに融資対象物件の収益力も評価されるため、しっかりとした不動産物件を選ぶ必要があります。


なお審査に通らなかったとしても、別の金融機関では融資を受けられる可能性は十分考えられます。

不動産投資の融資を好条件で受けるためにも、融資審査に必要な知識を把握したうえで準備をしっかりとおこないましょう。

一覧に戻る