不動産投資ローンの返済期間を短期と長期で比較! シミュレーションも
不動産投資をおこなう人の多くが、金融機関から融資を受けて収益物件を購入します。
その場合、不動産投資ローンの返済期間(融資年数)の長さによって、毎月の返済額や総返済額が変わり、キャッシュフローに大きな影響を与えます。
実際には、返済期間が長い場合と短い場合、返済額にどのくらい違いがあるのでしょうか?
今回は、返済期間を長期と短期で比較し、メリットとデメリットを解説ます。
返済シミュレーションの結果を見ながら、長期と短期の違いをしっかり確かめてください。
不動産投資でローン返済期間が重要な理由
不動産投資ローンの返済期間(融資年数)は、その長さによってキャッシュフローに大きな影響を与えます。
キャッシュフローとは、家賃収入からローン返済金+経費を差し引きし、残った金額のことで「手元資金」とも呼ばれます。
ローン返済金は、同じ額の融資を受けても、返済期間が長い場合は月々の返済額は少なく、返済期間が短いと月々の返済額は増加します。
家賃収入から引かれるローン返済金が少なければキャッシュフローが多くなるため、その不動産投資は好調とみられるでしょう。
しかし、ローン返済金が多ければキャッシュフローがマイナスになる可能性もあり、その場合は赤字経営になってしまいます。
このように聞くと、毎月支払うローン返済額が多くなる短期返済にはメリットがないように感じますが、総返済額の面でみると短期返済は、長期返済したときと比べて大幅に返済額を少なくできるのです。
不動産投資で成功するには、キャッシュフローが十分見込めるような返済計画を立てる必要がありますが、総返済額をおさえることも大事です。
このように不動産経営におけるキャッシュフローを左右する返済期間の長さは、非常に重要なポイントとなるのです。
不動産投資ローンの返済期間は短期?長期?それぞれのメリットとデメリット
ローンの返済期間を長期にするか、短期にするかを判断するためには、それぞれのメリットとデメリットを比較したうえで判断する必要があります。
まず、返済期間を短期する場合のメリットとデメリットを見てみましょう。
短期間で返済するメリット
まず、短期間でローンを返済すれば支払う利息が減るため、結果的に総返済額を大幅に下げることができます。
不動産物件の融資額は数千万円単位と高額なため、借入残債=借金が減ることで精神的にも楽になるでしょう。
また、ローン保証会社に支払う保証金が安くなる可能性があります。
金融機関の融資を受けるにあたって保証会社に保証金を支払う場合、返済期間(融資年数)が長いほど保証金は高くなることがほとんどです。
そのため、短期間で借入金を返済することで保証金が安くなる可能性が高まります。
さらに、短期間で借入金を返済すれば、それだけローン完済の時期が早まります。
完済したことで不動産投資物件の担保がはずれるため、あらためて別の不動産物件購入の担保にすることも可能ですし、売却して購入資金にしてもよいでしょう。
短期間で返済するデメリット
短期間でローンを返済するデメリットは、毎月の返済額が高くなることです。
毎月の家賃収入に対してローン返済を含む費用(管理費や税金等)の支払いなどで、キャッシュフローが想定よりも少なくなる場合があります。
キャシュフローが悪化すると、突発的な修繕や空室に対処できなくなり、自己資金を持ち出すことになるため注意が必要です。
返済期間を短期にする場合は、不測の事態に備えられる程度の自己資金を用意しておくとよいでしょう。
長期間で返済するメリット
ローンの返済期間を長期にすることで、月々の返済額を少なくでき、キャッシュフローに余裕が生まれます。
キャッシュフローに余裕があれば、想定外の費用発生に備えることができます。
また、新たな不動産物件の購入資金を貯めることも可能です。
長期間で返済するデメリット
対してデメリットは、ローンを支払う回数が増えるため、ローンの利息分の額が増え、その結果ローンの総返済額も大きくなってしまいますし、ローン保証会社に支払う保証金が高くなる場合があります。
また、ローン返済期間を長期でおこなう場合、毎月の返済額はずっと変わりません。
しかし不動産物件は、経年とともに価値が下がるため入居付けのために家賃を下げる場面もあるでしょう。
その場合、毎月得られる家賃収入は不動産投資開始時に比べて減少しますが、毎月の返済額は変わらないため、家賃収入に対するローン返済額の割合(返済比率)が大きくなってしまいます。
返済比率は、ローンの支払いリスクがどのくらいあるかを知るための大事な指標です。
返済比率が低ければ、それだけ手元に残るキャッシュフローが増加しますし、逆に高ければキャッシュフローが悪化します。
一般的に、安全に不動産投資をおこなうための返済比率は50%以下と言われています。
経年によって、もし返済比率が50%を超える場合は繰り上げ返済をおこなうなどの対処方法を検討するとよいでしょう。
返済比率について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?
繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類やメリット・デメリットを解説
返済シミュレーションで返済期間ごとの支払額を比較
上記のように返済期間は、短期・長期それぞれメリットとデメリットがあるため、どちらにするか迷うことも多いと思います。
そこでローンシミュレーターを使って、返済期間を20年、25年、30年、35年にしたときの返済額を表にしました。
なお今回は、借入金額は3,000万円、金利2.5%(元利均等方式・固定金利)、他費用は含まずにシミュレーションをおこなった結果になります。
|
20年 |
25年 |
30年 |
35年 |
毎月返済額 |
158,970円 |
134,585円 |
118,536円 |
127,048円 |
年間返済額 |
1,907,640円 |
1,615,020円 |
1,422,432円 |
1,286,976円 |
総返済額 |
38,152,800円 |
40,375,500円 |
42,672,960円 |
45,044,160円 |
返済期間20年と35年の総返済額を比べると、総支払額に約690万円もの差があることがわかります。
返済期間30年と35年を比較しても約237万円もの差がつきため、総返済額の面からみると不動産投資ローンを短期間で返済することでローン支払い額を大幅に軽減できるでしょう。
ただし毎月の返済額は、返済期間35年の場合は月々12万7,048円の返済に対して、20年の月々の返済額は15万8,979円でした。
その差は約3万円になり、キャッシュフローに大きな影響があることが考えられます。
ローンの返済期間を短期にするか長期にするか悩ましいところではありますが、一案として、融資の返済期間は長期で契約し資金に余裕できたら返済期間短縮型「繰り上げ返済」をおこない、総支払額を下げるのもよいでしょう。
いずれにせよ、健全な不動産投資をおこなうためにも返済比率は50%以下におさえたいところです。
どちらの返済方法を選ぶにしても、返済比率や資金を考慮した上で、余裕のある返済計画を立てることが重要です。
繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類やメリット・デメリットを解説
返済期間は建物の法定耐用年数で決まる
金融会社は返済期間(融資年数)を決める際、建物の「法定耐用年数」を基準にしています。
法定耐用年数は「税法上」で決められており、建物の構造ごとに年数が異なります。
なお、それぞれの年数は以下のように設定されています。
【構造別 法定耐用年数(新築の場合)】
建物の構造 |
法定耐用年数 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 |
47年 |
木造 |
22年 |
軽量鉄骨造(厚さ3ミリ以下) |
19年 |
軽量鉄骨造(厚さ3〜4ミリ) |
27年 |
ただし法定耐用年数は、返済期間を決めるための基準であって、法定耐用年数=返済期間ではありません。
一般的に法定耐用年数よりも返済期間が短くなる可能性が高く、その要因のひとつにローン契約者の属性が影響していることが考えられます。
中古物件の耐用年数の決め方は?
中古物件の耐用年数は、以下の計算で求めます。
中古物件の耐用年数 = ( 法定耐用年数 - 経過年数 ) + 経過年数 × 20%
たとえば、鉄筋コンクリート造で築10年のマンションの場合は以下のようになります。
( 47年 - 10年 ) + 10年 × 20% = 耐用年数39年
なお、計算結果が2年未満の場合の耐用年数は2年になります。
耐用年数を超えた物件は融資が付かない?
金融機関は法定耐用年数を基準に返済期間(融資年数)を決めているため、法定耐用年数を過ぎた築古物件は融資が付きにくいです。
しかし絶対に融資が付かないかというと、法定耐用年数を過ぎた不動産でも融資が受けられる可能性はゼロではありません。
まず、建物が築古でも土地価格が高い場合は、土地の価値だけでも十分な担保になるため融資が付く可能性があります。
なた、法定耐用年数ではなく、税金の計算に必要な減価償却費を計算するための「法定残存耐用年数」を基準として金融機関が返済期間を決定する場合もあります。
法定耐用年数が過ぎた不動産物件でも上記のように融資を受けられる場合もあるので、あきらめずに複数の金融機関に打診してみるとよいでしょう。
不動産投資ローンの返済期間を長期にするためにできること
ローンの返済期間は、短期・長期どちらにもメリットとデメリットがあります。
長期返済の場合は、途中で繰り上げ返済をおこなえば、支払総額が増えてしまうデメリットもある程度解消することができます。
なにより、毎月のローン返済の負担が少なく、キャッシュフローが安定しやすい長期返済は大変魅力的です。
しかし、金融機関から長期の返済期間を認めてもらうのは、短期返済に比べてむずかしいため、融資申し込みをおこなう前にしっかりと対策を立てることをおすすめします。
本人属性を改善して信用度を上げる
返済期間を長期でおこなうためには、ローン契約者自身の属性を高くしましょう。
勤務先や年収、勤続年数、家族構成、貯蓄額、借入額など、がチェックされます。
上場企業に長年雇用されている、年収が高い、資産が多い場合は「属性がよい」とされ、信用度が上がり、融資審査の際に希望が通りやすくなります。
住宅ローンやカーローンなどの借入金がある場合は、できるだけ減らしておくことで、融資審査が通りやすくなります。
また、クレジットカードも持っているだけで借入金とみなされるので、使用しないクレジットカードは解約しておきましょう。
また、信用できる人かどうかといった、人柄も融資審査の重要ポイントです。
融資相談や交渉時には、担当者に好印象を与えられるよう、身だしなみや話し方などに注意しましょう。
加えてクレジットカードなどの滞納歴がないことも重要なポイントです。
「滞納をする人はお金の管理ができない人ではないか?きちんと返済できるのだろうか?」と、返済能力に不信感を抱かれてしまう可能性があります。
融資審査に不利になるかどうかは滞納の程度にもよります。
滞納が頻繁でいわゆる「ブラックリスト」に名前が載っている場合は、希望した融資額や返済期間(融資年数)が認められなかったり審査に落ちてしまう場合も4あるのです。
なお滞納情報は、滞納完済から5年経過すれば登録されている情報は削除されます。
もし、滞納が原因で融資審査が下りない場合は、信用情報が消えるまで待つ必要があるので、滞納しないよう注意しましょう。
根拠のある事業計画書を提出する
融資審査時に提出する「事業計画書」は、できるだけ綿密に作成しましょう。
購入予定の物件情報や収益性などはもちろん、周辺の入居率や家賃相場、周辺と比較した物件の売買価格などを記載し、「物件価格が妥当である」という根拠を示します。
また、収支シミュレーションをおこない、物件価格や利回り(表面・実質)、返済比率、推定キャッシュフローなど、根拠のある数字の提示も重要なポイントです。
しっかりとした事業計画書を作成することで、不動産投資への熱意が融資担当者にも伝わるでしょう。
まとめ
不動産投資ローンを利用した際の毎月支払う返済額は、返済期間(融資年数)の長さによって変わってきます。
短期と長期、それぞれメリットとデメリットがあるため、なにを重視するかによって方向性が変わってきます。
長期返済をしながら自己資金を貯めて、ある程度貯まったら繰り上げ返済をおこない、返済期間を短縮するのもひとつの方法です。
どちらの返済期間を選ぶにしても、不動産投資が成功できるよう、返済シミュレーションや収支シミュレーションをおこなった上でしっかり不動産投資計画立てることが重要なのです。